ボディバッグから取り出した携帯電話には、不在着信が一件。留守電は入っていないのだし、急用ではないのだろう。そう思いはしたけれど、あの騒動の後で何かあったんじゃないかと気になった。バイト中ならかけ直そうと思いながら着信履歴からメニューを開いて音声通話を選択すると、呼び出し音が数回聞こえてから電話は繋がった。
「おぅ…、お前か」
「何かあった?」
「何かってお前……、いや。別に何かあったってんじゃねぇけどよ」
「そう。なら良かった」
出かける時に携帯を忘れてついさっき不在着信に気付いた事を謝ると、溜息を吐かれた。だから胸ポケットに入れとけっつーんだ。っていう、いつか聞いたお小言と一緒に。
今度から気を付けると返せば鷹揚な返事の後、沈黙と同時に疑問が生まれた。何も無かったのなら、どうして電話して来たんだろう?元々コウは電話どころかメールすら碌に寄越さなかった。用が無ければ他人とコミュニケーションをとらないという点で私達は似ていたから、今回の件がどうも腑に落ちないのだ。
「ねぇコウ、本当に用は無いの?」
「あー…。まあ、あれだ。悪かったな……、今日」
「今日って――。どうしてコウが謝るの?」
「どうしてって、そりゃお前…、」
コウと知り合いだとバレない方が良い。そう思ったから無関係を装った。だけどそれが誤解を生んでいたらしい。面倒事に巻き込まれて怒って帰ったんじゃないのか?と聞かれて、つい笑ってしまう。面倒事に巻き込まれたのは、寧ろコウの方だというのに。事情を説明したら、たった一言。そうか、って小さな声がした。
「にしても珍しいな、お前がスタリオンに来るなんてよ」
「そうでもないわよ?」
私が使うのはスタンドくらいだけど、ルカやコウ、cutie3のバイト先は聞いている。特定のスタンドを使っているワケじゃないから頻繁ではないけれど、スタリオンに行く事自体は珍しい事じゃない。偶々コウのバイト中に行った事が無かっただけ。実際、信号待ちの途中でコウが働いているのを見た事が何度かあった。
へぇ、と気の無い返事の後で、あの後行ったボウリング場の事を思い出した。明璃達は経験が無いからと言っていたけれど、ルカやコウはどうだろう?もし出来るなら、一緒に行ってみたい。そう思って聞いてみる。
「ダーツだぁ?誰に聞いてんだコラ」
「ふふっ。じゃあ、一緒にどう?」
「一緒にって…、お前ダーツ出来んのか?」
「誰に聞いてるのかしら?ふふふ」
子供の頃、アルフ達を相手にしても引けを取らなかった唯一の遊び。もう随分やってないけど、ダーツは得意だった。コウの言葉に倣って挑発するように笑えば、一瞬の沈黙の後。
「クッ、上等だ。じゃあ日曜で良いな」
「OK。待ち合わせは?」
トントン拍子に話が進んで、じゃあまたね、と通話終了ボタンを押して、胸ポケットに携帯を入れる。こんな風に外へ遊びに行くなんて、これまで無かった事だ。父とは専らサーキットだったし、母やその仲間達とは家の近所ばかりだった。何だか新しい遊びを見付けた小さな子供みたいな気分で階段を下りて行くと、鼻腔を擽る香りとキッチンで腕を揮っていた父が迎えてくれる。凍えるような寒い季節の、温かな一日だった。
◇◆◇◆◇
休暇の最後は父とはばたき山へ。どこか行くか?と聞かれて、雪を見たいと言った結果だ。雪が降るのも積もるのも見た事はあるけれど、一面銀世界という景色を見てみたかったから。
タイヤを変えたり空気圧を調整したりしながら昨日の事を話すと、父はいつものように笑ってくれた。明日はコウとダーツに行くのだと言えば、あんまり羽目を外すんじゃないぞ?と苦笑いする。
初めて走る雪道に驚きながら時間をかけて辿り着いたそこはスキー場の近くで、全てが雪に覆われている景色に圧倒された。あちこちに見えるカラフルな人影を目で追っていると、父は昔スキーをした事があると言う。
