例え非日常的な空間でも  中編




(ちっと考えが甘かったか。)

目の前で繰り広げられるコックの見たこともない痴態に身体中の血が沸騰するような怒りを覚えながらも、コックからのサインに
何とか自分を拘束している縄をぶっちぎらずに耐えるゾロがいた。








あれから、2人して外へ引き出されて。
サンジは鬘を被った状態で後ろ手に縛られて。
ゾロは帯の変わりに縄で着物の腰を締めて。
何人もの男たちに連れられて、サンジが助けた女が勤めていたと思われる見世へと着いた。

そこは当然、逃げた女郎を一目見ようと見世の中も外もごった返していて。

そんな中、暖簾を上げて少し年配の女性が出てきた。
この見世の女将だろうか。
彼女はサンジの顔を見るなり、一瞬目を丸くしてカカカッと高らかに笑った。
そしてツカツカとサンジに歩み寄ると、両手で頬を挟んで鼻を突き合わせる。

「やっておくれじゃないかい。…………あんた、其処までするからにゃ其れなりの覚悟あんだろうねぇ?」

至近距離でその女がサンジにそう言って笑う。
その笑顔はさながら盤若のようで。

ゴクッと喉を鳴らす音が周囲の其処此処から聞こえてくる。
きっと此れが女将のおっかない所なのだろう。
だが、日々海賊海軍海賊狩りと渡り合っているサンジには通用しない。

返事の代わりにふわりと笑った。

周りを全員誑し込むような妖艶さで。
それはいつもゾロに向けられる、誘ったゾロが誘われているかのような色気のある笑顔だ。

周辺からほおっと溜息が洩れる。
野次馬達の表情が畏怖から憧憬に変わる。
女将でなくサンジに軍配が上がったのだ。
はっと肩を竦めて女将がサンジから手を離す。

「連れてきな。後は旦那にお任せしようじゃないか。其処の情夫も一緒にだよ。」

そう言って女将がサンジの後ろにいる男達に目配せした。
ゾロがそれに続くと、立ち止まって見送っていた女将が擦れ違いざまゾロにそっと耳打ちしてきた。

「大したタマじゃないか。あんたも苦労が耐えないね。」
「……………慣れてる。」

一言返してから、女将を見てニヤッと笑ってやった。

「お前も覚悟決めときな。」

一瞬きょとんとした女将がさも愉快気に笑った。
いい男じゃないかと肩を叩かれ、さあ仕事に戻っとくれと言う女将の声を背に見世の中へと連れていかれたのだ。




通された部屋は二間続きの和室だった。
手前の部屋で宴会をやって、寝る時は奥の間を使うのだろう。
手前側はもう灯りも落とされ、奥の間から洩れる光で辛うじて部屋の様子が窺える程度だ。

「旦那、連れて参りやした。」
「ん、通せ。」

低くて太い声がそう告げると、二部屋を隔てていた襖がスッと開く。
後ろ手に縛られたサンジがまず押し出され、その後にゾロが続く。
行灯の光がゆらゆらと室内を照らし出す中、3枚重ねの布団の上に夜着姿で胡坐を掻いて座る男が1人。
体格はゾロよりも1回り大きいくらいではあるが、その顔付きは優男といっても過言ではないだろう。
甘いマスクと、少し日に焼けた肌と、ゾロほどではないが筋肉質の身体。
へぇっと感嘆の声を上げてチラッとサンジを見れば、同じように感心した顔付きをしている。
相手の男はといえば、サンジの顔を見て首をちょっと傾げたものの、驚いた風も無くサンジの背後の男たちに声を掛けた。

「ご苦労だったな。で、そちらさんは?」
「へぇ、これが件の情夫で。床入りしてるところをふん縛ったんでさ。」
「ほお。………女将はなんて言ってた?」
「旦那に全てお任せすると仰ってました。」
「そうか。」

そう言って、サンジの顔をじっと見つめて。
フッと笑ったかと思ったら、うんと頷いた。

「わかった。こいつら置いて、お前等は下がれ。」
「は?この情夫もですかい?」
「ああ。とりあえず、そこの衝立にでも繋いでおいてもらおうか。」
「へえ、わかりやした。」

