ゾロとの昼間の伽が始まって、早1ヶ月が経とうとしていた。 最早ゾロの手と唇が触れていない箇所は、サンジの身体のどこにも無い……ただ1箇所後孔を除いては。 その他は至る所にゾロのお手付きの痕が残されているから、サンジは恥ずかしくてウソップの前で着替えることもできない。 ただでさえ白くて透き通るような肌。 それに、付けられたばかりの朱と、日を追うに従って濃くなる紅と、薄くなり掛けた茶と。 その色合いがなんとも言えず猥らで。 事前に身を清める時、自分の身体を見るに付け、サンジは赤面してしまうのだ。 そして、その気恥ずかしさと同時に襲う虚しさ。 抱かれる度に恋焦がれる気持ちが膨らんでいくのだ。 と同時に、身体も変化を見せ始める。 疼くのだ……それこそ違う相手とはいえ、受け入れた事のあるそこが。 恐怖と苦痛の中、激痛を伴い、ただ相手の為すがまま準備も出来ていない内に捻じ込まれた場所。 ゾロとの行為では、直接弄られてもいないのに……。 意識も飛びそうな快感の中、サンジは叫びそうになる。 挿れてくれ、と。 ゾロの熱くて硬い肉棒で、突っ込んで抉って掻き回してくれ、と。 誘えとは言われたが、そんな事口が裂けても言えない。 全身で、態度で誘えと言っていたのだ。 言葉にして、それをまだだと否定されたら耐えられない。 喘いで、善がって、身悶えて。 そんな自分を見て、ゾロがその気になるまで待とう、と。 それに一度でも突っ込まれたら、それでお別れだろう。 早く最後までしてくれと願いながらも、ギリギリまで期限切れ間際まで引き伸ばしたいとも思う。 ただ、傍に居たいから。 そんなサンジの気持ちを知ってか知らずか。 ゾロは伽を始めた、その時と全く変わらない。 着物も脱がず、サンジの中に突っ込もうともせず。 唯只管、サンジをイかせるだけ。 行為自体は日々変化しているのだが。 まずサンジの声を聞きたがった。 善がる声を抑えようとすれば、口を開かせ、指を突っ込んできた。 サンジが首を振ってそれを吐き出せば、後頭部を固定して口付けてきた。 その接吻がまた、サンジには堪らない。 ゾロの舌の動きに応えてしまいそうで。 ゾロの首に腕を廻してしまいそうで。 押さえ込んでいる気持ちが態度に出てしまいそうだったから。 だから、言ってみたのだ。 「隣に誰がいるかわからないのに、声なんて上げれるか!」と。 それに対し、ゾロはあっさり言い切った。 「誰も居ねぇぞ。」と。 何でも、ゾロが伽の為にこの離れへ渡ってきた時は、コウアンもウソップも席を外すよう言ってあると言うのだ。 その間、何をしてもいい、と。 コウアンの話では、ウソップは街へ出ていると言う。 何をしているのかとは詮索しない、とも。 ならば、と声を出すようにしてみた。 もう、あの口付けだけはされたくなかったから。 ゾロの気持ちを勘違いしそうだったから。 唯、ゾロは代償として自分の身体を使って遊んでいるだけと納得したかったから。 それに何より、声を出す事で少しでもこの切羽詰った感情を吐き出したかった。 サンジが声を上げるようになると、ゾロはサンジの身体を隈なく触るようになった。 最初に弄られた陰茎と乳首は勿論、こめかみに始まって耳朶、首筋、顎、鎖骨、脇、二の腕、手首、手指、臍、脇腹、足の |
付け根、大腿、内股、脹脛、踵に脚指。 サンジが少しでも反応を返せば、嬉しそうな顔をしてそこを飽きるまで弄繰り回す。 それこそ、サンジが余りの快感に身悶えて、 「………もっ……やあっ……は、やくぅ……!」 と言うまで、サンジを達しさせようとしない。 限界に震えるサンジの茎を満足そうに見つめてから、手で口でサンジを何度もイかせた。 そして最後ぐったりと横たわるサンジに必ずこう言うのだ。 「大丈夫か?」と。 その心配そうな、それでいて嬉しそうな顔が堪らなく愛しくて。 表情を隠せないから、サンジはいつも褥に顔を埋めて唯頷く。 そうすると、ゾロはサンジの頭をするっと撫でて部屋を出て行く。 それが毎日毎日定刻に始まり、定刻に終わるものだから。 身体も自然とそれに慣れてくる。 身を清める段階で、もうサンジの身体は火照り始めてしまう。 早く抱いて欲しくて。 早く触れて欲しくて。 あの手を、あの唇の熱さを、あの声を欲してしまうのだ。 そして、今日もまた、褥の前に座りゾロを待つ。 先程遠くで襖の閉まる音がしたから、コウアンとウソップが離れを後にしたのだろう。 唯1人、昼間の明るい日差しが障子越しに差し込むこの部屋で。 いつもならばもう来ていてもいい筈のゾロを待って。 だが、半刻ほど待ってもゾロは現れなくて。 