いつも涼しい顔してるけど、めちゃくちゃ頑張ってるって知ってる。
そんなアンタを見て来たから、無理させたくないって思う。
けど、やっぱりそれは建前で、ホントはいつも思ってる。
顔が見たい。声が聞きたい。髪に触れたい。肌を感じたい。
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Please 2
-273.15 ExtraSide Junpei-02 |
「さーん?そろそろ起きないと、」
「新名に襲われちゃうよー?」
人の台詞使って勝手に適当な事言ったのは、年上だけど今は同学年の琉夏さんだ。この人が一流を受けるって聞いた時は、さんが医者になるって聞いた時より驚いた。しかも、勉強教えて?ってさんに頼んじゃってさ。一時はライバル心剥き出しで図書館デートとかしてたし、大学入ってからも色々あった。
けど、オレ達が付き合う事になった時に釘刺されて以来、普通の友達付き合いが続いてる。
「こんなトコで襲うワケないでしょ。ってか、久し振りっすね。琉夏さん」
「そう?まあ外だしな。久し振り。俺さ、に用があるんだけど、」
起こして良い?って、オレの後ろからさんを覗き込んでるのを丸ごと遮る。勿論、オレが起こしますから!って言うのも忘れずに。さっきよりハッキリ名前を呼ぶと小さな声が零れて、ゆっくり瞼が持ち上がってく。眠り姫のお目覚めにはキスが付き物だけど――流石に今は無理だから、目ぇ覚めた?って聞くだけ。
「…………ん、おはよ。何時?」
「おはよう、。もう4時だよ」
「ちょ!さんはオレに聞いてんだから邪魔しないでよ」
「え、――ルカ!どうしたの?珍しい」
オレの発言は軽くスルーされて、いつの間にか横にしゃがみ込んでた琉夏さんが彼女に笑いかける。すげぇ気持ち良さそうに眠ってた、お前。起こしちゃってゴメンね?とか言って。
「気にしないで。適当に起こしてってニーナにも頼んでたもの」
「そっか、あ。バーベキューさ、23日の昼と25日の夜、どっちが良い?」
「23日の昼ならOKよ」
「判った。コウにも伝えとく。またね、。あ、ついでに新名も」
目の前でされてた会話が信じらんなかった。23日も25日もバイトがあるからって諦めてたのに、琉夏さんや琥一さんとバーベキュー?しかも前々から予定してたっぽい遣り取り。
さっさと行っちゃった琉夏さんも、目の前に居るアンタも、何の違和感も無いままそれが当然だって感じで話してた。さんと付き合ってるのはオレなのに、オレには何の事だか全然判らない遣り取り。
「二時間以上も寝てたのね。足痺れてない?」
「――――さん。オレ、……」
誕生日くらい会いたいけど、無理はさせらんないって思ってた。だけど前後の日曜なら、どっちか都合付けてくれるんじゃないかって思ってた。それが駄目だって判っても、今日一緒に過ごせるならって思ってた。
「どうしたの?」
「…………ごめん、帰る」
「えっ?あ、ニーナ?!」
「アンタは家帰って勉強しなよ。――模試あるんでしょ」
馬鹿みたいだ。我慢して我慢して、物分かりの良い大人の男の振りして、結局これだもんな。オレ以外の男と会うななんて言わないけど、流石にキツイ。これ以上口を開いたら、きっとアンタを傷付ける言葉しか出て来ない。これ以上一緒に居たら、アンタを泣かせるような事しか出来なくなる。だから――、走った。