ゾロは脇に置いてあった如何にも重そうな衝立に縄で括り付けられて、サンジはその男の前に立たされたままだった。
自分達を連れてきた男達が部屋を出て行く。
それを見送ってから、その男が徐に口を開いた。

「で、どういう了見だ?」
「…………。」
「あいつらは上手く騙せたろうが、生憎私の目は節穴ではないぞ。」
「…………。」

サンジに向かって問い掛けられているのだろう。
実に楽しそうにサンジを見つめている。
とはいえ、サンジに答えられるはずが無い。
見た目はそりゃあ男にしては可愛らしい部類ではあるかもしれないが、声は男そのもの。

いくら色っぽい声でも。
ゾロなんて耳元で「ヤろうぜ」なんて声を掛けられようものなら下半身直撃の艶っぽい声でも。

女郎は女、幾らサンジが真似ても女の声色にはならない。
そのまま口を噤んでいると、その男は立ち上がってサンジの前へ立つ。

「身代わりを買って出るっていうことの意味がわかってるのか?」
「……………。」
「足抜けした女郎の代わりに私に抱かれるということだぞ?」
「……………。」
「それとも、経験有りか?」

ん?とサンジが眉間に皺を寄せて、その男を睨み上げる。
すると、その男がサンジの股間にするっと掌を当ててこう言ったのだ。

「男だろ、お前。」
「…………バレてんならしゃーねぇ。だがな、これだけは言っとくぜ。彼女には手を出させねぇ!」
「出さないのは構わない。だが、条件がある。」
「なんだ?」

ホッとした様子でサンジがその男に問いかけると、その男が動いた。
サンジの腰に手を廻し、当てていた掌でサンジのそこを卑猥に撫で始めたのだ。
思わず腰が退けるサンジの耳にその男が口を寄せる。

「お前がちゃんと代わりを務めるなら、彼女は放免してやろう。」
「っ!!」
「あの女、折角私が日も高い内から来てやったというのに、酒宴の最中は気も漫で、いざ床入りとなれば気分が優れないとか
髪を結い直すとか部屋を抜けてばかりだった。挙げ句、足抜けだと?散々コケにされて、漸く捕まえてきたかと思えば、替え玉
だ?しかも男だ?腹を立てずに笑ってろと言う方がおかしいだろう。」

そうは言いつつも、その顔は色欲に塗れたもので。
サンジはと言えば、驚愕と気色悪さの為か、完全に固まっている。

それみたことかとゾロは思った。
最初サンジにはちゃんと忠告した筈だ。
そのカッコ見て勃たねぇヤツはいねぇ、と。

現に男は、サンジの身体の感触を悦に入った様子で撫で回している。

「とはいえ、私もこれ程上玉の陰間は初めてだ。十分堪能させて貰おうじゃないか。」
「…………そしたら、彼女の事は見逃してくれるんだろうな?」
「いいだろう。」
「じゃあ、コイツは帰してやってくれ。」

サンジがゾロを視線で示して、そう口にした。
ゾロはギッとサンジを睨み付ける。

幾らサンジでも、一度足抜けを許した見世が二度目を見逃さないよう強化した監視の中、1人逃げ出すのは容易ではない
だろう。
それに目の前でサンジを他の男にどうこうされるより、自分の知らない所でサンジが好きにされる方が余程耐えられない。
そんなゾロの胸中を知ってか知らずか、男が首を横に振る。

「見られるのは嫌か?其処に座る男がお前の男なのだろう?ならば、この男の釈放条件は、私とお前との情事を最後まで
見届ける事にしようじゃないか。」
「な、に…………?!!」
「あの女が最後まで許さなかったその緋襦袢、今この場で脱げ。自分から尻を解して私のを受け入れてみよ。出来るか?」

くくくっとさも愉快そうに声を殺して男が笑う。
最初の色男加減はすっかり形を潜め、只のサディスティックで色事好きな男が其処に居た。

サンジは顔を真っ青にしながら、男の下卑た視線に真っ向から向かい合う。
その白い肌が更に白さを増し、鳥肌が立っているのが見て取れた。

それはそうだろう。
元はノンケのサンジだ。
男に言い寄られたら、視界から完全に消える位強烈な蹴りをお見舞いしてきたのだ。
そんなサンジがゾロに身体を開いたのは、自分の気持ちも相手の気持ちも信じられない中でコイツしかいないと認め合った
からこそだ。
今でもお互い以外の男には目もいかないというのに。

