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「あぁ?何ガンつけてんだこのクソ剣士。」 顔を合わせれば、まず9割の確立で不機嫌そうに睨まれる。 「本当ににお前は何の役にも立たない獄潰しだよなぁ。せめて光合成でもして酸素吐き出しとけな。」 口を開けば、これまた9割の確立で悪口雑言の数々。 「クソマリモ!いい加減に起きやがれ!!」 飯時に寝てようもんなら腹に遠慮のない蹴りを食らわされる。 要するにサンジとは喧嘩三昧の毎日だった。 泳ぎ続けないと死んでしまう魚のように俺達は毎日喧嘩をし続ける。 そんな恋人との現状に『たまには素直になって欲しいもんだ。』などと頭の片隅ででもチラッと考えた俺は間違っていたのだ ろうか。 「ゾロ〜v お前の為にスペシャルドリンク作ったぜ〜v」 (・・・・・・やっぱり新手の嫌がらせか・・・?) そして今、笑顔全開で手を振りながら走ってくる恋人に、なぜか背筋が寒くなっている俺は変なのだろうか。 |
恋人の条件 A lover's condition
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ある朝、目覚めたらサンジがおかしくなっていた。(ある程度前々からおかしいが。) 「ゾロ!朝だぞ起きろ!」 (・・・あ〜?・・・チョッパーか・・・?) ゆさゆさと体を揺さぶられる感じに意識が少しずつ浮上する。 「ゾロ!飯が冷めるぞ!」 「あ〜〜・・・もうちょっとだけ寝かせろ・・・。」 サンジが蹴り起こしに来ないなんて珍しい。などと思いながら反対側に寝返りをうとうとして制止された。唇に触れた柔らか い感触によって。 (・・・・なんだこりゃ?あったけェな・・・。) どこかで味わったことがあるような感触に反射的に食いつこうと唇を開く。そこへぬるっと進入してきた物体にゾロの頭は一 気に覚醒した。 「・・・んん・・!!??・・・チョッパー!!何考えてやがる!」 「・・・チョッパー?何寝ぼけてんだ?」 慌てて引き剥がして見ると、目の前にはピンクの帽子ではなく金色の頭。 「・・・・・・・・・・・・クソコック・・・?」 「なんだお前キスで起こしたらこんな簡単に起きるんだなぁ。もっと早くからこうすればよかったなv」 「・・・・・・・・・・・・・夢か。」 ニコニコと笑うサンジにこれは夢だと確信して再び横になる。 そのうち腹にキツイ一発をくらった時が俺の起きる時に違いない。 「育ち盛りだから眠いのはわかるけど、飯の時間だから起きろ。な?」 (・・・ありえない設定なのに、やけにリアルな夢だな。おい。) 優しく起こす声の主は、すぐ目の前にいるのか頬に髪の毛が当たってくすぐったい。 「サンジく〜ん。まだ、ゾロ起こしてんの?」 放っておきなさいよ、そんな獄潰し。何もかもリアルな航海士の声にゾロは再び目を開く。 「・・・お前にそんな事言われる筋合いはない。」 「あら、起きてるんじゃないの。サンジ君に構って欲しいからって寝たふり?あと、今のその姿見れば100人中100人がアンタ の事どーしようもない獄潰しだと言うから安心しなさい。そんな事より、ねぇ、サンジ君。食後の紅茶いれてくれないかしら?」 実にめんどくさそうにゾロに言い捨てながら、サンジへと話を戻す。 いつもなら二つ返事のその要望だが、今日のサンジは一味も二味も違った。 「あ、ナミさんゴメンね〜。コイツ起きるまでちょっと待っててもらえるかな。」 「「・・・・・・・・は???」」 ゾロとナミは思わず顔を見合せる。 「サ・・・サンジ君・・・?どうかしたの・・・?」 「いえ別に?ほら、ナミさんとロビンちゃんに食後の紅茶をいれて差し上げないといけないんだから、お前もいい加減観念して 起きろ?」 緑色の頭を愛しそうに撫でながら甘い声を出すサンジに、その場は凍りついた。 ***** 「あれはなんだ。」 食後、非常に疲れた様子でゾロが切り出した。 食事の間も甲斐甲斐しくゾロの世話を焼いていたサンジは今はいない。 先ほどゾロからひっぺがしたシャツと腹巻と手ぬぐいを鼻歌を歌いながら洗濯している。 ゾロは代わりにサンジの用意したピンクのトレーナーに身を包んでいる。胸には赤いハートマーク入り。あったかいはずなの に、どこか寒気がするのは気の所為か。 「こっちが聞きたいわよ。・・・アンタ何かサンジ君怒らせるような事したんじゃない?」 「・・・・・・・・・・・・どれだ?」 思い出すように天井を仰ぎながら指折り数えるゾロにナミは深くため息をつく。 「あぁ・・・そうね。アンタに聞いた私がバカだったわ。」 「ムッ・・・てめェだって原因わかんねェじゃねェかよ。」 「アンタと一緒にしないでよ!・・・まぁ、いいわ。それよりもサンジ君よね。」 「別に喧嘩しないって事はいい事じゃねェのか?」 ゾロとナミのやり取りを見ていたウソップが口を挟む。 「よくないわよ。そりゃ私に被害がないっていうならどーでもいい事だけど、あのサンジ君が私よりもゾロの事を優先したの よ?わかる?私よりもよ?・・・まぁ、確かに実際の所、サンジ君はこのどーしようもない甲斐性無しが良いみたいだから仕方 ないけど。でも普段から私よりもゾロの世話焼かれちゃったら不便じゃないの!」 「・・・好き放題言いやがって、誰が甲斐性無しだ。」 「・・・ナミ・・・その持論はあまりにも身勝手かと・・・。」 「なんか言った!」 いえ、何でもありません!ナミの一睨みでその場に正座するウソップに今度はゾロがため息をつく。 「・・・でも、ゾロへの嫌がらせでやってるんじゃないと思うのよねェ・・・嫌がらせでやってるなら私やロビンよりゾロを優先させ るような事までしないと思うのよ。」 ねェ、ロビン。貴女何か気付いた事はない?話を聞きながら優雅にお茶を飲んでいたロビンにナミが意見を求める。 「さぁ・・・ここはグランドラインだもの。何が起こっても不思議じゃないわ。」 心配しなくてもなるようになるものよ。ロビンはにっこりと微笑むと読んでいた本にまた目を通し始める。 「も〜〜そんな事言って何か変な病気だったらどうするのよ。」 「病気・・・!?サンジ何か病気なのか!?」 黙って聞いていたチョッパーが慌てて立ち上がる。 「病気なのかどうかもわからないから困ってるのよ。明らかにおかしいのはわかってるんだけど。」 「伝染病とかだったら、ど・・・どうしよう!!医者ーーーー!!」 「アホらし・・・病気だったらどんな病気だってんだよ。もし病気でもアホしか、かからないから安心しろ。」 お前はとりあえず落ち着け。ゾロはあたふたと走り回っていたチョッパーを抱き上げて隣に座らせる。 「肉食えば治る!」 「・・・ルフィの意見は無視するとして、ウソップ、アンタ何かないの?」 「(ひでェ・・・)あ〜・・・そうだな。さし当たって気になるのは頭の包帯かな。」 自分の頭を指さしながら言うウソップにナミは、はたと気が付いた。 「そういえば・・・サンジ君、頭に包帯してたわね。チョッパー、あれどうしたの?」 「あ、あれは昨日の夜中にゾロと喧嘩して頭を机の端に思いっきりぶつけたんだ。一時は気を失うほどだったんだぞ!」 そうだ。気をつけなきゃ駄目だぞ!注意するチョッパーを尻目にゾロは頭を抱えていた。 「・・・・・やっぱり原因アンタじゃないの・・・。ただでさえバカなんだからあれ以上バカにしてどうすんのよ!頭は気をつけてあ げなさい!」 かなり失礼な発言を繰り返しながらナミはゾロを睨みつける。 「・・・まだ原因がそれって決まったわけじゃねェだろーが。だいたいアイツがそれくらいでどーにかなるわけ・・・。」 「言い訳なんて100年早いわ!!」 (・・・頼むから自分の発言には責任を持て・・・。) 頭大事じゃねェのかよ・・・。