ひまわりの根




ゾロの下宿先に満開のひまわりが現れた。




「なあ、なあ、なあゾロぉ。」
「…………何だ?」
「なあ、まだ終わんねぇの?」
「…………。」

ついこの間の4月、ゾロは就職した。
両親は地元で働いてくれと頼んできたが、それは断った。
大学も地元から通える場所ではなく、北の果てH大学を受験し見事合格。
就職もそのまま、北の大地に留まった。
盆休みとして10日間の長期連休を貰ったが、それも夏休み終了間際の週にした。
両親の帰郷の催促も休みがお盆とずれている事、此方でしたい事があると何かと理由をつけて断った。

それもこれも、今自分の後ろで猫のようになぁなぁ言うガキんちょの為だと言うのに……。

夕食も終えて、後は風呂に入って寝るだけの状態。
PC前に座り、カタカタとキーボードを打ち込みながら、はぁっと溜息を吐くゾロだった。




そもそも、この盆休み。
これと言ってやることも無く、一日中ぼんやりとして過ごすつもりだったのに。
暑い最中、冷房も掛けずにガーガー鼾を掻いて寝ていた休日初日の正午、安アパートのぼろいドアをガンガン叩くアホが
居て。
その内帰るだろうと高を括っていたら、ガゴオオオオオンと大きな破壊音がして。
流石に吃驚して飛び起きれば、目の前には外れたドアと満面の笑顔。

「なあんだ。やっぱり居るんじゃねぇか。」
「………サンジ。てめ、なんで……?」

大きな旅行鞄が2つ飛んできて、呆然としながらもそれを何とか受け止めて、顔を上げた途端。


目の前にひまわり。


「10日間よろしく!ゾロ!!」
そう、ひまわりのような金髪が飛び付いてきた。

「どういうことだ!大体、てめぇ部活は?合気道の合宿もあるんじゃねぇのか?!」
「ん?まぁ、そうなんだけどよ。部活はセンセにOKもらったし、師匠ももう教えられる事無ぇって。それに、ジジィもいいっ
つってた。」

あの、クソジジィ!
なんつー孫に甘いヤツなんだ!!
どうせ、ひがな一日レストランに入り浸る孫可愛さに来る客どもからコイツを守りたいんだろうが。
オレを信用するにも程があるぞ。
いくら鉄壁のようなオレの精神も、10日も寝食共にしたらいつ粉々に砕け散るか想像付けろよっ!!!

頭の中で、そのひまわりの祖父に向かって悪口雑言を並べ立てて。
思わず背中に手を廻して思いっきり抱き締めそうになるのを、煎餅布団を掴んで必死に耐えて。
ひまわりのようなサンジの頭に頭突きを喰らわしてやる。

「いってぇな!何だよっ!!」
「10日もここに住むんなら、メシぐらい3食喰わせやがれ。」
「おう!勿論そのつもりだぜ!食材の宝庫だモンな、ここ。腕が鳴るぜ!」

ニカッと目の前で笑う14歳の少年に、何でオレは欲情しちまうのかなとガクッと肩を落とすゾロが居た。




ゾロが隣に住む10歳年下のサンジへの妙な気持ちに気付いたのは高校2年生の時だった。
小2のサンジが高校生に襲われて。
何とか助け出したゾロだったが。
ニコニコとゾロを見つめるサンジの姿に邪な考えを持つ輩も増えてきて。
サンジがそんな対象になり得るのだと認識して。
認識すると同時に自分の中にある想いに気付いた。

自分こそ一番サンジにとって危ない存在かもしれない、そう自覚して離れてみたのだ。
大学に行く時、サンジは泣いた。
泣いたけれど、止めようとはしなかった。
笑って送り出してくれた。
ただ、涙を拭って笑ったその顔が、妙に痛々しくて。
飛行機が飛び立ってから、ゾロは機内のシートに座りポロッと一粒の涙を零したのだった。




