袈裟懸けの傷3

<黙想>




昨夜もまた、サンジはゾロの雄を身体に沈められていた。
何度目の絶頂を迎えたときだったか。
自分も吐き出し、ゾロの精液を身体の中に感じて、サンジは意識を手放しそうになった。
それを見たゾロがサンジが気を失ったと思ったのか、ゾロは後から犯していたサンジの背中を優しく撫でてきた。
(・・・・・・あ・・・・・・なに?)
身体も動かず、ゾロがすることに反応は出来なかったが頭は動いていた。
そして、ゾロはゆっくりとサンジの中から自身を抜き取るとサンジの腹部に手を廻して抱き締めてきた。
顔をサンジの首筋に埋めて。
「・・・・・・サンジ・・・サンジ、サンジっ!」
傷ついた子供が母親に甘えるかのような、悲痛な声で。
何度も何度も、自分の名前を呼び続けたゾロ。
そのゾロが自分を丁寧に褥に横たえ、扉を開け誰かを呼んだようでその人物と入れ替わるように外へ出て行った。
サンジの頬に、触れるような口付けを一つ残して。
(ゾロ・・・・・・どうして・・・?)
サンジは、ゾロが出て行ったと同時に目を開けて、自分の傍に居た男に目をやり、驚く。
「サンジ様、お気が付かれましたか?」
「・・・・・・あ、あぁ。お前がいつもしてくれていたのか?」
サンジが声を掛けたのは、ゾロの側近だったコーザその人だった。
ゾロの小さい頃から付かず離れず傍に居た近習の子で、ゾロが国主になった時には宰相まで勤めていたはずだ。
それが、何故ゾロの性奴の世話をしている?
「えぇ、サンジ様が此方に来られます少し前に、役職を放免されまして。今は、サンジ様のお身の回りのお世話をさ せて頂いております。」
「・・・・・・何か、したのか?」
「いえ、私にもよくわかりません。ただ、皇太后様が亡くなられましてから、ゾロ様が変わられたのは確かです。」
そう言いながらサンジの身体を清めていくコーザの言葉を、サンジは聞いて考える。

何かある。
ゾロの中に、これが今のゾロに必要だと思われる理由が。
自分に目隠しをして、サンジの身体を犯す理由が。

「ご母堂が亡くなられてからだな。ゾロが変わったのは。」
「はい。」
「亡くなる前に何かなかったか?」
サンジがそう聞くと、コーザは少し躊躇して言葉を詰まらせる。
そして、何か決意したかのように口を開いた。
「・・・・・・これは、他国にはお話せずに居たのですが。実は、皇后様は先代国主ミホーク様が亡くなられた時から正 気を失っておられたのです。」
「・・・・・・お寂しかったからか?」
「それはそうなのかもしれません。が、ご様子が常軌を逸しておりましたので。」
「?・・・・・・というと?」
「私も、聞いた話ですので正確なことは分かりませぬが・・・。ミホーク様が亡くなられて一度も墓前に参らなかったば かりか、ミホーク様が大切にされておられた剣でゾロ様に襲い掛かったと・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
言葉もない。
実父を失い、国主としての重圧に耐えながら、実母の狂っていく有様を見せ付けられたゾロ。
ましてや、殺されかけるなど・・・。
「皇太后様はその事件以降、此方から見えます胡河河畔近くの東屋に幽閉されました。ゾロ様は、ずっとその皇太 后様を毎日のように見舞っておられました。そのご様子が・・・・・・。」
「・・・・・・様子が?」
「日々憔悴されていくようで・・・・・・。」
「・・・・・・他に何か変わったことは?」
「わかりません。ただ、それ以降思いつめられることが多くなられましたし、側近の意見も以前のようには聞いてくださ らなくなりました。」
「・・・・・・蒼国以外の国に何かあったか?」
「砂国にはビビ様を人質として法外な年貢を要求したそうでございます。あと、悌国の国主エース様を降ろしルフィ様 にされる様詰め寄られたとか。
糖国には鰐の脅威に備え、一国で河岸に堤防を築くよう要望なさったそうですし、橘国には武力放棄と服従 を・・・・・。」
「もういい。・・・・・・わかった。」
サンジはコーザの言葉を遮り、渡された衣服を身に纏うと一人にしてくれるよう頼んだ。
部屋の外に控えていますと告げて、コーザは部屋を出て行く。
扉が閉められ、しんと静まり返った部屋の中でサンジは考える。
(何を考えている、ゾロ。)
コーザの言った内容を思い返すと、ゾロは南朝の結束を無にしようとしているとしか思えない。
いや、むしろ・・・・・・。
そこまで考えて、ハッとする。
もしや、ゾロは・・・・・・。
厭な予感が胸を過ぎる。
もしかしたら、残された時間はあと僅かしかないかもしれない。
それにこんなところで、ゾロの思うがまま事を運ばれるのは納得がいかない。
サンジは拳を握り締めて、唇を噛んだ。


