港の明かりが、灯台を除いて全ておちた。 ――――今日も帰って来なかったな。 ベランダで一服しながら溜息をつく。 ゾロと暮らし始めて1年余り。 流石は世界一の大剣豪。 噂はグランドライン中に瞬く間に広まり、我こそはと闘いを挑んで来るものが後を絶たない。 この辺鄙で、辿り着くのも難しいオールブルー。 ここへ向かう海図が高値で取引されているとか。 ゾロが来て2週間程で現れた剣士にそう教えられ、 「んなことするのはナミに違いねぇ。」 と怒るゾロにコリエを喰らわせてやった。 もし、そうならナミさんには感謝しこそすれ、悪口雑言などもっての他だ。 『世界一の大剣豪』の称号は闘い続け、勝ち続けてこそだ。 このグランドラインの片田舎に居る自分の側では、相手なんぞ現れない。 再開と想いが通じた喜びが少し落ち着き、やっぱり離れなきゃ駄目かと悩み始めていた矢先だったのだ。 心底ホッとしたのを覚えている。 クソジジィに送り損ねてたオールブルー発見報告を思い出して出しちまう位、精神的に穏やかになったんだ。 とはいえ、平穏なこの島で決闘なんぞ問題外。 ましてや、サンジに迷惑かけたくないと、ゾロはいつも近くの無人島に相手を連れて行く。 しかし・・・・・・・・・。 ――――その度に迷子になるってどうよ。 往復6時間もありゃ着く島だ。 にも拘らず、その日のうちに帰って来た例がない。 今回は最長だ。 相手は戻ってきてないのだから、ゾロは当然勝ったに決まっている。 大方、船に乗って寝過ごしているのだろう。 ゾロが出て行って、もう2ヶ月。 サンジは、今夜何度目か解らない溜息をフゥッと吐き出した。 もう今日は帰らないだろうと諦めて、部屋に入ろうとした当にその時。 視界の隅に、何かがキラッと月明かりに反射したのが見えた。 振り向いて目を凝らすと、小さく見えた人影が手を揚げた。 それから、 「サンジっっっ!!!」 自分を呼ぶ、待ち望んだ愛しい人の声。 居ても立っても居られず、ベランダから飛び降りて駆け寄った。 「ゾロ、ゾロっ!!」 と名を呼びながら。 そしてあと一歩、というところで。 「てんめえぇぇぇ、迷子になんかなってんじゃねぇーーーーーっ!!!!」 渾身の廻し蹴りをお見舞いしてやった。 紙一重でゾロはそれをかわし、額に怒りマークを浮かべて怒鳴った。 「それが漸く帰って来た恋人に対する態度か、クソコック!!!」 「てめぇこそ、仮にも恋人気取るなら、2ヶ月もほっとくんじゃねぇ!!どんだけ・・・・・・・・・。」 そこまで言って、言葉に詰まる。 「・・・・・・・・・コック?」 「どんだけ、心配したと思ってやがる、このクソッタレが。」 ボロボロと涙が零れる。 飛びついて、抱き締めて、首筋に顔を埋めて。 何度も何度もキスをする。 啄ばむような優しいキスから、次第に相手を貪り尽くすような激しいキスを。 漸く唇が離れて、ゾロが額をサンジのそれに押し当てた。 「遅くなって、悪かった。」 「迷子野郎が。いい加減真っ直ぐ帰ってきやがれってんだ。」 サンジが泣きながら悪態をつくと、ゾロは苦笑する。 そして、舌でサンジの涙を舐め取ると、 「今すぐ抱きてぇ。」 と白い項を指先で撫で上げる。 久し振りの感触に、サンジの身体が震える。 「アホが。・・・・・・・・・・・・部屋まで我慢しやがれ!」 欲しいのなんてお互い様だ。 ゾロがサンジを抱え上げて、歩き出そうとしたその時、 コホンッ! と咳払いするのが聞こえた。 ゾロが振り向き、ゾロの胸からサンジが顔を上げると、 そこには若い男が1人立っていた。 「ゾロ、降ろせ。」 サンジは低い声でそう言うと、ゾロの腕の中から飛び降りた。 