素直な気持ち  後編




少し温めの湯の張った風呂桶に膝立ちの状態で入りながら、コックの唇を貪る。
ほんのりとピンク色に染まったコックの顔を、薄目を開けてみながら。

しっとりと湿った身体を抱き寄せて、腰をヤツの腰に押し付けながら。

コックはその刺激に耐え兼ねるのか、時折オレの口の中で「んぅ・・・!」と喘ぎ、堪らないように腰を揺らす。
背中を撫でていた手をゆっくりと下へ滑らせて、その小さな尻を揉んでやる。
ビクッと肩を震わせて、唇が離れない程度に首を振るコックが可愛くて。
何度もそれを繰り返した後、その双丘の間にある窄まりに指を置く。
「んんん・・・・・・ぅんぅ・・・。」
「・・・挿れるぜ。」
唇を一旦離し、耳元でそう囁いて、真っ赤な顔をしながら頷くコックにもう一度キスをすると、指を回すようにして中に入れていく。
声が漏れないように、必死で声を殺しながらもそれでも上がる声を、オレが飲み込んでやって。
1本完全に根元まで入った時には、コックは半泣きの状態でオレにしがみ付いていた。

「辛いだろ。声、出せ。」
「んんっ・・・・・・あっ・・・でもっ・・・!」
「どうせ、皆にゃバレてんだ。オレは構やしねぇ。後は、てめぇだけだ。」
「はっ・・・てめっ・・・・・・聞き、てぇか・・・・・あっ・・・。」
「ったりめーだ。てめぇの声、聞かせろ!」
「あん・・・わかっ・・・・・・わかった、から・・・あっ・・・早く!!」

コックの返事を聞いて、中に入れた指をぐりぐりと回すように動かす。
それがコックのイイ所に当たる度に、コックの嬌声が上がる。
2本、3本と増やしても、声を上げられることで身体の緊張が取れるのか、決して痛そうでも辛そうでもなく。
コックの内壁は、オレの指を優しく中へ誘うように動いた。
「もう・・・・・・挿れろっ・・・ゾロ・・・!」
「あぁ、オレも我慢できねぇ。」

コックの身体をバスルームの壁に貼り付けるように持ち上げ、オレの完全に勃ち上がった息子をあてがい、一気にその身体を下ろし た。

「あああっ・・・あっ、あっ、ゾロっ・・・すげぇ・・・イイ・・・・・・あんっ・・・イイ・・・。」
「・・・くっ・・・あんま、持たねぇ・・・サンジっ!」
「オレも・・・・・・もう、イくっ!イく・・・・・・あああ、深っ・・・奥、熱ぃ!!」
「・・・イけっ・・・サンジっ!!」
「んあっ・・・あう・・・んんんんっ!!」

コックのが弾けた後、オレもその強烈な締め付けに耐え切れず、奥に精を放った。

昼間っからの熱い情事。
いくら理性のぶっ飛んだオレでも、コックが後に控えている仕事のことを考えて、2ラウンドで抑えたことは言うまでもない。





事後、腰を押さえつつ、バスルームから出て時計を見てハッとしたコックは、
「今からおやつ作ってくる。」
とのんびり服を着るオレを置いて、慌しく服を身に着けたかと思うと、走ってその場を後にした。
その後姿にいつもならせっかちなと苦々しく思うのに。
通常にない陽も高い内からのコックとの触れ合いに思いを馳せて。
なんか満たされてるなぁと思いながらも全て服を着終えた時。

床に落ちている紙切れと小さな丸い粒に気付く。

(昨日のアレ・・・か?それとこりゃ、薬か?)

拾い上げて、そのまま中身を見ずにコックに返そうかとも思った。
だが、とその場で思い止まる。
あれだけ、悩んでいたのだ。
それに今日のコックの行動・・・。
恋人の自分が気に掛けるのも当然だろう。
内緒で見るのには抵抗があるが、これも全て愛しいコックの為だ。
そう自分に言い聞かせて、その紙切れを開く。