いつもだったら簡単に逃げらんなかったと思うけど、疲れが溜まってた上に寝起きの彼女は追いかけても来なかったみたいだ。その方が良いって頭ん中じゃ思ってんのに、何で追いかけて来てくれないんだよって心が喚く。年や身体は大人になってんのに、考え方や気持ちやが子供のまま置き去りにされてんのかな?オレ。
自己嫌悪塗れの大きな溜息が、ポケットから聞こえて来た着信音で止まる。見なくたって判る。この着メロは、さんからの着信にしか設定してないんだから。手の中で震える携帯を眺めてたオレは、何も考えてなかったのかもしれない。
彼女を傷付けたくないし、泣かせたくもない。だけどもう我慢すんのも限界で、駄々っ子みたいな我が儘が溢れそうなんだ。夜遅くのメールもシカトして、ベッドに突っ伏したまま溜息を零してたら徹平の声がした。ノックぐらいしろって言うのも面倒で顔を上げる気にもならないけど、遠慮なんて単語はこいつの辞書には載ってないんだろうな。
「兄ちゃん飯は?早くしないと片付かないって、母ちゃん怒って――」
「要らない。そんだけ?ならさっさと出てけよ」
「何だよ、機嫌悪いなぁ。彼女と喧嘩でも――うわ!」
投げ付けた枕は扉に当たってから床に落ちた。完璧な八つ当たりだけど、こんな事で気が晴れるわけじゃない。オレより大人で余裕な彼女に、子供っぽくてカッコ悪いトコなんて見せたくなかった。昔よりずっと強く、そう思ってる。なのにこんなんで――、オレどうすれば良いのさ。
どんだけ考えても堂々巡りにしかならなくて、どうしたら良いのかなんて全然判んない。次の日になっても、その次の日になっても。一週間経ってもそれは変わんなかったけど、いつの間にかさん専用の着信音は鳴らなくなってた。
◇◆◇◆◇
いつもみたいに講義を受けて、ゼミの仲間とワイワイやって、何個かプレゼント渡されて、どうせ何の予定も無いんだからと思って飲み会の誘いもオーケーした。
「んじゃ、9時に各自現地集合って事で」
家に帰って、軽く夕飯を食べる。誕生日なのに家に居んの?って徹平の茶化しにイラついて夜出るんだよって返したけど、自分で言った言葉に軽く自己嫌悪。オレが望んでるのはこんな予定じゃないし、徹平の言ってる意味も解ってるから。
「なんだ、じゃあ彼女と仲直りしたのか。良かったじゃん」
仲直りどころか喧嘩すらしてねーんだけど?なんて言えねーし、時間潰しにシャワーでも浴びてサッパリしようと思い付いて風呂場に向かおうとした所を、また徹平に茶化された。今は母ちゃんが居ないだけマシかもしんない、って諦めにも似た気持ちで溜息を吐く。
「なあ兄ちゃん、泊りなら言っとくけど?」
「良いよ。泊りじゃないから」
出がけにまで茶化されて、黒っぽい雲に覆われた空と同じくらい憂鬱な気分で家を出る。今頃バイトしてんだよな、さん。携帯で時間を確認したら、9時20分前だった。
集合時間に何分か遅れて着いたのは、フランチャイズの居酒屋。駅からも大学からもそれなりに近くて、ゼミやサークルの打ち上げでもよく使うトコだ。店でもそれをよく解ってて宴会メニューは豊富だし、二階には大勢で使える座敷が四つある。
まあ今日は突発だし下の座敷席だろうって思ってたんだけど、店に入って幹事の名前を言ったら二階に通された。襖を開ける前に並んでる靴の数が尋常じゃないって気付いたけど、どうせ話が飛び火したんだろうって気にせず中に入ったら――規模のデカい合コンか、逆に規模の小さいお見合いパーティー?って感じなんだけど。
「何この人数、多過ぎじゃねー?」
