オレが仙台に住んでて、彼女が神戸に住んでるのを知ってて恋に落としたんだとしたら――。

「神様ってさ、時々すっごく意地悪だよね……」

新幹線のホームで、君を抱き締めて呟いた。いつもオレの愛情表現を邪魔する先輩達は、先に乗ってるからって言っただけだった。二つ年上で、大人な性格で、美人なうえにピアノやヴァイオリンもサイコー。初めて会った時はビックリしたけど、夏が終わるまでに仲良くなるんだ!って思ってた。一緒にご飯とか食べて、メアドも交換して――。良い感じに仲良くなれてる〜!なんて喜んでたのは、コンクールが終わる少し前まで。コンクールが終われば、オレは仙台に帰らなくちゃいけない。彼女の帰る場所とは反対の所へ。それでも終わりにしたくなくて、パーティー会場で告白した。

「ねぇ、オレ、こんなに寂しいのって初めてかもしんない。
 どうしよう――十日もさんと会えなかったら、死んじゃうかも」

「電話もメールもしてくれるって言うたやないの。そんなん言わんと――」

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「……おい、水島。……いつまでボケッとしてやがる」

元気出し。って言いながら鼻先を掠めた彼女の香りも、頬に当てられた滑らかな指先も、一瞬だけ触れた唇の温かさも、思い出す度に恋しくなっちゃうんだよね。

「オレだって物思いに耽る事くらいあるんですー」

昨日はメールしたけど、今日は電話してみようかな〜。まだ三日も経ってないのに、もうずーっと声を聞いてないような気がする。でも彼女、受験生だし。あんまり時間取らせて勉強の邪魔しちゃ拙いかも――。

「Ai!!……っつ〜。何するんですか〜火積先輩!」

「――いい加減、その腑抜けた面をなんとかしろ。見てる方が疲れるだろうが……」

「ひ、酷い!ご飯も咽喉を通らないくらい悩んでる後輩にそんな事……あ、あれ?」

八木沢部長も、狩野先輩も、伊織先輩まで……なんだか微妙な顔してるけど。オレ、何か変な事言った??

「……お前、普段どれだけ飯食ってんだ?」


十日も逢わねば死ぬかも知れぬ
こんなに痩せてもまだ三日



一種げんなりした表情を浮かべる他の吹奏楽部員の事など気にも留めない彼の元へ、星奏の音大を受けるという彼女からの知らせが届くのは翌日の事。だが、それが届いたところで他の部員達の表情は変わらなかったのである。

「んっふふっふふ〜。あー、早く春にならないかな〜!」

「――――水島ぁ……いい加減、そのにやけ面なんとかしやがれ!!」

一足も二足も先に春が来てしまった彼のテンションに中てられてうんざりしていた火積の叫び声が部室内に響くと、最早諦めの境地に達した他の至誠館高校吹奏楽部員達は、『今日も絶好調だね』と視線を交わすのであった。





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お題都都逸No.23:水島新
前半は新、後半はその他吹奏楽部面子という変則技。





橘朋美








FileNo.223 2010/4/15 ※2010/10/11修正加筆