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満天の、今にも墜ちてきそうな星空の下。 昼間の暑さとは打って変わって、海から陸に吹く風が火照った顔に心地好い。 今日昼前に見つけた小さな島。 夏島海域でウンザリするような暑さの中、誰もが言葉には出さないが何か刺激を欲しがっていたその矢先に現れた、遠浅で |
透き通った当に理想的なビーチに全員一致で上陸と相成った。 日中散々遊び回ったからか、船長・狙撃手・船医はビーチで爆睡中だ。 で、私はと言えば―――― 「はい、ナミさん、ロビンちゃん。」 「ありがと、サンジくん。サンジくんも一緒にどう?」 「まだ、明日の仕込みが終わってないから。ありがとね、ナミさん。ロビンちゃんもごゆっくり。」 「ありがと、コックさん。」 沖合いで停泊中のGM号、後甲板で星空を肴に酒宴の真っ最中。 それというのも、折角サンジくんが豪華なおつまみ持ってきてくれても礼1つ言うわけでもなく、さも当たり前のように胡坐で |
踏ん反り返って酒をかっ喰らう目の前の剣豪、ゾロが昼間誘ってきたからだ。 何でも昼間サンジくんとじゃんけんして勝ったんだとか。 自分が勝ったら、酒もつまみも至れり尽くせりで私たちと飲むって決めてたらしい。 ここ最近ご無沙汰だったから、私もロビンも嬉々としてこの誘いを受けて今に至る。 そもそも、こうしてゾロとロビンと3人で飲むのは、そう珍しい事でもない。 普段はそう話をするわけでもないゾロが偶に酒の席に相手を欲しがるのと気付いたのはココヤシ村を出て直ぐだったろうか。 ゾロから、暇ならちっと付き合えと言われたのが最初だった。 私と2人で酒を嗜みながら他愛の無い話をして。 口数は多くないものの、意外と聞き上手なゾロに結構色んな話をしてきたっけ。 的確な指摘や押し付けがましくない助言に助けられた事もあった。 チョッパーやビビが仲間に入ってもそれは変わらず。 2人ともお酒はそんなに強くなかったし。 でも、ロビンが来てから3人で飲むのが普通になった。 ロビンは大人だから、口には出さないけれど強そうなのが見て取れたし。 ゾロと同じようにあまり語らないロビンをなんとか話させようと、私が誘ったのが切欠だったろうか。 最初は気乗りしなかったゾロも、ロビンのひととなりが掴めて来た頃には3人でと誘ってくるようになった。 多分その頃からだろう、サンジくんの態度がおかしくなったのは。 勿論私たち女性陣にはそんな事おくびにも出さなかったけれど。 ゾロにそれまで以上に突っ掛かるようになって。 しかも大抵3人で飲んだ翌日にはゾロと大喧嘩をした。 喧嘩の原因なんて、私から見ればとても些細な事だったり、果ては言い掛かりだったりした事もあって。 それが気に入らないのか、ゾロも対抗するかのように3人で飲む機会が増えていった。 私もロビンもしばらくは様子を見ようと放っておいてはいたのだけれど。 「ねぇ、ゾロ。あんた、何でサンジくんがあんなに怒るか考えた事ある?」 ある日、またしても同じように3人で飲んでいた時、聞いてみたのだ。 前夜も飲んでて、その日の昼間も2人で船が壊れるんじゃないかと思うくらい激しい喧嘩を繰り広げていて。 いい加減、原因に目星が付いていた私がそう聞くと、ゾロが怒りも露に吐き捨てるような口調で言い切った。 「あ?んなもん決まってんじゃねぇか。気に入らねぇんだろ、オレとてめぇ等が飲んでんのが。」 「違うわよ。あんたが私たち相手に飲んでんのが気に入らないのよ。」 「あぁ?…………どう違うんだ?」 苛付いていた雰囲気がすっと納まって、酒瓶片手に首を傾げるゾロが可笑しくて。 ロビンと2人でくすくす笑った。 ゾロはそれが面白くなかったのか、ムッとしながら睨み付けてきた。 「だからね、剣士さん。私たちの相手が貴方だからじゃなくて、貴方の相手が私たちだから気に入らないの、コックさんは。」 「……………。」 「私たちがルフィと飲んでても、サンジくん、ルフィ相手に喧嘩売らないでしょ?」 「そりゃ、ルフィは………。」 「ウソップでもチョッパーでも、その辺で引っ掛けた男でもよ。つまみが切れないように時折顔出しながら、ラウンジでコーヒー |