サンジは身体の芯で熱を持つ情欲を抑え切れなくなっていく。 昨日はこの褥の上で、恥ずかしいほど股を開かれて、そこで息衝く陰茎を咥えられて。 その前は、四つん這いにされて、背中を舐められながら後ろから廻された節くれ立った手で前を攻められて。 その前は、胡坐を掻くゾロの方を向いて座り、首筋を軽く噛まれながら尿道口を指先で弄られて。 その前は、その前は、その前は―――― 脳裏を過ぎるのは、ゾロとの甘くて苦しい情事の1つ1つ。 それが鮮明に甦ってしまい。 サンジは自分の下着が湿り始めているのに気付く。 自分の欲望の証が、下着の中で開放を主張する。 泣きそうな気持ちでそこを見下ろし、人の近付く気配の無いのをいいことに、自分の手をゆっくりとそこへ伸ばしていく。 裾を割り、下着の上から触れるだけで、強烈な快感が身体中を駆け巡る。 その手がもう少し暖かくて、もう少しゴツゴツしていたなら、きっともっと快感を得られるだろうに。 そう思いながら更なる刺激を求めて、自然と下着の中へ手が入っていく。 直接それを触れば、既に固くて、たらたらと汁を垂れ流しているのがわかる。 サンジは羞恥を忘れて、ただ行為に没頭する。 ゾロの動き、ゾロの手の位置を思い出しながら。 ゾロの声、ゾロの暖かい身体を思い返しながら。 「………ん、ふぅ……あっ、イイ……。」 目を閉じて、違和感を感じつつも自分の手を動かしていく。 そして、ゾロとの接吻を思い描いて絶頂に達する。 はぁはぁと大きく息を吐いて、ふと我に返り今度は溜息を吐く。 こんなにもゾロに囚われている事に。 こんなにもゾロとの情事にのめり込んでいる事に。 手に付いた自分の精液を手拭いで拭おうと立ち上がった時だった。 中庭側の障子越しに人の気配を感じて、ビクッとそちらを向く。 ゾロは大抵、屋敷内の障子側からだ。 中庭側から現れた事は無い。 そしてなにより、気配が違う。 ゾロはもっとこうおっとりしているというか、泰然としているというか、そんな感じで。 こんな神経質そうなものは、昔どこかで感じたことはあってもここでは皆無で。 だから、ゆっくりと手を拭うと、居住まいを整え、足音と気配を殺して中庭側へ忍び寄り、バッと障子を開け放った。 そこには―――― 「………………お前……クロ?」 「お久し振りです、サンジさま。」 中庭の縁側の下に座り込んで、障子を開けた途端に平伏したその男をサンジは知っていた。 百計のクロ。 まだサンジが10歳の頃、鴨生の国に訪れた戦術に富んだ男だ。 確か何処かで知識を学んで、諸国を渡り歩いた挙句、サンジの国に辿り着いたとか。 ゼフに取り入り、参謀として召抱えたものの、確か鴨生の国が滅びる3ヶ月ほど前に国許を離れた筈だ。 理由は何度聞いても教えて貰えなかったが。 「どうして、ここに?」 「ゾロさまとは旧知の仲で。サンジさまが囚われていると聞き及んで、罷越した次第で。」 「オレの事は誰に?」 「ウソップ殿に伺いました。」 「そっか。」 サンジはそこまで話すと、縁側へ出た。 手をクロへと差し伸べ、先程の事を思い出してすっとその手を引っ込める。 そしてちょっと申し訳ないと思ってニッコリと笑った。 「久し振りだな。顔を見せてくれて嬉しいよ。」 「恐れ多い事で御座います、サンジさま。………実はここへ参りましたのは、サンジさまにお話が有りまして。」 「???何だ?」 「今現在、サンジさまはゾロさまの小姓としてお仕えされているとか。」 「………まぁな。」 「条件は鴨生の国の返還とか伺っております。」 「………よく知ってるな。」 「私の耳は地獄耳ですから。……そこで提案なのですが。」 首を傾げるサンジに、クロが更ににじり寄り、縁石前で止まる。 周囲を確認して、誰も居ないことを確認すると、声を低くして言う。 「私の知略とサンジさまの領主としての英姿さえ有れば、鴨生の国ゾロさまのお力無くとも必ず取り戻せます。」 「………え?」 「ですから、私と共にここを出ましょう。今なら誰もおりません。さあ、お早く。」 「でもオレ……約束……。」 「それも、鴨生の国を思っての事でしょう。取り戻せるのならば、私と共に来た方がサンジさまの御為――――」 そこまで言って、急にクロの台詞が止まる。 突如、目の前に現れた刀身がその言葉を遮ったのだ。 サンジも驚いて、その刀身の元を辿り、見上げれば―――― 「何をしている?」 初めて聞く声だ………ゾロの声なのに。 いつもサンジに向かって掛けられる優しくて暖かい声じゃない。 コウアンに向ける尊敬の籠もった声でもない。 部下に向ける明るい声でもない。 相手をその声だけで凍り付かせる程の低くて怖くて、詰問調の厳しい声だ。 炎上する天守閣で聞いた声は、威圧感はあったけれどもどこか楽しんでいる風にも取れたのに。 だがその声に刀に臆することなく、クロは平然と薄笑いを浮かべてゾロを見る。 「これはこれはゾロさま。私とて元鴨生の国の陪臣。サンジさまがお見えになっているのでしたら、お会いしたいのも当然 |