そして、目が点になった。

余りの内容に、顔がにやけて仕方ない。

「気が付いた?」
その声にハッとして開け放たれたドアを見れば、ロビンがそのドアに凭れてにっこり笑っている。
その顔が、全てを知っている顔だと気付いて。
「こりゃ、ナミとてめぇの仕業か?」
そう聞くと、ロビンがふっと笑って、肩を竦める。
「貴方が、いけないんじゃないの?剣士さん。」
「何?」
「貴方も素直じゃないから。だから、コックさんが一生懸命になっちゃうのよ。もっと気楽にさせてあげたら?」
「・・・・・・どういう意味だ?」
「その錠剤、もう1粒なかった?」
「あ?」
そう言われて手元と足元を見るが、どこにももう1粒なんて見当たらない。
眉間に皺を寄せてロビンを見れば、
「ないのなら、そういうことね。何の錠剤か、船医さんに聞くといいわ。」
そう言って、ロビンが立ち去っていく。

何が何やらわからないが、とりあえずその紙切れを腹巻の中にしまう。
それからもう1つの白い粒を持って、この船のモコモコ船医の元へと向かった。




***



夕食後、イチャイチャするオレ達に呆れたのか、クルーは早々に退散してくれて。
オレは、後片付けをするコックの後で紙切れと白い錠剤をテーブルの上に乗せる。

コックが洗い物を終えて、手を拭きながら振り返り・・・固まる。

「ゾロ・・・・・・それ・・・。」
「てめぇが昼間落としてった。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「何か言いたい事あんだろ?」
「ん?ん〜、まあな。」
「・・・・・・言えよ。」
言われる言葉をそれなりに頭の中で考えているんだろう。
ならば、その通りの言葉で返してやろう。


「アホだな、お前。」


案の定、カチンときたのか。
俯いていた顔をガバッとあげて、つかつかとオレに歩み寄ると、胸倉を掴んで睨み付けてきやがった。

「アホって・・・どういう言い草だ!そりゃ!!」
「だって、そうだろが。」

胸倉を掴まれたまま、テーブルの上の紙切れをホイッとコックに渡してやる。
ナミがいつも定期購読している雑誌の切れ端だろうか。
ホロスコープの一部が切抜きしてあって。
その中身と言えば・・・。


『うお座の今年のバレンタインv

 いつも恥ずかしくて素直になれない貴方。
 そんな貴方の態度に、相手は物足りなく思っている筈。
 身近にいる魅力的な異性に、ついふらふらと相手の心が揺れてしまうかも・・・。
 とにかく積極的にアタックしましょう!
 言葉に仕草に態度にはっきりと気持ちを表すことが大事です。
 そうすれば相手は貴方に夢中になること間違いなしv』


下唇を噛んで、悔しそうにオレを睨むコックの眉間に人差し指を突きつけて言ってやる。


「いいか、よくこのアホな頭に叩き込んどけ。」

「こんな占いに頼る必要もねぇし、神に祈ることもしねぇでいい。」

「この先どんなことが起ころうが、どんな美人が言い寄ってこようが、オレがてめぇ以外に惚れることは有り得ねぇし、ふらつくことな んざ絶対ねぇ。」

「いつものてめぇに夢中なんだ。これ以上、オレにどうしろっつんだ。」

「こんなくだらねぇ占いなんぞ信じるな。てめぇが信じるのは、オレだ。オレだけでいいだろが。」


一言一言、区切るように語尾もはっきり発音してやって。
しっかり言い切ってやって。

ポカンと開いたそのアホなお口にキスを1つお見舞いしてやった。


それでも、ほけ〜っとした顔のままのコック。
「おい、聞いてんのか?」
金色の頭をコンコンとノックしてみた。
したら、漸く戻ってきたのかバッとオレから腕を離すと、一瞬にしてボンッと顔を朱に染めた。
「てめぇ・・・・・・よくもまぁ・・・んなこと、平然と・・・。」
「思った事口にすんのがそんなに大変か?」
「・・・・・・もういい。オレってそんなにわかりやすいか?」

コックは脱力したように肩を落とすと、キッチンの引き出しを開けて1つの包みを取り出した。
そして、それをオレの前にコトッと置いた。
「何だ?」
「それ・・・・・・ナミさんとロビンちゃんから。」
「あ?」
「今日は、バレンタインデーだから。」

そう言われて思い出した。
晩飯のデザートが苦いココアケーキにリキュールの効いたチョコレートソースがかかっていたような。
他のクルーは生チョコクリームケーキだった。
しかも、その席でナミとロビンが他の男共に何か配っていたような・・・。

「てめぇのだろ?これは。」
「オレのは、もうしまってある。これは、てめぇのだ。オレから渡してねって。」

コックが不安がってるのがわかったのか。
昨日散々オレとコックを引き離して、その不安を煽っておいて。
魔女軍団は今日一日オレに接触しないように気を配ってくれたってワケか。
コックがオレの傍にいやすいように。
いつもなら、茶化しに来るはずのナミなんざ、朝から口もきいてない。

(こりゃ、借金増額されたかな?)