クリマタクトで思いっきり頭をしばかれて、ゾロはちょっと泣きたい気分になった。 ***** 穏やかな午後。キッチンからは良い匂いが立ち込めている。今日はいつもよりも夕飯の仕込みに余念がないようだ。 「鼻歌なんて歌っちゃって・・・誰のためのご馳走かしらねぇ〜・・・。」 「・・・で?なんだよ。用がないなら寝るぞ。」 「俺も武器の新開発したいんだけど・・・。」 「俺も新薬の研究を・・・。」 「何か言ったかしら・・・?」 まるでやる気のない3人に(船長に至っては居ない方が返っていいとの判断で放置中だ)ナミは威圧的に微笑む。 朝食のみならず、お茶の時間、昼食に至るまでサンジに自分よりゾロの事を優先させられたのが余程プライドに触ったらし い。 「とりあえず、有言実行あるのみ・・・!行くのよウソップ!」 「え!俺??!!」 『挑戦者一人目・狙撃手ウソップ』 (ど〜〜しろってんだよ・・・・おい・・・。) キッチンのドアをそっと開いて中の様子を伺う。サンジは鍋で何かを煮込んでいるようだ。 (う〜ん・・・こういう時の定石はやっぱり『脅かす』だよな。) とりあえずやれる事はやっておかないと後が怖い。ウソップは極力音を立てないように中に入るとそのまま気付かれないよう にそぉっと近づく。 「あぁ?誰だ?・・・って誰も居ないか・・・おかしいな・・・。」 あと1メートルという所で気配に気付いたのかサンジが急に振り返った。 確かに感じた気配に暫く首を捻っていたが、気を取り直してすぐに鍋に向き直る。 (・・・あっぶねェ〜〜〜・・・) その頃、ウソップはテーブルの下に身を潜めていた。 ちょうど椅子が引き気味になっていたので上手く入り込む事ができたのだ。 (ふ・・・まぁ、このウソップ様にかかれば気付かれずに近づくなど容易な業だがな。後はもうウソップ様特製のビックリマッシ 〜ンで脅かすのみ) かと言って、ここで油断するのは素人の浅はかさ。すっかり忍者かスパイ気分なのか何やら顔つきまで精悍になっている。 (よし、一気に勝負を決めるぜ!) ウソップは勢い良くテーブルの下から出ると特製ビックリマシ〜ンのスイッチを・・・ 「サンジーーーーーーー!!!!!メッスィーーーーーーーーー!!!!!」 バターンと勢いよく開いたドアの音に特製ビックリマシ〜ンの音はかき消された。 「こんのクソゴムにクナッパナが!!!さっき飯食ったばっかりだろうが!!!」 みよ〜〜んと何やら人形のようなものが垂れ下がった箱を持ったままウソップは立ち尽くしていたが、つまみ食いをして蹴り 飛ばされたルフィと共に壁に衝突した時点で我に返った。 (・・・普段からあの登場されてちゃ、大概の事にはビックリしませんね・・・・。) 我に返ったのも虚しくウソップはすぐに意識を手放した。 『挑戦者二人目・船医チョッパー』 (・・・ウソップ、どこ行っちゃったのかな・・・。) 「・・・チョッパー?んな所で何やってんだ?」 「え・・・!なんでわかったんだ!!」 ドアの所で様子を伺っているチョッパーにサンジが声をかける。 本人は隠れているつもりなんだろうが相変わらず体が丸見えだ。あれは一生治りそうもない。 「何か用か?」 「え・・・と・・・そうだ!診察!頭の様子見ようと思って!」 「あ〜これか・・・もう全然痛くねェぞ?」 「診るからちょっとそこ座って。」 丁度、手が離れた所だったのか素直に座ったサンジの頭の包帯を取る。 診ると傷は殆ど塞がっているようだ。 「傷は塞がってるね。そうは言っても頭をあんな強くぶつけたんだから後遺症がないとは言えないよ。なんか鈍く痛いとかは ない?」 「いや、なんともねェよ。」 「頭は見た目の傷よりも中の損傷の方が怖いんだ。サンジはすぐ我慢しちゃうんだから、ちょっとでもおかしかったらすぐに言 わないと駄目だよ。内部の傷は自分にしかわかんないんだからね。」 「あぁ、わかってるよ。」 