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会場に流れる音楽が変わってからずっと、私達は窓際のソファに居た。ルカが借りて来たトランプでババ抜きをしながら、偶に飲み物を取りに行ったりする以外には動かないまま。ああだこうだと言い合いながら、再びクリスマスソングが流れ始めるまで。

「おーい!そこの……って。何だ、君達だったのか」

「何だとは何だ。不躾な奴だな」

「何だ、カイチョーか。邪魔しないでくれる?」

「何だ?用があんならさっさと言え」

ピリピリした雰囲気の三人に理不尽な言葉を投げかけられた会長は、諦め気味の溜息と共にプレゼントを受け取って来るようにと告げた。既に殆どの参加者が受け取っているけれど、他の参加者全員が受け取ったのを確認しないと準備に駆け回っている生徒会の彼等達に順番が回って来ないのだそうだ。

「くそ、また駄目か。。お前、俺の分も受け取って来い」

「うーん……これだ!げ、騙された。あ、。俺のも頼んだ」

「ククッ、甘ぇんだよ。よっしゃ、次だ次。あー悪ぃ。、俺の分もな」

あと少しで上がり。という白熱した状況で、三人が三人ともカードから目が離せないらしい。一足先に抜けていた私だけが暢気にそれを眺めていて、横に並ぶようにして近付いて来た会長が、遠慮がちに尋ねる。

「随分盛り上がっているみたいだけど、賭け事はしてないよね?」

「?ええ、勿論。懸けているのはプライドくらいだと思うわ」

「はは。上手い事言うなあ、君は。っと、そうだった」

悪いけど、みんなの分もプレゼントを受け取りに来てくれる?と聞かれて少し悩んだ。けれど、勝負が着くまではテコでも!という感じの彼等を待っていては予定時刻を大幅に上回ってしまうからと言われ、会長に付いて行く事にした。後でジャンケンでもして、順番に好きな物を選ぶという方法を取れば良いかと考えて。

四人分の名前欄にチェックしながら、会長は他の生徒会役員に指示を出している。恐らく先生の誰か扮しているだろうサンタクロースがメリークリスマス!≠ニ言って、大きな袋から次々と包みを取り出した。一つ一つは手に余るほどじゃないけれど、それなりの大きさの物が集まると両手は塞がり、視界が 狭くなる。

「流石に大変そうだね。手伝うよ」

「忙しいんでしょう?」

「いや、後は他の役員の報告待ちなんだ」

包みに伸ばされた手と、その言葉に甘えてソファまで。正直助かったと思ってお礼を言えば、まるで至極当然の事だとでも言うような返事の後で、嵐と同じ事を聞かれた。

「会長からすれば、おかしい?」

「えっ?あ、いや。そういう意味じゃなくて、何て言うか……その、」

真横を向いて尋ねると、どうしてか慌てふためいている。首を傾げたら顔を逸らされて、そのまま。少しの間を置いて、凄く魅力的だと思うけど、やっぱりちょっと――目の毒かな?と言われたのが不思議だった。

会場にはワンショルダーやホルターネック、マイクロミニやショートパンツ丈のスーツやドレスを着ている女子が何人も居る。胸元や背中が強調されたデザインのドレスを着ている人達も合わせれば、半数を超えるくらいは。露出度の高さなら彼女達の方が圧倒的に勝っているのに、そんなに気になるものなんだろうか?って。

◇◆◇◆◇

ソファまで戻れば既にセージが上がっていたらしく、どこか得意げな笑みを浮かべて二人の勝負を見ていた。ルカ の手には一枚。コウの手には二枚のカードが握られていて、早ければ次の引き札で勝負が着くだろう。

「ああ、良いタイミングで戻って来たな」

「じゃあ、僕は行くよ。熱中するのは良いけれど、程々にね」

「ええ、ありがとう」

ソファの上に置かれた包みには目もくれず、二人はお互いのカードを凝視している。その雰囲気に、見ているこちらまで釣られそうだと思った時。

「これだ!」

「!!」

大きな声を上げながら勢いよく引かれたのは、どうやらジョーカーではなかったらしい。一瞬で変わっ たコウの表情はショックを受けているのが見て取れて、ルカが手札を置く前に判ってしまった。