ヘッと笑いながら、その包みを開けてみる。
中から出てきたのは、小さなハート形の板チョコ。
それを摘んで、コックに差し出す。
きょとんとしたコックに言ってやる。

「女共からのチョコなんざいらねぇが、てめぇの口から貰えるなら食べてもいいぜ。」
「!!・・・・・・ったく、手間のかかるマリモだぜ。」

そう言って、オレからそれを受け取り、口に含んでコックが顔を寄せる。
少し口を開けて待ってやれば、唇が合わさると同時に舌に乗せられたチョコが滑り込んでくる。
そのチョコをオレとコックの舌で溶かす。
嘗め回し、互いの口を行き来していく内にドロドロに溶けたそれが2人の口内を甘く犯していく。
完全にチョコがなくなっても、オレはコックの唇を離さなかった。




あの白い錠剤。
チョッパーに渡したら、驚いた顔をしてオレに聞いてきた。
「これ、ナミに渡したのと一緒だよ。何でゾロが持ってんの?」
「・・・あ、いや、前の島で試供品とかいって一粒貰ったんだが、何か忘れちまってよ。」
「ええ?危ないなぁ、ゾロ。これはね、自白剤に使われる薬なんだ。軽いものなんだけどね。何でもお宝のありか吐かせるのに使い たいからってナミが言ってて。いくら、悪いやつでもあんまり変な薬はダメだろ?だから副作用のない軽いの渡しておいたんだ。」
「飲むとどうなるんだ?」
「う〜ん、気持ちを隠せないっていうか、素直に行動に出ちゃうっていうか・・・とにかく思った通りに動いちゃうんだ。」
「へぇ、流石だな、チョッパー。・・・・・・それ、オレいらねぇからチョッパー、お前に渡しとくぜ。」
「馬鹿だなぁ。褒めんなよv・・・うん。貰っておく。」

普段のオレへの態度が、オレの気持ちを留めておけないと思ったのか。
しかも、薬に頼んなきゃ素直になれねぇとは・・・。
ホントにアホな男だ、こいつは。
その普段と2人きりの時のギャップが、オレには堪らなく魅力的だっつー事がわかってねぇ。
況してや、いつも今日みたいにべったりしてぇと思ってくれてるのならば尚更だ。
それならば、これからは照れ屋なこいつの代わりにオレが動いてやろう。
朝のキスに始まり、日中なるべく傍にいて、そのまま夜に突入だ。




一旦唇を離して、コックに囁く。
「薬なんぞに頼らなくてもオレはいつでも言ってやるぜ。」
「・・・・・・ゾロ?」
「てめぇ、オレにも飲まそうとしただろ。」
「・・・・・・・・・だって、てめぇ・・・。」
「確かに言ってなかったかもしれねぇがな。態度で丸分かりだろうが。・・・ま、それでも言葉が欲しいときもあるっつーならオレに言 え。何度だって言ってやる。」
「・・・・・・ゾロ?」
「てめぇに惚れてる。好きだぜ、サンジ。てめぇはいつものてめぇが一番いい。」
そう言って、前髪を上げて両目を覗き込んでやると、不安そうだった視線がふっと柔らかくなった。
そして、ニヤッといつもの人を小馬鹿にしたような笑顔で言った。

「てめぇも、な。」

互いの後頭部に手を回し、貪るように口付け合う。

そうして、甘い甘いバレンタインの夜は更けていった。









翌朝、またしても早く起きたオレが寝惚けたまま、ラウンジに入るなりコックにキスしようとして、甲板まで蹴り飛ばされたことは余談 である。




END


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リク内容遵守v薬に頼らないと素直になれないサンジと、薬が無くても素直な誑しゾロvv




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