そんなこんなで、ゾロはサンジへの気持ちを自覚しているので、2人っきりのこの状況は非常にまずい。
土日は友人のヨサクとジョニーの帰郷予定を無理矢理キャンセルさせて、家に呼んで泊り込みのどんちゃん騒ぎ。
月曜日は用もないのに会社に出勤して、出勤していた部長に驚かれながらも仕事を引き受けて帰った。
そして、その月曜日の夜、PCに向かって連休明け直ぐにある会議の資料を作っていると言うわけだ。


だが、しかし……。

「なあ、なあ、ゾロぉ。」
「だから、何だ?オレぁ、忙しいんだ。お子様はテレビでも見てさっさと寝ろ!」

後ろから首に手を廻して凭れ掛かってくるサンジは、風呂上りのいい匂いがして。
同じシャンプーと石鹸使ってる筈なのに、何でこんなにそそるんだろう?
廻された腕の白さに、頭がくらくらする。
大体、暑さに弱いサンジの為にクーラーを付けてそこそこ涼しくしてやってるというのに。。

(風呂上りのパジャマ代わりが何でそんなに薄着なんだ?!)

ゾロがキレそうになるのも無理はない。
サンジはピチピチのチビTシャツに短パンという、それはもう露出度の高い格好なのだ。
白くて長めの手足に加えて、Tシャツの裾から少し覗くきゅっと締まったお腹と臍。
胡坐を掻いたその脚の上に資料の元となる本を置いておいたのは先見だった。
そうじゃなきゃ、息子が欲望を主張しているのがあからさまにわかっただろう。

「なあ、だってよぉ、ゾロ。」
「だから、何だ!」
「オレさぁ、もう大人だぜ。」
「どこがだ!まだ中学1年になったばっかのガキだろうが!!」
「そりゃ中1になったばっかだけどさ。もうオレ剥けたぜ。」
「はぁああ?剥けたって……お前。」
「チンコだよ。夢精だってするし、オナニーも覚えたぜ。」
「??!!夢精って……オナニーって……ええっ?!!」
「だからさ、しようぜ、ゾロ。」

サンジはそう言うと、後ろから伸ばしていた手で本を取り上げると、呆然としていたゾロの股間を弄った。
ビクッと身体を震わせて自分の肩越しに覗き込んでいる横のサンジを見ると、感心したような顔をしてゾロの股間を見て
いた。

「へええ。ゾロ、結構でかいな。オレ、大丈夫かな?」
「だ、だ、大丈夫って……な、何が?!!」

ワケが解らず、事態も受け入れられず、ただただ慌てふためいているだけのゾロに、サンジが更に追い討ちをかける。

「オレ、頑張って解すの練習したんだぜ。でも、オレの指じゃちょっとこれには敵わねぇしな。」
「解すって……お前…何を?」

首を傾げながらゾロの顔を覗き込んで、サンジがゾロの理性をぶっ飛ばすひと言を放った。

「オレのケツの穴、ゾロのコレ入ると思うか?」

ブチッと確実に今、音がしたと思う。
ゾロの頭は完全にオーバーヒート、そこを占めるのはサンジの可愛いチンコとケツの穴のみ。
自分の股間に伸ばされた手をグイッと引っ張り、膝上にサンジの身体を乗せると驚いているサンジのポカンと開いた口を
塞いだ。


押し付けるだけのキスじゃなくて、それこそ舌を絡みつかせるようにして、サンジの口腔内を蹂躙する。
「……んっ………ふ……。」
必死になって鼻で息をしているのだろう。
薄目を開けて目の前のサンジの顔を見てみれば、目を閉じてはいるものの眉間に皺を寄せて苦しそうにしている。
その顔もまたゾロの欲を誘う。
片腕でその細っこい身体と頭を支え、空いた手で耳たぶを弄ってやれば、身体を捩って応える。
今まで堪えていた想いが爆発しそうで止まらない。
少し離しては角度を変えて、更に奥へ奥へと舌を差し込んでサンジとのキスを堪能する。
だが、それまでだらりと垂れ下がっていたサンジの手がゾロのトレーナーを掴んだ時、ゾロはハッと我に返った。

