ついこないだまで同じ学校に通って、同じ部活しとって……。毎日って言うてもええくらい顔を合わせとった。あんたが横浜に越すまでは。
「私、星奏の音大に行く事にした」
最後の夏。学生音楽コンクールから帰って来た時、の爆弾発言に驚いたのは俺だけやない。千秋や芹沢も目ぇ丸くしとった。当然、進路指導の先生にも呼び出しを喰らっとったけど、の成績や。ペーパーは問題無いし、ピアノの実力も申し分無い。大した説教も無いまま、進路変更が決定されとった。
受験が終わって帰ってきたは、嬉しそうやった。向こうで如月くんや榊くん達に会うて、久し振りに話したって。……それを聞いた俺がちょっとばかり焦っとったなんて知らんまま、合格発表を待っとった。落ちるわけ無いって、自信満々で。
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「蓬生、こっち!」
久し振りに会うた幼馴染は、新幹線から降りた途端に大きな声を出して手を振る。その辺におる人の事なんて、なんも気にしてへんみたいに。まだ一ヶ月しか経ってへんのに少し大人っぽくなったような気がして、その変化を知らんかったのが悔しゅうて、思うてる事とは反対の言葉を口にしとった。
「そない大きな声出さんでも、ちゃーんと聞こえるって。相変わらずやなぁ、ちゃんは」
「人間、一ヶ月やそこらで変わっとったら大変や。蓬生かてそうやろ?」
唇を引くだけで綺麗に笑うのも、その喋りも変わってへん。変わってへんのはあんただけで、あんたを見る俺の目が変わっただけなんやろな。
「ほな、行こか。どっか寄りたいとこがあるんやったら、付き合うたるよ」
「んー……ほな、少し食材買うてきたい」
お礼に夕食ご馳走してくれるって言うあんたを助手席に乗せて、後部座席にはトランクを。まさか家に招かれるなんて思うてへんかったし、期待するなっちゅう方が無理やろ。そんな恋人みたいな状況に、浮かれ半分でハンドルを握った途端――。目が覚めた。
「……あかんな。ほんま――、どうかしてるわ」
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来なきゃ来ないでつく諦らめも
なまじこの頃夢で来る |
そんな夢に堪え切れんようになって……。あんたのとこへ遊びに行ったのは、夏も盛りの頃。
<宛先>
<件名>元気にしとる?
<添付ファイル追加> |
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こんにちは。
今、あんたの家の近
くにおるんやけど。久
し振りに遊ばへん?
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それは、ちょっとした賭けやった。俺が、初めて本気になった子との――ちゃうな。俺の気持ちに、区切りを付ける為の……最後の賭けやったんや。

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都都逸お題No.17:土岐蓬生
土岐番外「ある晴れた日に」の数ヶ月前。
橘朋美
FileNo.217 2010/4/15 ※2010/10/11修正加筆 |