でしょうに。何故私にはお言葉が無かったのでしょうか?」 「……………言わずとも知れた事。貴様こそ、オレの言った事わかっておるのか?」 「さて、何の事でしたでしょうか?」 「クロっ!!貴様っ!!!」 「そもそもゾロさまこそ約を違えておりますれば。この件に関してはもう一度、互いの胸の内じっくりと語り合いましょうぞ。」 「貴様と話す事など無いわ。とっとと去ね!」 「…………わかりました。此度はこれで引き下がりましょう。では、サンジさま。またお目に掛かりに参ります。」 激しい応酬の後、クロがあっさりとその場を去る。 それを忌々しそうに見送るゾロが、刀を鞘に納めながらその視線をサンジに向けた。 「………どうしたい?」 「え?」 「てめぇは、どうしたい?」 「……………。」 ゾロの口調に怒りはあるものの、その中に他の感情を見つけて言葉を失う。 辛そうな、寂しそうな、悔しそうな、憐れんでいるような複雑な感情を。 言葉無くその場に座り込むサンジに、ゾロが手を伸ばす。 その手に手を重ねれば、少しホッとしたようにゾロが肩を下ろして。 サンジの手を引っ張り立たせると、室内に入り障子を閉めた。 刀を畳の上に置くと直ぐに帯を解かれて、着物を剥がれて。 褥まで移動しようとするサンジの動きを制されて。 障子に凭れるような形で、ゾロの舌を首筋に感じて。 「……な、なぁ……ここで、か?」 「…………何も言うな。」 そう言うと、ゾロは性急に事を運び始めた。 サンジを立たせたまま、その前にしゃがみ込んで。 即座にサンジの下着を取り去り、先程一度達して力を無くしていたそれを見て、ゾロが固まる。 そして、下腹部と大腿に付いていたサンジのまだ乾き切っていない白濁の跡を見つけて色を失う。 「これ………どうした?」 「え?………いや、その……。」 「まさか、クロかっ?!!」 「ち、違ぇよっ!!!………その、てめぇが遅かったからよ……自分で……。」 最後サンジが小さく呟いた瞬間、ゾロが目を見開いて。 俯いたゾロにサンジが声を掛けようとしたら、その顔が急に上がって。 サンジがどうした?と聞くより早くゾロが動いた。 「やっ……ああああっ……いきな、り……それっ……ああんぅ……!」 茎を口に含まれ、片手で袋を揉まれながら、内股を撫でられて。 急速に芯を持つサンジの欲情の証を、これでもかと唇で扱き舌で舐めしゃぶる。 カタカタと鳴る障子に気を取られつつ、直接的な刺激に足元が覚束無い。 ゾロに縋りそうになって、慌ててその手を握り締めて。 それに気付いたのか、ゾロが一旦唇をサンジの陰茎から離す。 とろりと伝う液が、ゾロの唾液と自分の精液の混じったものだろうか、すこし粘り気があるように見えて。 サンジの茎とゾロの唇を結ぶ糸に障子越しの光が反射して煌いて、サンジは全身が真っ赤に染まるのを感じる。 見上げてくるゾロは、いつもの優しい顔だった。 「そこ座れ。縋りてぇなら、オレの襟持ってろ。」 ふわりと笑って、サンジの腰を支えてくれて。 ゆっくりと腰を下ろしたサンジの手を肩まで導いてくれて。 襟を握ったのを確認してから、ゾロはもう一度サンジのそれを咥える。 じゅっじゅっと音を立てて吸われて、惜しげもなく高い嬌声が上がる。 「だ、だめ……も、出る……離…せっ!!」 「…………。」 自分のを咥えられたまま、見上げてくるゾロに言いようも無い程の熱さが身体の中を満たして。 そのままサンジは、ゾロの口内に欲を吐き出した。 肩で息をするサンジの前で、ゾロはそれをゴクッと音を立てて飲み込んだ。 今までそんな事をされた事がなくて、サンジは大いにうろたえる。 「え……えと………。」 「しばらく来れねぇ。10日ばかり留守にする。その間この離れ出るんじゃねぇぞ。」 「え?」 驚いてゾロを見つめるサンジに、腕で口を拭いながらゾロが言う。 そして、先程脱がした着物をサンジに放る。 それを受け取り、呆然とするサンジにこう言ってゾロはその場を後にしたのだ。 「クロには絶対ぇ近付くんじゃねぇ!」 |
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続く 4へ
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