唇を離して、はぁはぁと荒い息を吐くサンジを見て呆然とする。

ヤバイと本能が告げる。
このまま一緒にいては、サンジの気持ちも身体も将来も考えずにぶち込んでしまいそうだ。

首をぶんぶんと横に振って、サンジの身体を起こしてゾロは立ち上がる。

「…………ゾ、ロ?」
「悪ぃ。オレ、ダチんとこ行くわ。てめぇは今日一日ここに泊まって、明日ウチへ帰れ。」
「え?何で……?」

真っ赤になってた顔が、急に寂しそうな顔になって。
思わず絆されそうになる自分に活を入れる。
幼稚園の頃とは違う。
ただ抱き締めて、背中をぽんぽんするだけじゃ止まらない。

「何でも何も、ダメだ!」
「何で!!」
「サンジっ!!」
「オレ、ずっとずっとゾロが好きなんだ!!」
「!!!」

目を見開いて見下ろせば、真剣な顔で自分を見上げるサンジの視線と絡まる。

「オレ、前から言ってただろ?ゾロが好きだって。てめぇと結婚するんだって。そりゃ、この年になって男同士だから結婚
できねぇことは百も承知だ。ゾロが女の方がいいって事も勿論わかってる。でも、でもオレはゾロが好きなんだ。だから
一生懸命調べた。どうやったら男同士でもできるかって。ジジィに勉強すんのにPCいるって言って、それでいろんな事
検索して。ゾロをちゃんと気持ちよくできるように、オレ練習もした。」
「な………練習って、お前……何?」
「お年玉貯めて通販でいろんなモン買った。バイブとかローションとか。大丈夫、オレ絶対ゾロをイかせてやれるよ。」
「だ、だから……何でお前がそんなことしなきゃなんねぇんだよっ!!」
「っ!!!」

涙目で自分を見つめるサンジを、ゾロは信じられないものを見るように見た。

好きって、イかせるって……意味が解って言っているのか?
内容を聞けば、要は自分とSEXしたいってことなんだろう。
それは中学生独特の性への好奇心だけじゃないのか?
ちょっと方向が間違っているような気もするが。
それを利用して、自分がまだ子供のサンジに手を出していいのか?
大人の自分がサンジの間違いを正して、ちゃんと女の子と付き合えるようにしてやらなければいけないんじゃないのか?

ゾロの心の葛藤を知ってか知らずか、サンジはゾロの視線を受け止めてポロッと涙を零した。

「もうガキじゃねぇ。20分も泣いたりしてゾロを困らせるようなガキじゃねぇ。」
「………サンジ。お前、女の子に興味ねぇのか?」
「んなことねぇ。女の子と話してると楽しいし、お洒落してる子見ると可愛いなって思う。守ってあげたいし、優しくしてあげ
たいって思う。」
「なら―――」
「でも、それは単純に異性への興味ってだけで。ゾロとは違う!オレはゾロが好きなんだ!」
「サンジ……。」

ゾロがそれでも動けずにサンジを見下ろしていると、サンジがフッと自嘲気味に笑って俯いた。
そして、もう一度顔を上げてニッコリ微笑んだ。

「オレ、帰るわ。」
「サンジ?」
「やっぱ、無理だよな。わかってたんだ。今回来たのは、もう思い切ろうってそう思って。ゾロがオレの気持ちに薄々気付いて
離れてったのもわかってる。ただ、決定打が欲しかっただけだ。ごめんな、ゾロ。」

そう言って笑うサンジの顔は、ゾロが大学に向かう直前の空港ロビーで見たあの切なそうな顔で。
立ち上がり、部屋の隅にあるサンジの旅行鞄へとサンジが向かおうとゾロの前で踵を返して。
その背中が、泣き続ける幼少のサンジを思い出させて。