そんなサンジの様子に堪えきれず、ゾロが縄をぶっちぎろうと腕に力を入れようとした時、サンジが口を開いた。


「わかった。」


そう言ってサンジが男の首に手を回して抱き付いた。
ニヤつく男とは対称的に、ゾロが驚きと怒りで顔を真っ赤に染める。
するとサンジが男の顔の真横で男に見えないようにゾロに口パクで言ってきた。

後15分だ。

はっと気付いて室内にある時計に目をやる。
今10時、島を出る船が後15分で出港するのだろうか。

視線をサンジに戻せば、顔色はそのままにニカッと健気に笑う。

気色悪いだろうに。
今直ぐにも逃げ出したいだろうに。

片足上げて、男の膝裏に回し、淫猥にゾロ専用の声で囁く。

「この緋襦袢はあんたのテク次第だ。アイツとスる以上にあんたがオレをヨくしてくれたなら、いつでもこの身体晒してやるぜ。」

首に回した腕をピンと伸ばし、男の首からぶら下がるように背を撓らせて蠱惑的に微笑んでみせる。
その顔はここのプロの女郎も頬を染めるだろう、凄絶な色気を放った。
男もサンジに少しの間見惚れて。

「いい度胸だ。気に入った。」

そう言って、サンジの手を引き、朱い布団へサンジと共に倒れ込んだ。








そして今、サンジはゾロの目の前で四つん這いになっている。

布団の上で胡座を掻く男の股間に顔を埋め、右肘1本で上半身を支え、左腕は後方へ伸ばされている。
襦袢の裾が白くて形のいい尻が完全に見えるまで捲り上げられ、その双丘の間に手が置かれていて。
細くて白い指が2本、入ったり出たりしている。

男に言われた通り、自分で穴を解しているのだ。

男はさもご満悦といった様子で、サンジの髪を撫でている。
時折、その手がサンジの耳をかすめる度、堪えきれないのか、くぐもった声が上がる。
そしてその都度、悔しそうに眉を顰める。

それをゾロはちょうど真横から見ていた。
見ているしかできなかった。

ゾロが腕に力を込める度に、その気が伝わるのか、サンジが非難の視線を寄越す。
男に見えない右手で後何分と示してくる。

ゾロが耐えられない以上にサンジが我慢の限界だろうに。
涙目でゾロでない男の逸物をくわえるサンジに、ゾロは表面上は平静を装ってはいるものの心の中は煮えくり返っていた。
歯を噛み締め過ぎて、歯茎から血が出ているのか、鉄錆びのような味が口内に充満している。
自分が今刀を持っていれば、この男など声を上げる間も無く叩き斬ってやるのに。

サンジにこんな思いさせずに済むのに。

気が遠くなりそうに長い、拷問よりも辛いその時間をゾロは繋がれたまま、目を逸らさずに眺め続けた。

そして、時計が出航1分前を示す。
サンジが指で1を示した後、親指を立てた。
ゾロが少しホッとして、噛み締める歯を緩めた時、男が動いた。

サンジの顔を上げさせて、こう言ったのだ。

「さて、そろそろ本番といこうか。」

男がサンジの頭を起こして舌舐めずりする。
サンジが下を向いたまま、目を見開く。
ゾロは舌打ちしたい気持ちでそれを眺める。

「其処の男が満足する程の陰間だから、しゃぶるのが上手いかと思えば。後ろで咥えるのが上手いのか。此方にその名器を
自分で広げて見せてみよ。」
「………………。」

後1分も無いのに。

サンジの、コックとしての大事な口だけでなく、これまでの人生でゾロしか受け入れた事の無い後孔まで、こんな男に差し出さ
ねばならないのか。

幾ら、女を守る為とはいえ。
幾ら、その約束を守り切る事がサンジのプライドの為とはいえ。

ゾロは余りの腹立たしさに目の前が真っ赤になる。
今までの行為でさえ、できれば見たくなかったのだ。
でも、目を逸らしたらサンジが傷付く。
自分のせいでゾロに嫌な思いをさせたと知って。