そして、キッとゾロを睨み付けた。 「どういうつもりだ、マリモヘッド。」 「あぁ?」 「また、オレを嵌めようってか。」 1年前、ゾロがサンジを試す為に女を連れて来たことを思い出して、サンジは憮然とする。 ゾロは最初、サンジが何を言っているのか解らなかったが、すぐにピンときて呆れ顔になった。 「何勘繰ってやがる?こいつぁオレを連れて来てくれただけだぜ。」 「なんでここ来んのに、案内がいるんだよ!」 「なんでって、そりゃあ、その・・・・・・・・・・・・あーもう、その日のうちにどうしても着きたかったんだよ!!悪いかっ!!!」 ゾロの逆切れに、サンジはしばし呆然としてそれからぶっと吹き出した。 迷子の自覚のあるゾロが、そこまで必死になって自分の元へ帰って来たというのだから、可愛くて仕方ない。 ――――あの、魔獣がだぜ。 くくくっと笑いながら、ゾロの首に手を回す。 「疑って悪かったな、ダーリン。ならもう帰ってもらってもいいのか?・・・・・・・・・オレ、もう我慢できねぇし?」 最後の台詞を耳元で囁いてやったら、ゾロが目を見開いた。 そして、次の瞬間、サンジを抱えて脱兎の如く走り出した。 「あ、あのぅ・・・・・・・・・。」 と遠慮がちに声を掛ける先程の男に 「明日の朝にしろっつっとけ!!」 とゾロは背中越しに言い放ち、ベランダに飛び上がった。 気だるい身体を何とか動かして、目覚ましを止める。 自然と目が覚めないのは、ゾロが居るときだけだ。 ある意味幸せな音色かもなと、サンジは顔を綻ばせた。 「しっかし、んとよく起きねぇよなぁ。・・・・・・・・・・・・おい、ゾロ。」 勿論、ちょっと揺すった位じゃ、起きないことは百も承知。 こうして起こせるのも楽しいのだ。 「起きろよ、ゾロ。」 そう言ってチュッとキスしてやると、頭にガシッと手が回って、口内に舌が差し込まれた。 「・・・・・・ん、・・・・・・んん・・・・・・・・・ふっ。」 何とか唇を離して、 「・・・・・・ったく、朝っぱらからサカんなよ、クソエロ剣士。」 そう言ってやると、 「あと、どんくらいならOKだ?」 なんぞとぬかしてくる。 「まだ、足んねぇのかよ?」 「あぁ、てめぇが足りねぇな。」 即答で返って来た言葉に満足して、ゾロの腹に跨ってやった。 「30分。それ以上は無理だ。」 「ちっ、しゃーねーな。んじゃ、濃厚なの、な?」 |
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ゾロが腕を伸ばし、サンジの頬を撫でる。 その手をサンジの腰までずらして腰骨の辺りを優しく撫でると、サンジは身体を屈めてゾロの胸の傷をゾロの顔を見ながら舐めあげ る。 そして、互いに視線を合わせてニッと笑う。 あとは、快楽への一直線。 唇を合わせて、舌を絡ませている間に胸の突起を摘まれ、甘い声が漏れる。 空いている手の指で後孔を弄られると、昨晩の情事が頭を過ぎり腰が揺れる。 前は刺激を欲して、ゾロのそれに擦り付けてやると、 「――――っ!てめぇっ!!」 と身体の位置を引っ繰り返された。 へへっと笑ってやろうとしたが、後に廻されていた指をグッと突っ込まれて喘ぎ声に取って代わる。 逆にゾロが口角を上げたのにムカついて、 「は、やく・・・・・・・・・ん、挿れっ、・・・・・・ろ、ゾロ!」 と煽ってやった。 その言葉に、 「後悔すんなよ。」 と欲情を表に出して、ほどこしもそこそこにゾロの熱塊が突っ込まれた。 昨日の今日だけあってそれ程キツくはないが、それでもゾロのデカさは半端じゃない。 