治療に入るとチョッパーはすっかり医者の顔だ。ここに来た理由など殆ど忘れてしまっている。 「それよりチョッパー。」 「なんだ?」 「俺より、そこで倒れてる奴の方が傷深そうなんだけど?」 「え・・・ウソップーーー!!!!」 直接サンジの攻撃をくらったはずのルフィの姿はもうなく、蛙のようにうつ伏せに倒れているウソップのみがその場に残され ていた。 「わぁ!何があったんだー!!い・・・医者ーーー!!」 「お前だろ?」 「あ、そうか。」 チョッパーはここに来た本来の理由をすっかり忘れ医者としての指名を全うした。 『第三の挑戦者・航海士ナミ』 (ほんっとにウチの男共は、こういう時に当てになんないんだから!) 自室に戻り何やら準備をしていたナミの耳にドアを叩く音が届いた。 「どうぞ。」 「ナミさん。お飲み物持って来ましたよ〜v」 いつものように、右手に飲み物、左手にお茶菓子を持ってサンジが部屋に入ってきた。 「ありがとう。サンジ君。」 「あれ?ナミさんどうしたんですかvv そんな格好しちゃってvv」 ナミはかなり際どい所までスリットの入ったチャイナドレスを纏っていた。 「次の島はリゾートが充実してるみたいなのよ。だからそこで着ようと思って引っ張り出してみたの。ねぇ・・・ちょうど良かった わ。背中のファスナー上げてくれるかしら?」 ナミはわざと背中を見せるように、髪をかきあげながら後ろを向いた。ファスナーは半分くらい上がったところで止まっていた。 「ウホ〜〜vv ナミさんのためなら喜んで〜〜〜vvvv」 (ふ・・・ちょろいわね。やっぱりサンジ君には色仕掛けが一番のショック療法だわ。) 目をハートマークにしながら近寄ってくるサンジを鏡越しに見ながらナミはほくそ笑む。 「今、上げますからねぇ〜vv っと・・・しまった。」 ファスナーに手がかかったところで、何やらピピピ・・・という電子音がなった。 「なぁに?その音。」 「ウソップにタイマー作ってもらったんですよ。はい、上がりました。じゃあ、俺ちょっと急いでますんで。あ、そのドレスとっても よく似合ってますよvv」 「え!サンジ君??」 そう言い残すとサンジはそそくさと部屋を出て行った。 「・・・ウソ・・・サンジくんがあんなあっさり引くなんて・・・」 もしかしてホントに病気・・・?呼び止めようとした手をそのままにナミは暫くその場で唖然としていた。 |
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(2)
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「はぁ〜〜・・・ホントに病気なのかしら・・・。」 甲板においたテーブルで航海日誌をつけながら、ナミはため息混じりに呟いた。 「・・・構ってもらえなかったくらいで病気にすんな。」 自信家も程ほどにしないと痛い目みるぞ。壁にもたれながら寝ていると思ったゾロがそれに答える。 「失礼ね。アンタに自信家を問われる筋合いはないわよ。それに普段のサンジ君の態度考えてご覧なさいよ。どう考えても おかしいでしょ?」 「・・・確かに。」 普段ナミやロビンに鼻の下を伸ばしているサンジが簡単に脳裏に浮かんだ。 「まぁ、アンタには良い事だらけよねぇ〜素直で甲斐甲斐しい奥さんが出来て。もう結婚しちゃいなさいよ。」 「あのなぁ・・・。」 「今日が結婚記念日ねぇ〜・・・・・・・・・あ!!!」 「なんだよ急に!」 急に大きな声を出したナミにゾロは思わずビクっとたじろぐ。 「今日11月11日じゃない!サンジ君の事ですっかり忘れてたわ・・・。」 「11月11日〜?・・・何の日だ?」 「アンタ・・・ホントもっと脳みそも鍛えなさい。筋肉は物を考えないわよ?今日はアンタの誕生日!生まれた日よ!」 「あ・・・・・・・・あぁ〜〜。」 ホントに今気付きました。と言わんばかりに膝を叩くゾロにナミはちょっと頭が痛くなった。 「ホントにアンタと話してると頭痛してくるわ・・・そうか、アンタの誕生日だからサンジ君あんな張り切って料理してんのね ぇ・・・・・・・・誕生日・・・あ・・・そっか・・・。」 「なんだよ・・・?」 何やらスッキリした顔でコッチを見ているナミに落ち着かない気分でゾロが問いかける。 「アンタ・・・前に私とサンジ君と誕生日の話したの覚えてる?」 「あ〜〜〜?」 |