片手にレシピの整理とかして待っててくれてるの。私たちがお開きにするまで、ね。」 「でもね、剣士さんの時は違うの。レシピの整理してる振りして起きてはいるけれどもね。」 「そう、しかもコーヒー片手にじゃないわ。」 「………何だよ?何してんだ?」 いつの間にか酒瓶を床に置いて、真剣な顔をして、私たちの話を聞いているゾロにはっきりと言ってみた。 「お酒、よ。」 「…………酒?アイツが?………何で?」 「考えたくないからでしょ。」 「…………何を、だ?」 「何を、かしらね。酔い潰れてラウンジでそのまま寝てしまう事もあるみたいよ。明け方シャワー使ってるみたいだから。」 「…………どういう事だ?」 大方の検討が付いたのだろう。 眼つきが尋常じゃなくて。 それでも、最後の最後で尻込みしてるのか、胡坐を掻いたその膝を掴む掌が力の入れ過ぎで震えているのがわかる。 だから駄目押しで言った。 このままじゃ、どっちもダメになっちゃうだろうから。 「一々言わなきゃわからないなら、これまでなんじゃない?世界一の大剣豪には荷が勝ち過ぎるのかもね。」 「そうね。剣士さんに、コックさんはちょっと勿体無いかもしれないわね。」 ロビンの言葉か、私の言葉か、どちらがゾロの心を叩いたのかはわからないけれど。 ガタッとその場を勢い良く立ち上がって、ラウンジへと向かうゾロを見送った。 壁の向こうにゾロの姿が消えて、扉が開く音がして。 ぼそぼそと話し声がしたかと思うと、テーブルを引っ繰り返したかのような酷い騒音と言い合う声が聞こえてきて。 しばらくガタガタガタと争う音がしていたのだけれど。 唐突にその音がふっと止んだ。 「どう?ロビン?」 「ええ、もう大丈夫よ。その窓から覗いて御覧なさいな。」 目を瞑ってハナハナの実の能力でラウンジを覗いていたロビンが目を開いてそう言うから。 そっと音を立てないように中を覗いて思わず頬が緩んでしまう。 だって、目に入ってきたのは………。 煌々と明かりの点いた室内で。 色んな物が散乱しているラウンジの床の上で。 仰向けに寝転がるサンジくんの頬を涙が伝ってて。 潤んだ瞳を閉じるサンジくんの上に覆い被さるように乗っかるゾロが居て。 唇が重なっていたから。 サンジくんの腕がゾロの首に廻っていたから。 「良かったわね、航海士さん。」 「うん、いい加減気が付いてもよさそうなのに、どっちも鈍いんだから。」 「今からどうする?女部屋で飲み直す?」 「そうね、ここに居てもお邪魔だろうし。今日くらいはサービスしようかなv」 「ふふふ、そうね。静かに行きましょうか。」 ロビンと2人、くすっと静かに笑いながら足音を殺して後甲板から女部屋に移動したのが約3ヶ月前の事だ。 それから暫くはゾロからの誘いが無くなって。 久し振りにお誘いを受けたのが今日なのだが。 だから、聞こうと思っていたのだ。 サンジくんとはどうなったのか、を。 まぁ、聞かずともわかるといえばわかるんだけれども。 だって、サンジくんが皿を置いて身体を起こした瞬間に目が合った2人をばっちり見ちゃったから。 サンジくんをただ無言で見上げるゾロの視線が、以前の剣呑としたものと違って物凄く柔らかくて。 それに返されたサンジくんの少し照れ臭そうに返された微笑みが、これまた見た事無いくらい色っぽくって。 私たちの視線を感じたのか、サンジくんがこの場を去ろうと踵を返してラウンジに向かって歩き始めた。 その姿を見送るゾロが徐に腰を上げる。 「悪ぃ。ちっと待っててくれ。」 そう言うと、後ろ甲板を後にしてサンジくんの後を追った。 その足取りが妙に速くて。 「上手くいってるみたいね。」 「そうね、あんなサンジくん初めて見たし。」 「剣士さんもね。久し振りに一緒に飲んでみれば………笑っちゃうわね。」 今日今までのゾロの態度を思い起こして、自然と笑みが零れる。 サンジくんの話題は一度も出なかったけれど。 ラウンジからの音を気にしているのが態度でわかったし。 何より顔付きが全然違った。 笑顔も、言葉も、視線も全てが愛しさに満ちていたから。 「でも、いつから気付いてたの、ロビン?」 「え?そんなの、この船に乗って直ぐよ。剣士さんの素っ気無い態度よりも、コックさんの親しげな態度の不自然さの方が気に |
なったもの。」 「そうよね、大体気付いても良さそうなもんだと思うわ。まず、ゾロ自身だけど。私と話してて大抵ゾロから話題にするのは |
サンジくんの事だったのよ。嫌いだと思い込んでただろう時も、無意識に煮詰まってる時も。私たちに対してならサンジくんの事
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話しやすいからだって、自覚無しに飲み相手に選んでくるんだもん。」 「そうね。コックさんの態度が変わったのだって、私を意識しての事だったんでしょ?貴方の気持ちは知ってるからって安心し |