だから心を殺し、表情を殺して真っ直ぐ前を見る。
其処では、動かないサンジに業を煮やした男がサンジの後ろに廻っている所だった。

後30秒。

「ほぅ、結構締まりは良さそうだな。」
男がサンジの窄まりからサンジの指を抜き取り、そこに視線を投げてそう言葉を発する。
サンジの眉間も、ゾロの眉間も、今から行われる事を想像して同じように寄せられる。

後20秒。

男が何の前触れも無く、サンジの中へ指を突っ込む。
声が洩れそうになるのを敷布団を噛み締める事で堪えるサンジと、後ろの衝立をぶち壊しそうになるのを何とか耐えるゾロ。
それに構うことなく、男が指を廻すように動かす。
「ちゃんと解れているようだな。この吸い付くような感触が何とも言えんな。」

後10秒。

男が入れていた指を引き抜いて、サンジの唾液に塗れた自身を突立てようと一旦合わさった着物を肌蹴る。
それが今にもサンジの孔へと当てられようとした時。

残り5秒を残して、サンジとゾロが同時に動いた。

サンジが膝を付いていた右脚で男の鳩尾に蹴りを放ち。
ゾロが自身を縛り付けている縄を衝立ごとぶち破る。

男はぐっと声無き声を上げて、2間を隔てる襖と一緒に放物線を描いて壁へと衝突した。
近すぎた事と、勢いがつけられなかった事で、威力が半減したのだろう。
倒れてはいるものの、男は意識を失っているだけである事は間違いない。

その男へと一瞥をくれた後、ゾロは立ち上がり、その場にぺたりと座り込んだサンジの傍へと歩み寄る。
暫く呆然として、そして自分の脇に立つゾロを見上げてへへっと笑う。
その時、ボォーッと汽笛の鳴る音がした。

「船、無事に出たみてぇだな。」
「戻ってこねぇとこみると、大丈夫だろ。」
「おう。………よかった。」

サンジの潤む瞳からポロッと一滴涙が零れ落ちる。
それを見て、ゾロの顔が歪む。
そんなゾロに、サンジが勘違いしたのか、寂しそうに笑う。

「オレ、汚れちまったかな?てめぇ、やっぱ嫌だよな。ただでさえ、女絡みだってぇのに、他の男のなんか咥えたオレだもんな。
オレ―――」
「黙れっ!!」

ゾロがサンジの言葉を大声で遮り、膝をつくとその身体を抱き締める。
抱き締めて、その背中を優しく撫でて、髪に手を差し入れて。
そして、キスをしようとその顎を持ち上げると、一瞬サンジが躊躇する。

「オレの口、汚ねぇ。」
「オレが消毒してやる。」

退こうとするサンジの後頭部を鷲掴んで固定すると、ゾロは唇をゆっくり合わせる。
なんとか閉じようとするサンジの唇を舌でこじ開けて。
見開かれた瞳が、ゆるりと微笑むゾロの細められた目を見たからだろうか。

一瞬泣きそうになって。

ふんわりと目を閉じ、両腕をゾロの首に回してきた。
強張ってガチガチになっていたサンジの身体から力が抜けていく。
ゾロの舌に口内余す所無く探られて、舌も上下隈無く舐められて。
唇を離した時には、ゾロが支えていなければ、横に崩れてしまう程だった。

「どうした?」

ゾロが意地悪くそう聞けば、サンジが恨めしそうにうるんだ瞳を向けてくる。

「こんなキス、ひでぇ。」
「何でだ?」
「何でって……こんなその気にさせるようなの………できねぇのに。」
「スりゃいいじゃねぇか。」
「アホか、てめぇはっ!さっきから外で騒いでんの聞こえてんだろうが!!」

確かに、今の長く執拗なキスの途中から、襖を叩く音がする。
女将呼んできてくれという声もしていた。
直に誰か乗り込んでくるだろう。
客を1人のしてしまってタダでは済まない事は目に見えてる。
だが、ゾロはサンジを安心させる為にニカッと、それこそ先程のサンジのように余裕の笑みを浮かべる。