「お前もやってみるか?」
「うーん……機会があったらね」
ウィンタースポーツなんて一度もした事が無いどころか、知識や道具すら無い。結構面白いもんだぞ?と父は言うけれど、余程慣れた人と一緒でなければ無理だろう事は判る。それに――スキーをする以前に、ここまでバイクで来られるようにならなければ……。
「まあ、今日は無理だな。帰るまでに夜が明けちゃ堪らん」
「もうっ、父さん言い過ぎ!」
不意に落ち込んだ気分を振り払って、来た道を反対に辿る。行きよりは短縮された時間に満足して、またガレージで作業。家に入った時には、もう薄暗くなっていた。
明璃達とのボウリング、コウとのダーツ、父とのツーリング、オンラインでのチェス。家事や勉強以外の時間を色々な事に費やした冬休みは、次の週末に終わりを迎えた。
◇◆◇◆◇
正月ボケっていうのは、時差ボケのようなものなんだろうか?早起きが辛いとか、学校に来るのが怠いとか。新学期の教室で交わされる会話は、そんな考えを浮かばせる。
「よお、って…、、それ――」
「おはよう、トーマ。何?」
「あっ。おはよう、さん!」
席に着く前に呼び止められて立ち止まった所へ明璃が足早にやってくると、少し遅れて駿斗も。そんな光景を見て、この二人は上手く行くんじゃないだろうか?と思う。席が近い所為もあってかよく話してる所も見るし、私が明璃と話している時は駿斗も居る時が多い。それはトーマにも言える事だけれど、明璃の後で駿斗が来るパターンが多いような気がする。
「おはよう、さん。どうかしたの?」
「私が、というよりトーマが、かしら?」
「おお、そうだ。それそれ、そのマフラー!」
明璃と駿斗は首を傾げていたけれど、もしかして?と思いながら口を開いた。クリスマスパーティーのプレゼント交換で貰ったのだと言えば、やっぱそうか!とハイテンションになる。思った通り、このマフラーはトーマの出したプレゼントだったらしい。
それを皮切りにお互いどんなプレゼントを貰ったのかという話になって、驚いたのは駿斗の貰ったプレゼントだ。映画のペアチケット。どんなラッピングだったか聞けば、私の出したプレゼントだった。
「凄ーい!こんな偶然、あるんだね〜」
「そうだね。あれだけの人数が参加してたのに、こんな事があるんだ」
「へえ、それ今話題のヤツだろ?良かったじゃねえか、篠崎」
シリーズもののファンタジーだけれど、抜群のCG技術と老若男女問わずに楽しめるストーリー性で好評を博している映画。父も私も好きで、DVDで何度も見ていたからそれを選んだ。けれど駿斗は浮かない表情で。嫌いだった?と聞くと、慌てて否定する。
「ほら、ペアだから。誰か誘ってって思うんだけど、中々ね」
「ああ、そういう事か。けど、お前なら選り取り見取りだろ?」
「そういう意味じゃ…あ。さん、良かったら日曜に見に行かない?」
日曜は出かけるからと言って駿斗の誘いを断ったのは、嘘じゃない。少しでも雪道に慣れておきたいし、はばたき山まで行くつもりでいたのだ。勿論一人で行くのだから予定を変える事は出来たけど、表面上は何ら変わりない明璃の事が気になった。
自分の好きな男子が自分以外の女子と二人で出かけるとしたら?それを知ってしまったら、きっと辛いだろうと思う。それぐらい、私でも判る。
「明璃やトーマは?」
「冗談キツイぜ。男二人で見る映画じゃないって」
「まあ、それは確かに。僕も遠慮しておきたいかな」
「…、ええと。次の日曜なら、私行けるけど」
二人だと緊張してしまうと言っていた明璃は、今も少し緊張しているのかもしれない。いつもより滑舌が悪いのは、多分その所為なんだ。じゃあ、と言った駿斗と当日の事を打ち合わせている時もそうだった。