てたところへ私の登場ですもんね。」 「そうそう、私やビビと違って、ゾロの態度が180度違うロビンをかなり意識してたと思うわ、サンジくん。」 「でも………さり気なくフォローを入れられる辺り、剣士さんも大人になったのかしら?」 「あら?出刃亀?ヤツら、何してる?」 「ラウンジ前での逢瀬ってとこかしら。コックさんの耳に何か囁いてるわ。ふふっ、嬉しそう。」 「へぇ、ゾロもやるわねぇ。………あら、ゾロ。帰って来ていいの?」 「………てめぇら、また覗いてやがったのか?」 ラウンジの壁から顔を出したゾロがムッとしながらも、項の辺りをぽりぽり掻く。 それが照れ隠しだと知ったのもつい最近だ。 サンジくんの話題が出る度に目にしたそれ。 だから照れさせ序にと質問してみる事にした。 「ねぇ、サンジくんのどこが一番いいの?」 「あ?そりゃあ――――」 突然の質問に一瞬素直に答えそうだったのに、ハッと思い返したのかふっと笑う。 笑ったその顔が妙にセクシーで。 「てめぇらに言うわけねぇだろ、勿体無ぇ。」 そう言うゾロに、そう言わせるサンジくんに正直妬けた。 「ヒトの男は良く見えるって言うけど本当ね。」 「そうね、惜しい事したかしら?」 ロビンと目を見合わせて、ケタケタと笑った。 そこへサンジくんが新しい酒瓶を2本持って現れて。 笑う私たちをきょとんと見ながら、私たちにまず1本、そしてゾロに1本渡して尋ねる。 「何笑わせてんだ、ゾロ。」 「知らねぇよ、勝手に笑い始めたんだ。」 2人の視線が、今までみたいに火花が散るような一触即発の喧嘩腰なものではなくて、優しく絡み合う愛情の籠もったモノ |
だったりしたものだから、それがまた余計に私たちを笑わせる。 嬉しくて、幸せそうな2人を見て楽しくて。 そんな私たちにサンジくんが遠慮がちに聞いてきた。 「お楽しみのところ恐縮だけど、オレも混ぜてもらっていい?」 「勿論よ、サンジくん。」 「ええ、嬉しいわ、コックさん。」 私たちがそう言うと、ポンポンとゾロが自分の左側の床を叩いて。 サンジくんがホッとしたように私たちに笑い掛けてから、何気なくその場所に座る。 私たちの手前、座る位置は少し離れているけれど、膝はちょっと触れ合ったりして。 それを見て、もう一度ロビンとくすくす笑う。 「酔っ払ったんだろ。とっとと寝ろ。」 「あら、酷いじゃない、ゾロ。自分から誘っといて。それとも何?今からは2人の時間とでも言いたいわけ?」 「そうよ、剣士さん。私たちにもコックさんの魅力、教えてくれてもいいんじゃない?」 「ええっ?!な、な、な、な、何の話?ナミさん!ロビンちゃん!……ゾロっ!!てめぇ、何の話してんだよ?!!」 「オレは何にも喋っちゃいねぇよっ!!」 結局サンジくん本人が入ってきても、話題の中心はサンジくんのままで。 きっとそれはゾロが居る限り不変のもので。 サンジくんがサンジくんである限り不変のもので。 だから、これからは惚気話の1つも聞かせてよ、ゾロ。 今までみたいに、嫌がらずに聞いてあげるから。 喧嘩した折には、茶化しながらも相談に乗ってあげるから。 だって、ゾロの満足気な笑顔が、サンジくんの含羞んだ笑顔が私たちには嬉しいんだもの。 2人が2人のままで、そのまま一緒に居てくれるのが私たちには嬉しいんだもの。 そんな2人をずっとずっと見せて欲しいから。 イチャつく2人に中てられて更に暑くなる真夏の夜。 星降る夏島の沖合いで、熱い2人を肴に乾杯するのも楽しいじゃない。 後でちゃんと2人きりにしてあげるから、もう少しだけ私たちに付き合ってね、お2人さん。 END |
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『maro maro maron』まーるさま30万打記念DLFイラストより妄想vv(イラストはこちらv)
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賭け内容:3.女性陣と酒盛り予定だったのを断る
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騒音〜沈黙〜キスシーンのところと「てめぇらに〜」のゾロの台詞v
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