思わず、後ろからその背を抱き締めた。

「ゾ、ゾロ?」
「………てめぇの勘違いを利用していいのか、オレは。」
「え?」
「てめぇは、ちっちゃい時両親亡くして、寂しかっただけだ。そん時偶々傍に居たのがオレだっただけだ。」
「……そうかもしれねぇな。でも、ゾロじゃなきゃここまで好きにならねぇってオレは断言できる。」
「っ!……後でやっぱダメだって言うなよ。今なら、このまま離してやれる。」
「何でオレがダメって言うんだよ。有り得ねぇ。」
「でも、サンジ―――」
「オレとエッチしてくれる?ゾロ。」
「してぇ。っつーか、てめぇとじゃなきゃしたくねぇ。」
「!!……へへっ、嬉しいな…オレ。」

泣きそうな顔で振り向いたサンジの唇を、ゾロは覆い被さるように塞いだ。
まだ、成長期に入りたてのサンジだ。
背丈はゾロの肩くらいしかない。
少し背伸びしてゾロのキスを受け入れるサンジは、一生懸命腕を伸ばして、ゾロの首に手を廻す。
それがまた堪らなく愛しくて、ゾロはサンジの腰に手を廻してギュッと抱き締めた。




煎餅布団にサンジを残して、ゾロは風呂に入った。

とりあえず、一度逆上せきった頭を冷やす為に。

あのまま勢いに任せて抱いていたら、多分サンジを壊していただろう。
思うままに啼かせて、身体中を弄り潰し、強引にその身を貫いてしまうだろう。
それじゃ、ダメだとゾロは思った。
他の誰でもないサンジを抱くのだ。
一番大事にしたい、この世でただ1人、ゾロが愛しているサンジを。
だから、ちゃんと冷静になって、ちゃんとサンジを気持ちよくさせてやることだけ心掛けよう。
そう思ったのに……。

「ゾロ、オレも入っていい?」

風呂場のガラス戸一枚隔てた所で、サンジが聞いてきたからゾロは堪らない。
漸く治まった息子が、むくむくとまた自己主張を始めた。

「ま、ま、待て。すぐ……うん、すぐ出るから。」
「うん。でも……。」
「でも、何だ?」

何か心配そうな、気に掛けていそうな声だったので、気になって聞いてしまったのが悪かった。

「風呂場で解したほうが、結構早く軟らかくなるからさ。」
「っ!!!!!」

暴発しそうになる息子を懸命に抑えて、ゾロは慌てふためく。
とにかく一度抜いておかないとやばそうだと、シャワーのコックを最大限に捻って、自身で扱く。
先程の声を思い返しただけで、簡単にイってしまった自分が恨めしい。

「なあ、ゾロ。」
「お、お、おう。今開ける。」

シャワーを止めて、ユニットバスの扉を開ければ全裸のサンジが待っていて。
思わず、まじまじと眺めてしまう。

まだ子供の身体だ。
少年期の細くて、大人になる前の純真な身体。
真っ白な真珠のようなつるっとした身体。
その身体が、薄っすらとピンク色に染まっていて。
細くて、手足も長くてすらっとしてて。
下半身には、ちょっとだけ生えている叢と、その中で可愛く主張しているサンジの息子。

緊張しているのか、肩を震わせて。
それでも視線はゾロから逸らさずに。

「いい?」
「おう。」

伸ばされた震える手をしっかり握ってやる。
そして引き寄せてバスタブの中へと導いてやる。

「シャワー出していい?」
「おう。」

コックを捻り、立ったままシャワーを浴びる2人。
金色の髪が徐々に湿っていって、それが顔につくのが妙に妖艶で。
水飛沫の中、ゾロはサンジを引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。

「ゾロ?」
「…………堪んねぇ!!」

ゾロがそう言って、サンジの顎を掴んで上を向かせると、嬉しいのと恥ずかしいのとでごちゃ混ぜになった顔でサンジが
笑う。
その笑ったサンジの唇に、自分の唇をそっと押し当てた。
すると、サンジが少し背伸びをしたのか、腕をゾロの首に廻してきて。