小さな子供みたいにはしゃぐルカ、嫌味交じりでからかうセージと言い返すコウ。一気に騒がしくなった三人にプレゼントを選んでと告げると、勝った順に選べば良いとルカが言う。

「じゃあ、これを貰うわね」

「じゃ、俺はこれにするか」

「そんじゃ、俺はこっち」

「妙に小さくねぇか?これ」

私が選んだのは柔らかな円筒状の包み。セージは少し大きなクリスマスカラーの箱を手に取り、ルカは一番大きくて少し歪な包みを選んだ。一つだけ小さな角ばった包みは、コウが持っていると更に小さく見える。

思い思いに包みを開ければそれぞれの贈り主が趣向を凝らしたプレゼントが姿を現して、何だかビックリ箱でも開けたような気分を味わえた。薄くて手触りの良いセピア色のマフラーを手に、通学用にしようかと考える私。冬の星空をモチーフにした壁掛け時計を見て、妥当なところだなと呟いたセージ。スノーマンを背負った赤い半纏を羽織って喜ぶルカとは対照的に、げんなりした表情のコウ。

「ガキじゃあるまいし、トランプはねぇだろ」

「ふふっ。でもこれ、本格的なカードみたいよ?」

銀と黒を基調にした、シンプルな百合の紋章がデザインされている。というのもそうだけれど、アメリカ産のプラスチック製トランプ。どこででも売られているような品じゃない。シャッフルした感じも紙製の物に劣らない滑らかさで、プレゼントの限度額ギリギリの物だと言われたとしても納得出来そうな一品だ。

「琥一には宝の持ち腐れかもな」

「あはは。セイちゃん上手い」

「なんだとコラ!」

その呼び方は止めろと言っているだろう!と怒るセージの声に重なったのは、低く響く柱時計の時報だった。途端に慌てたのはルカとコウで、何だかシンデレラみたいだ。私は王子様みたいに引き止める事は出来ないから、二人を見送るしかないのだけれど……。

「本当は送って行きたかったんだけど、ゴメンね?」

「ありがと、ルカ。でも平気よ。距離的には学校と変わらないもの」

「距離的には?……お前、まさか歩いて帰るんじゃねぇだろうな?」

「そうよ?だって歩いて来たんだもの。それよりコウ、時間は良いの?」

一緒に帰るような親しい友達は二人を除けばcutie3の三人しか居ない。だけど、彼女達とは帰る方向が全然違う。繁華街や真っ暗な道を歩くわけじゃないし、通い慣れた20分程度の事。そこまで心配する必要は無いと思うんだけれど、何だか大層な事のように扱われて少し困る。

「うわ、そろそろヤバイ。そうだ、もバス停まで行こう?」

「別に構わないけど、五分程度の事よ?」

「ゼロよりマシだ。走るぞ」

「コートを預けてるの。先に行ってて。さよならセージ、楽しかったわ」

既に走り出していた二人とは違う方向へ私も走り出そうとセージを横切った瞬間、いきなり腕を掴まれて立ち止まる。急いでいると知っているのに何故?と苛立ちを覚えながら顔を向けたら、もう見慣れてしまった不機嫌な表情で睨まれていた。

「待て。お前、その格好で走るつもりか?」

「当たり前でしょう?放して頂戴」

「バカか!そんな格好で走ったら、っ。――ああ、もう!」

振り払おうと思った手は驚くほど強く掴まれていて、正直セージにこれほど力があるなんて思ってもいなかった私は、体育祭の時とは違い痛みすら感じるその手に驚いていた。

「――何だ、言いたい事があるならハッキリ言え」

「そんなに乱暴にされたら痛いわ」

「なっ?!こ、これは、――お前が逃げようとするからだ」

手が放された瞬間。一瞬だけ浮かんで消えた白い指の跡と赤く染まったセージの頬が対照的で、何だか印象的だと思った。溜息を吐き、きっともう二人には追い付けないだろうと考えて携帯を取り出す。