「ん、んんっ・・・・・・んあ、はっ・・・・・・。」
サンジはうつ伏せになり、頭を枕に押し付けてそれを抱え、腰を高く上げて呻く。
「てめぇで動かねぇと、いつまでたってもイけねぇぞ。」
ゾロがサンジの股間の下で、サンジの棹を咥えながらそう言った。
そして、後孔に2本指を突き入れて、出し入れしながらサンジのイイところを的確に撫でてくる。
またしても視覚を奪われたサンジは、煌々と照らし出される明かりの中、腰を前後させながらゾロに中心を責められ ていた。
「あ・・・・・・あふぅっ、うん・・・んあ、あ、あぁっ!」
「もう、イきそうか?ちょっと待て。」
ゾロは、サンジの今にも爆発しそうな雄の根をしっかり指で挟み込みイけない様にすると、サンジの下から這い出し た。
入れられた指で広げられた後孔に舌を差し入れて、唾液を流し込まれる感覚にサンジの腰が震えだす。
それに構わず、何度も舌で舐め上げ、ねっとりと入れられていく液。
イけないもどかしさに、サンジが枕に押し付けた顔を更に埋めて喘ぐ。
クククッと笑うゾロの声に、羞恥心を覚えるだけの余裕は既にサンジにはなかった。
ゾロに慣らされた身体が、勝手にゾロにいいように動いていく。
後孔は、ゾロが欲しくてヒクヒクと収縮する。
サンジの雄は、イかせて欲しくて腰が前後に揺れる。
「挿れてほしいか?」
「ん・・・・・・あっ・・・い、いれ・・・・・ほし・・・・。」
「ちゃんと言わねぇとやらねぇぞ。」
ゾロはそう言うと、根元を押さえたまま入っている指を更に奥に進めてくる。
「ああっ、あ・・・・・・ゾ、ロっ、い、挿れてっ・・・あ、・・・欲し、い・・・んあっ」
「・・・・・・・・・名前、呼ぶんじゃねぇ!」
「あああっ、んあーーーっ!!!」
サンジがゾロと口走った瞬間、ゾロの身体が強張ったかと思うと勢いよく指が引き抜かれ、ズンとゾロの棹で貫かれ る。
挿れられた瞬間、サンジ自身が弾けた。
何度も達している為、感覚だけの絶頂。
それでも、そのせいで収縮するサンジの内壁はゾロの射精欲を刺激する。
くっと声を上げて、ゾロも達した。


サンジはグッタリと脱力し、気を失ったように見せかけた。
この間の行為を確かめるように。
するとやはりゾロは抱き締めるのだ、サンジを。
泣きそうな声でサンジを呼び、優しい口付けをサンジの頬に落として。