長い長いキスをした。




ユニットバスの大人1人が足を伸ばして入るには狭い浴槽に、ゾロは緩く膝を立てて座っている。
臍の辺りまで湯を埋めて、太股の上に全裸のサンジを乗せて。
顔を真っ赤に染めながら、ゾロの肩に手を乗せて拙いキスを仕掛けてくるサンジが可愛くて、その表情を薄目を開けて見物
しつつ、躯中を撫で回す。
そのゾロの手がサンジの感じる箇所をかすめる度に、肩を震わせる。
腰が揺れて、サンジの小振りなピンク色のペニスがゾロのそれと擦れ合って、サンジの可愛らしい声がバスルームに響く。

「………ん……あ、ゾロ…ゾロっ、も……。」
「どした?」
「な、んか……やっ………いつも、と………違……っ。」
「?どう違うんだ?」
「触って……ね、のに……あっ、イき……そっ!」

びっくりするようなエロいことを言うサンジの顔を見れば、眉を切な気に潜めて、目からは我慢しきれないのかぽろぽろと
涙が溢れ、それが頬を伝い、薄く開けられた唇から垂れる涎と共に首筋へと流れ落ちている。
ゾロがその流れを唇ですすりつつ、ペロッと舌で舐め上げれば、ヒャッと声がして細い躯がしなる。
それがもう堪らなく扇情的で、ゾロは思わずサンジの唇に覆い被さるようにキスをした。

「……んふっ……んぅ……。」

先程のサンジの触れるだけのキスじゃなく、舌を滑り込ませて、深く絡め取るように情欲的なキスを。
泣きそうな顔で応えるサンジの細い体を力強く抱き締める。
サンジがゾロの腕に爪を立ててしがみ付く。
唇を離してサンジを見れば、もう限界だろうか、首を横に振り、身に余る快感に耐え切れないのか肩を震わせていた。

「………ゾロ……ゾ、ロ……やぁ…。」

サンジの性器もタラタラと雫を流していて、口からはもうゾロの名と意味を成さない喘ぎ声しか出てこなくて。
ゾロ自身もサンジのその痴態でほぼ限界だ。
だから、ゾロは重なっている自分とサンジのペニスを併せ持つ。
期待と不安が綯い交ぜになった顔でゾロを見るサンジに、ゾロはニヤッと笑ってみせた。

「いっぺんイこう。オレも耐え切れねぇ。」

そう言うなり、握った2つの塊を上下に強く扱く。
与えられた強烈な刺激に、サンジが悲鳴に近い嬌声を上げる。
腕に立てていた爪を更に食い込ませ、背をバスタブに押し当てて仰け反るその姿はもうゾロの脳を沸騰どころか爆発させ
るのに十分なほどだ。
その顔に、その身体に、その声に持っていかれそうな自分の射精欲を必死で抑えて、ゾロは扱く。
勿論サンジにそれを耐えられるだけの気力があるはずも無く。
可愛らしい濃桃色のそれが白濁を放つのに時間は掛からなかった。
サンジの絶頂の声でゾロも忍耐の限界がきて。
次いで、ゾロも逐情したのだった。




天井を朦朧とした目で見上げていたサンジが、身体を起こしてゾロの首に腕を廻して抱き付いてきた。
それを優しく抱き締める事で返す。

「ゾロ……イったね。」
「ああ。そうだな。」

ゾロが自分でイった事を嬉しそうな口調で言うもんだから、ゾロも思わず笑ってしまう。
笑って、真っ赤になったサンジの唇に啄ばむようなキスを送る。
それでも不服そうなサンジに、どうしたと聞けば。

「ゾロ、オレに挿れて無ぇ。」

そう言って徐に自分の目の前で少し身体を前のめりにして後ろに手を伸ばしたものだから、ゾロは慌てて首を横に振る。
実際、ゾロにはサンジに挿れるつもりはなかった。
解すとかケツの穴とか言われて、頭が完全にいかれてしまいそうになったけれども。
直接サンジのと自分のを見比べて、サンジの細い指を見て思ったのだ。