「待ってろ。」

ゾロはそう言うと、先刻壊した衝立の破片を持って立ち上がる。
座り込むサンジをおいて、隣の部屋の隅に倒れ伏している男の胸倉を掴み、顔が自分の目線に来るまでその身体を持ち
上げる。
男が気付いたのか、ゆっくりと目を開けて、その目が更に見開かれる。

「てめぇが口を聞く必要は無ぇ。オレの言う事を聞けばそれでいい。いいか。」

口を開こうとする男に、先制のひと言を浴びせる。
男の胸元には、先程ゾロが拾い上げた衝立の破片が突き立てられている。
その先は、割れた木片で尖ったようになっていて。
それをグイッとその身体にめり込ませる。
男はひぃっと小さな悲鳴を上げて、コクコクと頷く。

「今から女将がくるだろう。ここの騒ぎを聞き付けた男衆が呼びに行ったようだ。来たら、何でもねぇと言え。オレが暴れたとでも
言えばいい。」
「…………だ、だが、私にこんな真似…。」
「オレは元海賊狩りと呼ばれた男だ。人を何人殺したか知れねぇ。しかも、今現在は海賊だ。歯向かってきたヤツらを容赦なく
叩きのめすくらい朝飯前だ。ここの見世の連中潰すのに、5分とは掛からねぇだろうなぁ。」
「…………。」

ゾロの余裕綽々の言葉に、男がガタガタと身体を震わせる。
話の途中で顔色が変わったから、ゾロのことを知っているのだろう。
賞金6000万ベリーの極悪海賊。
その噂通りに、ニヤッとそれは非道を尽くす海賊に相応しい凶悪な笑顔を浮かべる。

「その後、てめぇにはアイツがどれほどいいか、たっぷり見せてやる。堪能できずに残念だったな。」
「っ……!!」

そこまで言うと、襖越しに女将の声が聞こえてきた。
男が適当に相手をするのを、破片を突き立てたまま、じっと見据えて。
人の気配が下がってから、男を床に下ろし、座る男の股間ギリギリにその木片を突き立ててやる。

「そこで見てろ。」

そう言い捨てて、ゾロがサンジの元へ戻ると、さっきまでの真っ青な顔が嘘のように全身真っ赤に染まっている。
ゾロが首を傾げて疑問を示すと、サンジがゾロにしか聞こえないほどの小声で呟いた。

「アイツの前でヤんのかよ。」
「てめぇをバカにされた。許せねぇ。」
「え、いや、別にバカには……。」
「てめぇがどんだけイイか、オレだけが知ってりゃいいかと思ったがな。こんなに極上のてめぇがオレだけのだって見せ付けて
やりてぇ。」
「…………なんだ、そりゃ?」

サンジが笑う。
でも、ゾロはムッとしたままで。
今度はサンジが首を傾げて、ゾロに先を促す。

「オレ以上って。」
「あ?」
「オレ以上にてめぇをヨくするっててめぇが言ったからよ。」
「?言ったな。」
「てめぇがオレに満足してねぇのかってよ。」

ゾロが拗ねたようにそう言うと、サンジが目を丸くした後、ぶぶーっと吹き出した。
それを見て、更にゾロがぷくっと頬を膨らますと、サンジがまぁまぁとゾロの手を取り、布団の上へと導く。
コロンと寝転がったサンジの上に、手を掴まれたままのゾロが乗っかる。
妙に嬉しそうな顔をサンジがするから、ゾロはそのままサンジを抱き締める。
サンジが、そんなゾロの頭を優しく撫でながら耳元でそっと吐息交じりに囁いてきた。

「てめぇ以上なんてあるかよ。いつだって、てめぇのテクで昇天モノだってーの。」
「!!!」

ガバッと身体を離してサンジの顔を見れば、顔を真っ赤にしながらも愛しげにゾロを見ていて。
思わずゾロの顔も朱に染まる。

「てめぇ以外でオレがイくわけねぇだろうが、ば〜か。」
「てめっ!!絶対ぇ、今まで以上に感じさせてやるっ!!」

自分の下で横たわるサンジの頭を掻き抱いて、ぎゅううううっと抱き締める。
痛ぇよと笑うサンジの、ゾロの愛しい唇にそっと優しく口付けた。


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