それでも明璃はとても嬉しそうで、それを少し羨ましいと思う。恋愛は、しようと思ったところで出来るものじゃない。気になる相手が居なければ、それは不可能なのだから。少なくとも、今の私には無縁のものだ。
「。あいつの事、気付いてるのか?」
「えっ?あぁ…、トーマは?」
「あいつ等どっちも判り易いからな。まあ、何となく?」
チャイムと共に席へ向かうと、何だか意外な事を聞かれた。詳しく話すわけには行かないと答えを濁したんだけど、どうやらトーマは気付いていたらしい。あいつ等って事は、駿斗も明璃もという事だろう。判り易い、と言われてしまうと苦笑いを浮かべるしかなかったけれど。
「上手く行くと良いわね」
「――お前判って…、いや。こういう事に疎いんだな、知らなかった」
疎いと言われて反論出来る筈もなくて、そのまま席に着く。新学期初めの授業は課題範囲からの小テストで、教室内は溜息やブーイングの後、独特の静けさに包まれた。
◇◆◇◆◇
三学期は特に大きな学校行事は無い。だから淡々とした毎日が続くだろうって考えていたんだけど、大半の人達にとってはそうでもないらしい。新学期が始まって二週間。明璃と携帯ナンバーを交換してから十日ほど経った今、周囲は密かにバレンタインの話題で盛り上がっていた。
そう。密かに≠ネのに盛り上がっている≠フだ。男子も女子も、何だかいつもより過敏になっているような感じ。特に男子は耳が。
女子はどこの店のどんな品が良いとか、予算がどうとか。義理チョコに友チョコ、果てはマイチョコとか。まるで付け届けか季節の贈り物みたいな扱いの物に関しては、教室内なら拡声器もかくやという声で話している。だけど――。
「……から。ね?お願い」
「ええ。それなら構わないわ」
「良かった〜。ありがとう!」
こと本命チョコの話になると、それは小さな声で交わされる。つい今しがたまでの私達のように。明璃にお菓子作りは得意かと聞かれた時。簡単な物なら作れると答えた後、一緒にチョコを作ってくれないかと頼まれた。
バレンタインなんてまだ随分先の事なのに?と驚いたのだけど、作るのは来月の11日。レシピを探したり材料やラッピング類を買いに行ったりする時間を考えて、尚且つ私の予定も考え早目に打診したのだと言う。
「だけど、私で良いの?本当に簡単な物しか作れないのよ?」
お菓子なんて子供の頃に母と作って以来だ。それも簡単なクッキーやパウンドケーキ程度。バレンタインの思い出なんてロディに花束を貰った事くらいで、チョコに関する思い出なんて微塵も無い。自分で言うのも何だけど、つまり私はバレンタイン経験値ゼロ。
「大丈夫!私じゃ簡単な物でも作れないから」
それは大丈夫とは言えない状況なんじゃないだろうか?と思える言葉と明璃の前向きな笑顔に負けて、それから何日もかけて色々な話をした。
凝った物に挑戦して失敗するよりは簡単な物を成功させようとか、作るのはどちらの家にするかとか。材料や予算、時間に工程。ラッピングをどうしようかと最後まで悩んでいたけれど、やっぱり簡単でも確実な線を!と決めたのは10日の下校時だった。
「〜!」
「先約有り?」
「邪魔しちゃった?ごめんね。あ、テニス部の……長久さん、だよね?」
cutie3の面子とこうして顔を合わせるのは、昼休み以外では久し振りだ。彼女達にも数日前チョコ作りに誘われたけど、明璃と作る約束をしたからと断っていた。代わりと言っては何だけど、お互い作ったチョコを交換しようと約束して。
今日は明璃とラッピング類を買いに行くから一緒に帰るのは無理だと思ったんだけれど、それを話したら全員でシモンへ行く事になった。カレンやミヨが居るなら心強いと言って明璃も快くOKしてくれて、改めて二人の認知度を知る。
「聞いてよー。バンビったら張り切っちゃって!」
どうやらがチョコを渡すのは嵐だけらしい。義理チョコまで考えると相当な数になるから、お小遣いが大変で。と慌てて言い訳染みた事を言っている。確かに交友関係の広いなら、義理チョコだけでも相当の予算が必要になるだろう。