絶対、入るわけねぇ……と。

大人の男同士でも、きっと入れられる方は相当痛いんじゃないんだろうか。
それを頑張って解したところで、やっぱ最初はキツイはずだ。
サンジに至っては、幾ら皮向けたとはいってもそもそも穴が小さいだろう。
だから、決めたのだ。

サンジがもうちょっと大きくなるまで、後ろはしないと。

でもサンジはさっきまでの嬉しそうな顔を完全に引っ込めて、泣き出しそうだ。
頬に手を当てて、ん?と首を傾げると強請るようにサンジが甘く囁く。

「ちゃんと最後までしてくれよ。」
「………てめぇに怪我させたくねぇ。」
「怪我とか、そんなんいいっ!!」
「よくねぇっ!」

ゾロが怒鳴るとサンジが堪えていた涙を零す。
嫌々と駄々を捏ねて、ゾロの肩を掴んで。
視線を合わせてサンジが一生懸命ゾロに言ってきた。

「ちゃんと最後までしてくれよ。でなきゃ、ゾロ、オレに飽きちゃう。オレじゃなくて、もっとゾロを気持ちよくさせてくれる女の子
んとこ行っちゃう。やだっ!それだけは、やだっ!オレ、ちゃんとゾロ、イかせるから。出来るから。」
「………サンジ。」

えぐえぐとそれは久し振りに見るサンジの嗚咽で。
自分がサンジから離れた事が、逆にここまでサンジを追い詰めていたのだと知った。


きっとあの時から、だ。
あの時から、自分の為にどれ程無理をしてきたのだろう。
あの時から、自分の為にどれ程我慢をしてきたのだろう。

年相応の事を楽しまずに、自分の事だけを想って。
必死で大人になろうと、自分を困らせないでおこうと頑張って。

純粋で健全だった筈のひまわりの根っこを、あらぬ方へと捻じ曲げて。

それではダメだ。
これから、サンジがちゃんとサンジ自身を取り戻すべきだ。
自分自身をもっと振り向いて。
自分自身をもっと大事にして。

常に自分自身をそのまま現せるように。

それをゾロがちゃんと見守らなければならない。
いつだってサンジが不安になる事無く、ゾロが傍にいるのが当たり前になるまで。

例えその時、ゾロが必要じゃなくなっても。
例えその時、ゾロ以外の誰かを好きになったとしても。

それを受け止められるだけの度量を、時間をサンジが与えてくれたのだから。


だから、自分の中にある最大量の語彙を使ってサンジを説得する。
それが、自分が逃げた事への償いになればと。

「サンジ、いいか、よく聞け。」
「ゾロ………。」
「てめぇから離れたのは、あの時まだ小学生のてめぇにこんな事したくなかったからだ。」
「………え?」
「てめぇの声聞きゃ会いたくなって。てめぇの顔見りゃ抱き締めたくなって。てめぇの鎖骨見る度に欲情して。……そんなん
ダメだろ?」
「オレ、ゾロなら……。」
「そうじゃねぇ!そうじゃなくて、オレは……もっとてめぇを大事にしてくれっつってんだ。すげぇ大事な、大切なてめぇだから。
オレがどんなにてめぇを好きでも、大事で大切で大好きなてめぇを穢しちゃいけねぇんだ!」

ゾロの言葉にサンジが目を見開く。
涙が止まって、生気を失いかけてた潤んだ瞳が微かな希望に輝く。

「…………ゾロ……今、何て…?」
「何度だって言ってやる。オレはてめぇが好きなんだ。ずっと、ずっと前から、もう6年も前から。そういう意味で惚れてんだ。」
「…………嘘……。」