「誕生日にお前が来るならとか言って増えたんだよ、主に女が」
呆れた感じで言われても、オレの所為じゃないっしょ。幹事には気の毒だけど、オレそんな気全然無いし。キャーキャー騒がれても嬉しくない。空気は読むけど、リップサービスする気になんて到底なれない。
独りで家に篭ってるよりはマシって程度だけど、飲んで食べて笑う。彼女以外が相手なら、彼女が関わってない人間が相手なら、何人居たってこんな普通にしてられるのに。
そろそろ時間が、って誰か言った時には、散々飲んでいい加減酔いも回ってた。幹事が会費集め終わってお開きになった時には、25時が半分以上過ぎてた。バイトは9時までだし、もう寝てるよな。
一緒に居て祝って欲しい人には一緒に居ても祝ってももらえなかった、今まででサイテーの誕生日。せめて声だけでも聞きたいと思ったけど、この間の事を考えたら気持ちが凶暴なくらいにざわついて……、結局電話も出来なかった。
「あれ?……雨降ってんじゃん」
「新名君、傘持って来てないの?」
「あ、私の傘大き目だし、良かったら一緒にどう?」
最後の最後まで残ってたのは、今ここに居る五人だけだった。土砂降りって程じゃないけど、それなりに降ってる。幾ら駅が近くても、傘無しじゃかなり濡れるだろうなー。風邪引いたら面倒だし、誰かに入れてもらおっかなー?なんて、酔った頭で暢気に考えてた。
「何だよニーナ、お持ち帰りかー?」
「モテモテで羨ましいねえ。んな事バレたら彼女に振られるぞ?」
「っはは、なーに言ってんだか」
彼女に振られる。そんな言葉を真に受けたワケじゃないけど、やっぱ濡れて風邪引いても良いやと思った。駅かコンビニで傘買うから。そう言って踏み出したトコで腕に抱き付かれてた。アルコールの所為で赤くなった頬と、潤んだ目で見上げる女の子に。
「風邪引いたら大変だし、駅まで一緒に行こうよ。ね?」
「――やっぱオマエか、新名」
「え?琉夏さ――っ?!」
「オマエさ、何やってんの?」
人の事いきなり殴り飛ばしといて、何やってんの?は無いでしょ。女の子達は悲鳴上げて恐がってるし、男どもは慌てて人呼ぼうとしてる。顔は痛いし全身びしょ濡れで服が張り付いて気持ち悪いし、正直ワケ判んないんですケド?
殴られた衝撃と痛みが酔いの回った身体に響くし、口の中に広がる血の味が抑えてた感情を引き摺り出しそうになる。この人に八つ当たりしたってどうしようもないって解ってるのに、形振り構わず当り散らしそうだ。
「何って、それはオレの方が……、聞きたいんですけどー?」
「俺、言ったよな?あいつの事、不幸にだけはすんなって」
「単なる飲み会でそこまで言う?さっきまで30人くらい居たし、」
「が倒れるまで放っといて飲み会?――ざけんな!!」
胸倉掴まれて、いつもより低い声で凄まれる。けど、オレはそれどころじゃなかった。さんが倒れた?どうして――。放っといてって、オレが?何で琉夏さん彼女が倒れたって知ってんの?聞きたい事が色々あんのに、アルコールとショックでパニくってた。
「、が?やだよ。どこに居んの?。教えてよ琉夏さんっ!!」
「――――入院した。今はコウが付いてる」
冷たい雨に濡れて身体の表面はどんどん冷えてくのに、中は熱いくらいだった。考えが纏まんないのは、きっと抜け切らないアルコールの所為だ。でも現実は、容赦無く突き刺さる。
持ち主とは違う運転手に掴まって病院に着くまでの数分。冷たい雨と空気に晒されたお蔭で酔いは醒めたけど、酷く混乱した気分は全然治まってくれなかった。