「会場よ。ごめん、受け取りに手間取って……大丈夫よ。お休みなさい」

丁度バスが来たらしく、会話は強制終了に近い形で終わった。二人とも乗り遅れずに済んだし、長くお小言を言われなかった事も運が良かったのかもしれない。

「……ちょっと待て」

パーティーが終わるまで後数十分。このまま会場に居るよりも、混雑する前に帰った方が良い。そう考えて、今度こそコートを受け取りに行こうと歩き出していた。言葉だけで引き止められ、別に急いではいないのだからと振り返る。

「まだ何か?」

「車を呼ぶ」

「?」

「――――仕方がないからついでに送ってやると言ってるんだ」

イマイチ理解出来なくて首を傾げたら、そんな風に言われた。引き止めて時間を取らせたのは自分だから、とか。何かあったらルカやコウに嫌味を言われるから、とか。色々捲し立てているのをじっと見ていたら、言葉に詰まってしまったらしい。

「何だよ。俺に送られるのが気に入らないのか?」

「そんな事は言ってないでしょう?お言葉に甘えさせてもらうわ」

「……、なら良い。そこで待ってろ」

ポケットから取り出した携帯を手に外へ向かったセージに呼ばれたのは、十分ほどしてからの事。はば学には良家の子女も多いと聞いていたけれど、彼もきっとその一人なのだろう。コートを羽織って外へ出ると、タクシーではなく扉の開かれた左ハンドルの高級セダンが待っていた。

さっさと乗れと言われて車に乗り込んでから、約五分。ありがとうとお休みなさいを告げて戻った家には、当然誰も居ない。判っていた事だけれど……それを、やっぱり少し寂しいと思った。

◇◆◇◆◇

年の瀬になって漸く父が休暇に入り、クリスマス前に届いたハガキを手に尋ねた。何度かミーティングで会った事のある父の旧友から届いたそれは、初日の出ツーリングの知らせ。いつものような出欠を取る形式ではなく、その日、その時間に集まる事の出来た人が参加者になるらしい。

「ねぇ父さん、これ行くでしょ?」

「ああ。良い所だからな、あそこは」

以前にも行った事があるのだろう。巨大な岩の間から煌めく波の上に昇って行く太陽が綺麗だと言う父は、昔を懐かしんでいるようにして目を細めた。私も行って良いかと聞けば、いつもより暖かい格好をして行くんだぞ?と釘を刺される。

「うん、そうする。ふふっ。楽しみね、父さん!」

「こら、重いじゃないか。全く……いつまで経っても子供だな、お前は」

ソファの後ろから抱き付くと笑いながらそんな事を言われて、当たり前でしょ?と返す。まだ高校生だもの。そう付け足して離れ、コーヒーでも淹れようと思い立ってキッチンへ。毎年三十日から年明け二日までの四日間、チームのクルーは必ず休暇を取ると決まっている。短いけれど確実なその休暇が、私はとても好きだった。

◇◆◇◆◇

30日は少し遠出をして、年末年始の食材を買いに。大晦日は父と一緒にバイクのメンテナンスを済ませ、真夜中の出発時刻に合わせて早寝。元旦は父の言っていた通り綺麗な初日の出を眺め、午後には初めて私自身に届いた年賀状を手にした。

電話がかかって来たのは、遅めの昼食に手を伸ばそうとした時だ。個人的な連絡は殆ど携帯にかかって来るのに、家の電話が鳴るなんて珍しい。父もそう思ったらしく、お雑煮を食べる手を止めてこちらを見ている。

「はい。です」

「あ!あけましておめでとう、さん」

きっと父宛ての電話だろうと思っていたのに、受話器から届いたのは聞き覚えのある元気な声だった。それでも彼女から電話がかかって来るなんて思っても無かったし、初めての事で驚いてしまう。

「あけましておめでとう、明璃。どうしたの?」

「あのね、さっき篠崎君から電話があって」

トーマと私を入れた四人で初詣でに行かないかと誘われたと言う明璃はとても嬉しそうで、断るのは気が引けた。それでもやっぱり、人混みの中に長時間――というのは避けたいから。