出て行ったゾロに、サンジは思いを馳せる。
結局、恨み切れない自分が居る。
特に、あの寂しげに自分の名を呼ばれてからは。
よく考えれば、ゾロが自分を傷つけたのは最初の袈裟懸けの傷だけ。
それも、軽いもので今では殆ど目立たなくなっている。
自分を辱めるときも、言葉はキツく唇に口付けることはなかったが、肌に触れる指も啄ばむ唇も舐める舌もどれも優し くて。
口さえ開かなければ、愛されているのかと勘違いするほどだ。
それに・・・・・・先程のゾロ。
名を呼ばれた時の動揺は、どういう意味だ?
それに、ゾロが自分の名を行為の最中呼ばないのは何の意味合いを持つ?
考えなければならない。
自分の現状を打開するため、ゾロを何かから救うために。


考え込むサンジの脇に、いつものようにコーザが身体を拭く用意をして現れる。
だが、いつもの表情ではないのを察して、サンジが小声で聞いた。
「どうした?」
「はい。悌国に動きが。」
「なんだ?」
「エース様が行方不明と。」
「エースが?」
「はい。密偵を放ちましたところ、情報が先程入りました。」
「・・・・・・・・・何と?」
「こちらに向かわれている、と。」
「?!!」
驚きを隠せないサンジに、コーザが更に情報を話す。
「サンジ様が軟禁されていること、遂に他国に洩れたようでございます。もちろん出元は自国内のようですが。」
「どういうことだ?」
「ゾロ様のやり方に反発を覚える者が国内でも増えてまいりました。一部の側近を除いて、もはや殆どの近習がゾロ 様の元を離れているかと。」
「・・・・・・・・・。」
外部だけでなく、内部から崩れ始めているゾロの足元。
それを察知できないゾロではなかった筈・・・・・・以前のゾロなら。
今のゾロが本当におかしいのであれば仕方ないが・・・。
もし、気付いていてそのまま放ってあるとしたら。
「何かあるな。」
「はい。」
孤立する事を望んで動いているのならば、まさにゾロの行動はうってつけだ。
その根底に隠れたゾロの真意を探り出すのに、時間はもうない。


その日の夜、またしてもゾロに犯された後、サンジがいつものように1人で褥で呆然としていると扉を叩く音がする。
(?誰だ?ゾロなら、いちいち断りなんぞいれねぇし、コーザなら声を掛けてくる。・・・・・・もしや?)
サンジが扉に近付き、誰何の言葉を投げると
「オレだ、エースだ。」
と声がする。
驚いて、サンジが扉を開ける。
そこには、前悌国国主エースの姿があった。


サンジはエースを部屋に招き入れ、窓際に2人腰掛ける。
エースの話によれば、サンジが幽閉されていることは他国でも義憤の声が上がっているらしい。
毎年の多額の貢物、農作物等の法外な納税、そして先日のビビの1件。
これだけでも、サンジに対しもっと強く出るように勧めてきた他国国主達。
サンジ幽閉は、予想も付かない悪行と捉えられているらしいのだ。
そして、各国に処せられた考えも及ばない無理難題に他国国主達の我慢も限界に来ている、と。
「今から、オレと逃げるか?サンジ。」
エースの誘いにサンジは首を振る。
「逃げれねぇ。オレが居なくなれば、オレの国の誰かに危害が・・・・・・。」
「・・・・・・そうか。」
エースが腰を上げ、サンジに微笑む。
「もう少しだ。ルフィが皆に声を掛けている。ゾロはもう南朝の盟主じゃねぇ。鰐の件もある。事態は急速に進展するだ ろう。」
「あぁ。」
「待ってろ。必ずオレ達で、サンジ、てめぇを救い出してやる。」
エースはそう言うと、扉を開けて外へ出る。
サンジは部屋の中から、エースを見送る。
「ここから見える処刑台から狼煙が上がる。それが合図だ。」
「わかった。」
サンジが頷くのを見届けてエースが姿を消す。
扉を閉めながらサンジは思う。
(もう、時間が無い。・・・・・・ゾロ、てめぇ、何考えてやがる?)


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