ふるふると首を横に振るサンジの頬をゆっくりと両手で挟んで。
涙が滲んだその頬を優しく撫でながら、そっと口付ける。
サンジがその腕をゾロの首に廻してくるまで。

唇を乗せて、啄ばむだけの優しいキスを送った。

顔を覗けば、それでも疑わしそうな表情をしているので、安心させるように笑って見せた。
そして、聞く。

「オレはどうすればいい?」
「……どうって?」
「どうすりゃ、てめぇはオレの気持ち信じてくれる?」
「………やっぱ、挿れて欲しい。」
「そりゃ、ダメだ。それだけは聞けねぇ。………なら、これならどうだ?」

寂しそうな顔をするサンジにもう一度触れるだけのキスをして。
バスタブの中で、ゾロに背を向けるようにしてサンジを立たせる。

「股閉じてな。」
「うん……どうすんの……って?え……それって……んああっ。」

閉じられたサンジの太股を、両脇から更にゾロが押し付けて。
ギュッとくっ付いたサンジの白い大腿部の間に、ゾロが一度達しても尚怒張したままの男根を滑り込ませる。
サンジの可愛らしいペニスの裏筋を強く擦るように。

くたりとしていたサンジのそれが、直ぐに力を取り戻す。
それと同時に膝がガクガクしてきて、離れそうになるサンジの腿を支えながら。
ゆっくり確実にサンジを追い詰めていく。

声を隠す事無く、感じてる態度を余す事無く伝えるサンジに愛しさが募る。
震えながら、自分を振り返るサンジの顔がエロティックで。
泣きながら、啼きながら、ゾロに限界を伝えてくるサンジの声が可愛くて。
自身も限界を感じて、サンジの腿を抑える手に力を込めてグッと腰を押し込む。

バスタブの縁と、バスタブ上の壁に白い液体が飛んで。
サンジの身体がガクッと崩れ落ちそうになる。
それを何とか支えて。
荒い息を整えつつ、ゾロは気を失ったサンジを抱きかかえてシャワーで軽く流してから風呂場を後にした。




強烈なSEXもどきと、湯中りでグッタリしているサンジを布団へ寝かせているところへ電話のコール音が狭いアパートに
響き渡る。

慌てて受話器を取れば、母の声だった。

「ゾロ、お休みどう?サンジくん、そこにいるんでしょ?」
「ああ。今寝てる。」
「そう。………サンジくん、変わったでしょ?」
「ああ、そうだな。」
「ゾロ、サンジくん可愛がってやってね。」
「………え?」

あんな事があった直後だ。
思わずうろたえて返事が遅れると、母が堪り兼ねたように話し出した。

「お前が居なくなってから、お前の穴を埋めるようにサンジくん、随分背伸びしてきたのよ。全然泣かなくなったし、子供らしい
遊びもしなくなってね。でも、凄く無理してるんじゃないかしら?そんな素振りは見せないようにしてるけど………心配なのよ。」
「うん。………オレもわかった、それ。もうそんな事させねぇよ。」
「ゾロ………。」
「オレ、異動願い出すよ。そっちに戻れるよう上司に掛け合ってみる。」
「……………。」
「…………母さん、ありがとう。」

電話の向こうで洟を啜る音がして、母親さえも心配させていた事に漸く気付く。

もっともっと強くならなければ。
ひまわりの、あの大きな花を支えられるような根をしっかりと張らせなければ。
水にも、肥料にも、風除けにもなって、あの花を立派に咲かせなければ。

受話器を置いて振り向けば、目をとろんと開けて自分を見つめるサンジの姿があって。
その目が、その表情が少し不安げに見えたから。
すぐに駆け寄って、抱き締めて。
ホッとしたように抱き返してくるサンジを抱く腕に強く力を込める。




大事な大事なこの存在を、このひまわりの根を支えよう。

項垂れる事無く、ただただ上だけを向いていられるように。
常に日の光を見つめて、真っ直ぐ生きていけるように。

傍でずっと見守り続けよう。


ゾロは腕の中の大切な温もりを感じながら、心の中でそう誓ったのだった。




END


リーマンゾロ×中坊サンジエロv
誘い受けサンジとお風呂での股擦りvv




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