「そっかぁ……。初詣で行った後は遊びに行こうって言ってたんだけど、」

そっちだけでもどう?みんなで遊んだ事って無いし、部活が始まると時間が合う事って殆ど無いでしょう?こんな機会、滅多に無いから出来れば一緒に行きたいんだけど。

一気に聞かれて、ふと思った。彼女にしては押しが強いと言うか、やけに粘っているような気がする。何か理由があるんだろうか?考えてみても心当たりなんて無くて、直接聞いてみようと思った。

「あなたがそんなに言うなんて珍しいわね。何かあるの?」

驚いたと判る一音がした後、暫く彼女は何も言わなかった。話したくないような事なんだろうか?それとも踏み込み過ぎてしまったんだろうか?無理に聞くつもりは無いから。と言おうとしたけれど、彼女はその前に話し始めて――。

「えっとね……私、篠崎君が好きなんだ」

今度は私が声を上げる番だった。それは勿論、おかしなことじゃない。だけどこれまで全く考えた事の無かった事態で、何を言えば良いのか判らなくて悩んでいたんだ。再び沈黙が続いていた事に気付いたのは、明璃が話し出した時。

「……ごめんね。やっぱりさんも篠崎君の事、好きなんだね」

「ええっ?!」

さっき以上に驚いてしまったのは、仕方のない事だと思う。確かに駿斗の事はクラスメイトとして好きだけれど、それは明璃の言う好きとは意味が違う筈だ。恋愛なんて未知の領域だけれど、流石にそれくらいは判る。それを説明すると、彼女は随分と安心したみたいだった。

駿斗と遊べる機会なんて滅多に無い。二人でとなると緊張してしまうけれど、四人で遊ぶのなら大丈夫だと思うから。そう言った後、明璃にお願い!って頼まれてしまって。

「良いわ。じゃあ、どこかで待ち合わせましょう」

「ほんと?ありがとう!じゃあ、駅前広場で良いかな?」

本当に嬉しそうな声で待ち合わせ場所と時間を告げて、駿斗に連絡するからと電話を切る間際。じゃあ、後でね!と弾んだ声で言った明璃の表情が見えるような気がした。

きっと彼女は、可愛らしい顔に満面の笑みを浮かべているんだろう。好きな人と過ごす時を思って、それを素直に喜んで。それがどんな気持ちなのか私には解らないけれど、彼女の思いが通じれば良いなと思う。

「友達からだったんだな。遊びに行くのか?」

「うん、明璃達と遊んで来る。晩ご飯までには帰るから」

「晩飯は父さんが用意するから気にするな。あまり遅くなるんじゃないぞ」

「やった!じゃあ、私――って。あー、お雑煮……」

すっかり冷めてしまった椀の中身を温め直している間、母が昔よく歌っていた歌を口遊んでいた。雑煮とニーナ・シモンなんてどういう組み合わせだ?って父に笑われたけど、そんな気分なんだからしょうがないでしょ?と返して。

◇◆◇◆◇

「いらっしゃいませー!」

「ハイオク満タン。それと、空気圧のチェックをお願い」

遠出の後だから一応と頼んで待ち合いに向かおうとしたら、裏のレーンから威勢の良過ぎる声が聞こえた。今日もバイトだったんだと声のした方を向いた瞬間。サイズの合わないホイールを履かせたスポーツカーが横のレーンに止まって、助手席から出て来た男に声をかけられた。

「ねえ彼女!ちょっとちょっと!」

「――――何か?」

声だけだったなら無視しただろうけど、革ジャンを掴まれて仕方なく振り向く。勿論、不機嫌さ全開の表情で睨み付ける事も忘れずに。

「そーんな睨まないでよ。すげーカッコ良いバイクだし見せて欲しくてさ」

「見るだけなら御自由に。用が済んだなら離して頂戴」

「オレ等バイクも乗るし、何なら今から一緒にツーリング行かない?」

運転席から出て来た男まで加わって鬱陶しさ倍増。ガソリンスタンドでナンパなんて余程暇なんだろう。相手をするのも面倒で、手を払って待ち合いへ行こうとしたんだけれど――。