「だけど嵐くんは入学して直ぐ仲良くなったしクラスも部活も一緒だし、」
「でも、不二山君と古浪さんって付き合ってるんでしょ?」
「つ、っつき合ってるとかじゃ!!」
突っつき合ってどうすんの!とカレンが突っ込み、そう思われても当然、とミヨが止めを刺す。それに倣ったわけじゃないけれど、慌て過ぎよ?と私も笑った。これだけ反応が大きければ、私にだって見当が付く。
「で、でも!ほら、長久さんだってチョコ作るんでしょ?」
「えっ?!う、うん。作るけど、私まだ……」
強引に話を変えようとしたのが丸判りなのに、明璃はまんまと嵌ってしまった。元々友達の多い二人が仲良くなるのには大して時間はかからず、お互い思う相手が居る事も手伝ってか話が弾んでいる。
メインはあの二人なのにね〜?と言いながらもお勧めの品を次々持って来るカレンと、商品には大して興味なさそうだけれど二人の話に耳を傾けているミヨ。賑やかな彼女達と過ごすのは楽しくて、帰るのが惜しくなってしまうような日だった。
◇◆◇◆◇
昼頃に待ち合わせて材料を買って家へ。父が居たから明璃は少し緊張していたみたいだけれど、チョコ作り作りは上手く行った。作ったのは、典型的なアメリカのマザーズスタイル。母直伝のチョコチップクッキーだ。
駿斗に渡す分だけはハート形にすると言って、明璃は数枚のクッキーを成形していた。それ以外の所謂義理チョコは、少し小さめの円形に。部活仲間などに配る分を考えると同様、という事らしい。
簡単な物だから、と二種類作ったそれを小さな袋に詰めてラッピング。ホワイトチョコとブラックチョコでコーティングされたクッキーは少し歪な円形だけど、それが味でもある。
迷うと大変だからと明璃を学校前の坂道まで送って、夕焼け色に染まり始めた空を背に手を振る。風は無くても空気は冷たくて、それでも気持ちは温かい。そんな感じの帰り道は、一人でも楽しかった。
「どう?父さん。美味しいでしょ?」
「うん…、美味い。でもまだローズの腕には劣るな」
「もう!一言余計!」
帰宅後コーヒーと一緒に父へ渡したクッキーは、ブラウンシュガーと濃厚なチョコレートの醸し出す懐かしさ以外のものを思い出させてくれたみたいだった。
◇◆◇◆◇
そして土曜日。バレンタイン当日は日曜という事で、前日にチョコを渡そうとする女子が多いだろうと聞いてはいた。聞いてはいたけれど、流石にここまでとは――。全く思ってもいなかった事態に直面したのは、校門を入るか入らないかという所でだった。
「あれー?久し振りだね、ちゃん」
何人もの女子に囲まれていた男子が私の事を呼んだのだと気付いたのは、彼がこちらに歩いて来ながら声をかけたからだ。そうでなければ、同じ名前の違う人を呼んだのだと思って通り過ぎていた。つまり――。
「どうかした?オレの顔、何か付いてる?」
誰だろうこの人、考えてみても誰だか判らない。だから顔を見ていた。それとも見惚れちゃった?なんて笑っているこの人に、何故あんな呼ばれ方をしなければならないんだろう?ハッキリ言って不愉快だ。
彼を追って来た女子達の言葉からすると、真栄城俊輔という名前らしい。どこかで聞いた事があるようなその名前と彼の容姿を合わせてみても、やっぱり誰だか思い出せないでいた。
「あなた誰?馴れ馴れしい呼び方はやめて頂戴」
思った事をそのまま口にすると、彼は引き攣ったような笑みを浮かべた。それはどうでも良かったのだけれど、周囲の女子が五月蝿いくらいに文句を言う。他の生徒達はギャラリー宜しく見物してるし、朝っぱらからツイてない。
「何よアンタ、一年生のクセに生意気!」
「真栄城クン、こんな子放っといて行こうよ」