◇◆◇◆◇
「じゃ俺、母さん連れてんち行って来る」
「おう。気ぃ付けて行けよ」
真夜中の病室で小さな声が交わされて、扉の向こうに足音が遠ざかってく。マスクを被せられた青白いくらいの顔が痛々しくて、規則正しい機械音だけが彼女の生きてる証拠みたいだった。
琥一さんに電話がかかって来たのは、12時少し過ぎだったらしい。バイクで出たけど帰れそうにないから、琉夏さんと一緒に迎えに来てもらえないかって。その電話で雨の所為で帰れないんじゃなくてバイクを運転出来ないような状況なんだって気付いた琥一さんは、車を飛ばして琉夏さんを迎えに行った。
さんから聞いた場所に着いた時。降り頻る雨の中、彼女はバイクの横に倒れてたらしい。抱き起したら酷い熱で、話を聞こうとしてもまともに話せる状態じゃなかったって言う。
「こいつが熱に弱いって話、聞いた事あるか?」
「はい……」
「今は薬が効いてるが、運んでる時はかなり熱かった」
何年か前に聞いた。身体は丈夫な方だけど、熱を出すと厄介だから風邪を引きたくないって。けど、彼女が熱を出した事なんて一度も無かった。少なくとも、オレと付き合いだしてからは一度も――。
「俺がとやかく言う事じゃねぇんだろうが……、オマエ何やってんだ?」
「何って……、」
「誕生日だったんだろ?今日――いや、もう昨日か」
何で琥一さんがそんな事知ってるのか。オレの疑問と知らなかった彼女の行動を、仕方ねぇな、とでも言いたげな顔してポツポツ話してくれた。琉夏さんが戻って来るまでのその間、オレも琥一さんも、ずっと彼女の顔を見たままだった。
◇◆◇◆◇
「やっぱり、か」
「え?」
琉夏さんが来て、送ってやるって言葉に甘えて家の前まで。ホントは彼女に付いてたかったけど、せめて着替えてから出直せって言われたから仕方なく。殴られた時に泥だらけになってたし、髪なんか雨でグチャグチャ。流石にこれでずっと病院に居たら、その内看護師さんに追い出されるかも?ってくらい酷い格好だった。
「そこに公園あんだろ」
まだ夜明けまで程遠い暗闇の向こうを指差されて、オレも視線を移す。街灯も無いその辺りには、公園って呼ぶのも憚られるくらいショボい子供向けの公園が確かにある。
「が倒れてたのは、その公園だ」
「嘘……、だろ?」
「んなしょうもねぇ嘘吐いてどうすんだよ」
「だってオレ、何も――」
「だから、さっきも言っただろうが」
確かに聞いた。バーベキューは彼女や琥一さんのお父さん達の仲間が集まって開いたもので、彼女が23日ならって言ったのは、25日がオレの誕生日だからって言ってたって。確かに聞いたけど!この前会った時だって全然そんな素振り見せなかったし、オレの誕生日の事なんて一言も――。
「オマエ、が連絡してもシカトしてたんじゃねぇのか?」
「っ!!」
「忙しくし過ぎて同期の二の舞になるかも、とか言ってたぞ」
慌ててポケットから携帯を出して確かめたら、新着メールの知らせがある。時間は――21:53。判んないけど、多分バイト終わってから一旦家に帰って、着替えて直ぐオレんちに来てくれたんだ。
近くまで来てるの。
少しで良いから会えない?
いつもみたいに本文だけの短いメール。一通だけ彼女専用のフォルダにあった未開封メールを開いても、そんな感じの文面だった。一人でイラついて勝手に帰ったオレの事を責めもしないで、ただ用件を伝えるだけのストレートな言葉。
25日の夜、会えない?