でも、少し痛い位がサンジには嬉しい。 ――――だって、滅茶苦茶欲しがられてるみたいじゃん。 深いところにゾロを感じて、もっともっとと強請る。 「クソッ、時間足りねぇ!今晩覚えてろよっ!!」 そう言うや否や、がむしゃらに抜き差しするゾロにしがみ付いて、サンジは声をあげてヨガッた。 「あ、あ、も・・・・・・もう、イッ・・・・・」 「いいぜっ、イけ!」 「あ、んあああぁっ!!!」 サンジが白濁を吐き出すのと同時にゾロの熱を中に感じて、サンジは身体をゾロの上に投げ出した。 「・・・・・・・・・も、満足か・・・・・・よ?」 未だに抜かないゾロにサンジが息を弾ませながら茶化してやると、ゾロはへっと笑って、 「このままベロチューしてくれたら、夜まで待ってやる。」 と言いやがった。 ま、でもサンジ自身物足りないのは確かで。 「しゃーねぇなぁ。」と口では呆れながらも、ゾロに唇を寄せた。 その時、 ガチャッ!! ドアが開いて、信じられない顔が視界に入った。 「下で従業員達が準備始めてるぞ。何やってる、チビナス!」 ――――へっ?!! てか、・・・・・・・・・・・・クソジジィ???!! 「・・・・・・・・・・な、なななな、・・・・・・なんで?」 「そこの剣士を拾って、夕べ着いた。もうとっくに朝だ。てめぇが地図寄越したから来たんだろうが。しばらく厄介になるぞ。」 「・・・・・・・・・・・・。」 「お楽しみの最中、悪かったな。サッサと降りて来て仕事しくさらせ、クソガキ。」 ゼフはそう言うと、バンと扉を閉めた。 余りにも衝撃的な出来事に反応できなかったサンジが自己を取り戻した途端、ゾロに足技フルコースをお見舞したことは言うまでも 無い。 「なんでそういう肝心な事を先に言わねぇんだよっ!!」 サンジは慌しく着替えながら怒鳴った。 クソジジィと来たなんて、ひとっことも聞いてない。 「ふあああ、あん?そんなん決まってんじゃねぇか。」 欠伸をしながら返事をするゾロに、 「あぁ?どういうことだよ?」 と下から睨み付けるようにしてやったら、 「んなこと言ったら、てめぇオレほったらかしにするだろが。」 そう言って、フンと横を向く。 サンジはポカーンと開いた口が塞がらなかった。 いつの間に、こいつぁこんな甘ったれになったのか? 元から?・・・・・・・・・そりゃ、絶対ねぇ。 1人で万事全くOKのイーストブルーの魔獣とまで呼ばれた男だったのだ。 ん? てことは・・・・・・・・・・・・オレのせいかよ! 「へへっ。」 思わずにやけてしまったサンジを見て、ゾロはバツが悪そうに頭をポリポリ掻いた。 「ほれ、行くんだろ!ジイさん待ってるぜ。」 「ま、そう拗ねんなよ。夜は空くだろ。」 ニッコリ笑って言ってやったら、仕方ねぇよなと肩を竦めた。 階下に降りて厨房に入ると、従業員達が申し訳無さそうにペコッと頭を下げた。 サンジとゾロも、遅くなって悪かったと謝る。 ゼフはというと、厨房近くのテーブルにパティとカルネを従えて座っていた。 「チビナス。」 徐に、ゼフがサンジを呼んだ。 サンジはムッとしてゼフを睨んだ。 「オレはチビナスじゃねぇ。いくつになったと思ってんだ、クソジジィ。」 「歳なんざ関係ねぇ。まだ半人前の癖に偉そうな口たたくな。」 即座に返って来た台詞に、カッと血が昇った。 いつまで子供扱いすりゃあ気が済む? サンジが口を開く前に、ゼフが言い放った。 「3日後、てめぇが俺を満足させるもん作ったら、オーナーシェフとして認めてやる!」 |
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