「うわっ!あ、ちょっと待ってよー。冷たい事言わないでさあ」

「――オイ、その辺にしとけ」

「はあ?何だよ、それ。客相手にそんな事言って良いの?」

「ちょっと桜井君!!」

しつこく追いかけて来ようとした男を遮ったのは、コウだった。それを見咎めたらしい男性スタッフが素っ飛んで来て、お客さんに平謝りしている。タイミングが悪い。そう思っても今更どうしようもないんだけれど、流石にこの状態で場を去るなんて出来ない。

「申し訳ございません。こちらでもよく言って聞かせますので、」

「んな事言われてもさー、」

「警察を呼ばれたい?男達に絡まれて困ってるって」

「……!」

全員が全員ギョッとして、こちらに視線が集まった。勿論、本気で警察を呼ぼうと思っているわけじゃない。だけど、横柄な態度でコウを陥れようとする男達にも、問答無用でコウを従わせて客を立てる事しかしない男性スタッフにも腹が立っていた。

「女性客に絡んでいたのを従業員に止められた男性客が、店側に難癖を付けている。事実をそのまま伝えれば警察は動くわよね?最終的な罪名は何になるのかしら」

単なる脅しでも、ナンパ男達にはよく効いたらしい。疾っくに給油の終わっていた車は、あっと言う間にスタンドを出て行った。

「申し訳ございませんでした」

「絡まれていた客を助けたのは彼だけだったという事実、忘れないでね」

深々と頭を下げる男性スタッフにそう言うと小さな声でハイと返って来て、私も直ぐにスタンドを出る。コウと知り合いだと悟られない内に。

◇◆◇◆◇

待ち合わせ時間より少し早く着くように家を出たのに駅前広場に着いた時にはギリギリで、慌てて駐輪場のコインロッカーにヘルメットを入れて外へ出る。小さな噴水を目指して走って行くと明璃が一番に気付いて、飛び跳ねながら手を振ってくれた。

「遅れたわね。ごめんなさい」

「気にしなくても良いよ。三分も過ぎてないんだから」

「そうそう!私達もさっき来たトコだしね」

「まーな。んで?結局どこ行くんだ?」

ここへ来るまでに三人で行先を決めていたのかと思ったら、違ったらしい。それぞれの意見を合わせた結果、ボウリングへ行こうという事に。今日は何だか初めて経験する事が多いみたいだ。

普段より人の少ない繁華街を歩いている途中、明璃に携帯ナンバーを聞かれて内側の上ポケットに手を入れる。

「――あれ?」

「どうしたの?さん」

いつもの場所に手応えが無くて、他のポケットも探ってから漸く気付いた。ツーリングに行った時、ボディバッグに入れたまま――。

「何だ、財布でも忘れたのか?」

「財布はあるわ。忘れたのは携帯よ」

自分の携帯ナンバーなんて覚えていないし、新学期に改めてと約束した頃に目的地へ到着。生まれて初めてのボウリングは楽しくて、駿斗とトーマの勝負が白熱した事も手伝って、最初は1ゲームと言っていたのに結局3ゲームまで延長していた。

「頑張れ篠崎君!」

「任せてよ。今日は調子が良いからね」

4連続でストライクを狙っている駿斗と嬉しそうに笑っている明璃。スポーツ万能のトーマと初ボウリングの私。それぞれペアを組んで対戦という状況で幕を閉じて、結果は私達の勝ちだったんだけれど――。

「だぁああ?!2ポイント差かよ!」

「トーマが負けたのね」

男子二人の勝負は駿斗に軍配が上がったらしい。悔しそうに拳を握り締めたトーマは更に延長しようと言い出したけど、もう遅いからという理由で全員に却下された。

またこんな風に遊べたら良いねと明璃は言い、次は雪辱戦だとトーマが息巻くと、そんなにムキにならなくても……と、駿斗が苦笑する。そんなみんなと駅前広場で別れて家へ帰った私を待っていたのは、暖かな部屋と、温かな食事。お帰りと言って笑う父と、携帯電話の不在着信だった。



     

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よーし、次から三学期突入だー。あー、早よ二年生まで行きたい。





橘朋美







FileNo.113 2012/9/16