10時くらいになるだろうけど、直接お祝いしたいわ。
彼女の性格そのものって言うか、彼女の素直な気持ちそのものみたいだ。そう思ったら、文字が滲んで読めなくなった。もう雨は止んでるのに、雨粒が落ちて来て画面を濡らす。袖で拭ってもまた直ぐに滲んで、また拭ってを繰り返してた。
「オマエなぁ……、泣くなら人の居ないトコで泣け。俺は帰るぞ」
その声に釣られて顔を上げたら、目の端から零れた涙が顔を伝うのが判った。デカいアメ車のテールランプが遠くなってくのを見送って、中に入る。シンとした静けさと寒さから逃げるみたいにエレベーターに乗り込んで、ボタンを押した。
家に帰ったら先ず風呂に入って、少し寝てから病院に行こう。彼女がまだ起きてなくても良い。彼女の事を見て、彼女に触れてたい。嫉妬心も独占欲も未だに消えないけど、この気持ちを落ち着かせられるのは彼女しか居ないから。
◇◆◇◆◇
目が覚めて、着替えて直ぐ病院へ。病室でオレを待っていたのは目を覚ました彼女じゃなくて、不機嫌さを隠そうともしない琉夏さんだった。
「何オマエ、また来たの?」
「――琉夏さん。気付いてたんでしょ、彼女が倒れてた場所で」
当然だよな。この人、一回だけとはいえオレんち来た事あるし。あんな近くでさんが倒れてて、それがオレの誕生日だって知ってたら……。オレと琉夏さんの立場が逆だったとしたら、絶対ぇ同じ事考えて似たような真似してたって自信ある。
「気付いてたって何に?オマエがを不幸にしてるって事?」
「違う。彼女がここまでオレに惚れてるって事」
「……ああ、そっか。打ち所、悪かった?ここ病院だし、診てもらえば?」
茶化してるような逸らかしてるような感じの口調だけど、顔は全然笑ってない。寧ろ般若顔してるし。まあ、そりゃそうだよな。けどオレだって、ふざけてるワケじゃない。本気でそう思ってる。
「だってさ、そうとしか思えないじゃん」
風邪引かないように気を付けてる彼女が、こんな時期、あんな時間に寒空の下で待ってた。しかも雨の中、二時間以上も。少し先にあるコンビニなら傘も売ってるのに、買いに行きもしないで。
そんな事してたらどうなるかなんて、医者を目指してる本人が一番よく解ってる筈なのに。きっと、居ない間にオレが出て来たら――って思ってたんだ。だからずっと、マンションの入り口が見える場所から離れようとしなかった。ううん、離れられなかったんだと思う。あれからずっと、オレが電話に出なかったから。
琥一さんに電話したのだって――、きっと、もっと早くしようと思えば出来た筈なんだ。だけど昨日は、オレの誕生日だったから。シンデレラみたいに12時まで≠チて決めてたんだ、きっと。
「…………すげぇ自信。ムカつく」
一つ一つ考えてたら、泣きたくなった。彼女が好きだから格好悪いトコなんて見せたくなくて、彼女と釣り合うような大人の男ぶって色々溜め込んでた。結局それは、安物のメッキみたいなものでしかないのに。
彼女がそれに気付いてたかどうかなんて判んないけど、付き合い始めた頃に言われた事があった。無理に変わろうとしないで≠チて。年を重ねて忘れてたんだ、オレ。
ねぇニーナ、無理に変わろうとしないで。
私、嫌だと思えばちゃんと言うわ。
だから、あなたも思った事を言って頂戴。
そん時は単純に喜んで、ちゃんと理解してなかったんだ。今になって思い出したくらいだもんな。けど、今なら解る。無理に変わろうとしてた所為で、思った事を素直に言えなくなってたんだ。
アンタに言いたい事が、たくさんある。格好悪くても、子供っぽくても、ちゃんと言っときたい事が。何かもう、胸の中から溢れそうなくらい。
「数学と同じでしょ。オレだって、式が判れば正しい解しか出せないよ」
「さあ?――解んない。俺、式なんて判んなくても正解しか出せないし」
刺々しい雰囲気が消えたのは、多分、琉夏さんも解ってくれたからだと思う。眠いから帰るって病室から出ようとした背中に声をかけたら、ちゃんと耳を傾けてくれた。
「琉夏さん。彼女が隣に居ればオレ、絶対ぇ間違えないから」
「――あっそ。俺はが不幸じゃないだけで間違えないよ」
じゃあな、って閉められた扉は小さな音を立てた。それを合図に、やっと彼女が寝ている方へ歩き出す。ベッドの横に置かれたお世辞にも座り心地が良いなんて言えない椅子に腰かけて、毛布の下にある手を探して掴んだら、何も反応しないけど温かくて……それだけで安心出来た。

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(壁紙:Kigen/kazuさま)
また長いし…。何でこう、最初に考えとったより長くなるかなぁ。ま、良っかー。次行こ次。
橘朋美
FileNo.ES.J-02 2012/9/12 |