口々に言いたい事を言う彼女達に囲まれている彼は、どこか得意気な笑みを浮かべてこちらを見た。こんな相手、関わるのも馬鹿らしい。無視を決め込んで校舎へ向かおうとしたら、朝練を終えたらしい明璃が駆け寄って来た。
「おはよー明璃ちゃん。ねえ、そのコと仲良いの?」
「え?あ、はい。おはようございます、真栄城先輩」
少し離れた位置から様子を見ていると、どうやら明璃は彼と知り合いらしい。二言三言話した後、ピョコンと頭を下げてからこちらへ来た。ニコニコと手を振っていた彼を睨み付けてから教室へ向かう途中、明璃は彼の事を教えてくれた。もしかして、真栄城先輩にチョコ渡そうとしてたの邪魔しちゃった?という、盛大な勘違い発言と共に。
物怖じしない社交的な性格で、女子に人気のある三年生。さっきの様子からすれば随分と良い評価だけれど、要はチャラチャラした軟派男という事らしい。以前は野球部の部長を務めていたけれど、マネージャーに手を出した挙句にトラブルを起こして辞められてしまうという事態が何度かあったとか。
「野球部の部長……で、マネージャー?ああ」
「どうしたの?真栄城先輩と何かあったとか……」
漸く思い出した。入学式の打ち合わせの時に居た、失礼な男だ。簡単に説明すると、明璃はなるほどねといった感じで頷いた。女子には本当に人気がある人だから、気に入った子には直ぐ声かけるんだよ。けど付き合っても直ぐ別れちゃうんだって、と言って。
教室に着いてからも、普段とは違う様子が辺り一面に漂っていた。義理チョコや友チョコがあちこちで飛び交う。男子は数を競っていたり、冷やかしたり冷やかされたり。女子はチョー可愛いとか激ウマーとか、とにかく全体が騒がしい。
「明璃はいつ渡すつもりなの?」
「えっ…。えーと、どうしよう…」
部活に行く前に渡さなければ、渡す機会を失ってしまう。彼女はそう言った。それなら早い内が良いんじゃないかと言えば、でも緊張するー!と両目をギュッと閉じる。その様子を見て、これは時間が経てば経つほど渡し辛くなるんじゃないだろうか?と心配していた所に助け舟が。
「おはよう、二人ともどうしたの?」
鞄を持ったまま私の席で話しているのを不思議そうに尋ねる駿斗を見て、これはチャンスだと思った。状況さえ整ってしまえば、明璃も渡さざるを得ないだろうって。
「おはよう、駿斗。明璃とクッキーを焼いたんだけど、食べる?」
「え、良いの?」
明璃は驚いているけど、駿斗は嬉しそうだ。私は鞄の中身を机に移しながら、可愛らしくラッピングされたそれが受け渡されるのを見ていた。
「お前さあ…、あれチョコなんじゃないのか?」
「おはよう、トーマ。あなたの分もあるわよ」
シンプルな半透明の小袋をビニールタイで止めただけのそれを差し出す。あ?おお、サンキュ。そう言って受け取ったトーマは少し驚いていたみたいだけど、三倍返しは期待するなよ?と言って直ぐに自分の席へ。
聞くともなしに聞いていた二人の会話は、ちゃんとバレンタインのチョコだという事を伝えられたらしい。駿斗は私にまでお礼を言って席に戻り、明璃は拗ねたように言ってから背中を向けた。
「さんの意地悪!すっごく緊張したんだからね?」
少し赤い顔で、口を尖らせて、それでも嬉しそうに頬を綻ばせて。私は彼女の背中に微笑んで、昼休みにはルカとコウに一つずつ包みを渡して、放課後にはcutie3の三人にも。そんな風にして、初めてのバレンタインは過ぎて行った。

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はいはい、サクッと三学期は進めますよー。早よニーナ出したいし。
本編に結構あちこちExtraSideのネタがありますが、中々書く時間が無くて困ってるのが現状だったり。あー、寝なくても平気な身体が欲しい。
橘朋美
FileNo.114 2012/9/20 |