それは今から数ヶ月前 まだロビンが乗船する前で まだ二人の関係も始まったばかりの頃 「私はもらえるならやっぱり現金がいいわぁ〜もしくは金とか宝石とか換金率が良さそうなものvv」 「心の籠った料理とかお花とかもいいじゃないですか〜vv」 「馬鹿ね。料理は食べたら終わりだし、花も枯れちゃえばなくなっちゃうじゃない。」 「そんな現実的なナミさんも好きだ〜〜vvv ・・・で・・・そこでウワバミのように酒かっくらってる緑は何が欲しいんだ?」 一人手酌で飲み続けていたゾロに話を渡す。 ラッパ飲みをしていないだけサンジとナミの教育の賜物だ。 「あ?何が?」 「ピアスだけでなく耳まで飾りもんか!!さっきから話してんだろ? 恋人から誕生日プレゼントに何もらえたら嬉しいかって聞いてんだ!」 「あ〜〜・・・・・・・・酒?」 「ケっ、ホント夢の欠片もねェ答えだなぁ・・・」 「その言葉すっかりそのまま、そこの女に返してやれ。」 「何言ってるのよ。酒は飲んだらおしまいだけどお札は使っても物が残るのよ?」 「もっとさ〜『君の笑顔が一番の贈り物だよ。』とか言えないもんかね〜。」 「・・・笑ってやろうか?」 「誰がテメェの笑顔が欲しいっつった・・・!」 鋭い蹴りが空を切る。上手く避けたつもりが緑の髪の毛がパラパラと何本か舞い落ちた。 「あ・・・ぶねェな!!テメェはもっと静かに飲めねェのかよ!!」 「テメェが甲斐性無しだからだろうが・・・!」 「なんでそんな話になんだよ!!プレゼントの話だろうが!!」 「酒くらいしか思いつかない奴なんて甲斐性無しの何者でもねェだろ!!」 「ムッカ!じゃあ、テメェがもっと性格改善して出直して来やがれ!それが一番のプレゼントだ!」 「カッチーン!このスペシャルビューティな俺様の性格のどこに出直す箇所があるっつーんだよ!その言葉そっくりテ メェに返してやるぜ!苔頭!!」 「テメェ、もっと自分を知りやがれ!人の顔見る度に不機嫌そうな面したり憎まれ口叩いたり 寝てたら蹴りいれたり、大体男と女で態度違いすぎんだよ!もっと殊勝な態度取ってみやがれ!」 「・・・言いたい事はそれだけか・・・?冥土の土産に聞いてやるよ・・・」 サンジは箱から煙草を一本抜き出したかと思うと慣れた手つきで火をつける。 「テメェこそ憎まれ口叩けるのもコレが最後だぜ?吠えたいだけ吠えとけよ。」 ゾロも左腕に巻いてある手ぬぐいを外すとそれを頭に結びつけた。 「いい加減にしなさい・・・!」 完全戦闘態勢で向き合ったところで、手加減のない拳骨が二人の頭に落ちる。 「もう夜も遅いんだから寝てる人の迷惑になるでしょ!!!!」 「痛ェ〜〜・・・お前の声が一番デカイんだよ!」 「ナミさ〜ん、すみません!クソマリモがしつこいもんで! あ、もう、おつまみないですね。ちょっとなんか作りますよv」 「・・・もう一発欲しいの・・・? あ、サンジ君。さっぱりめなものお願いね」 「は〜〜いvv 喜んで〜vv」 (ちっ・・・) これ以上逆らったら酒を没収されかねない。とゾロは大人しく席につく。 「・・・・・・・悪かったな。可愛くなくて。」 「・・・あ?何か言ったか?」 横を通りすぎたサンジが何か呟いた気がして聞き返したが返答はなかった。 (ま・・・どうせ悪口だろ。) そう完結させるとゾロはまた新しい酒の封を開けた。 |
「・・・・・・・・・・・そんな話もあったな。」 「・・・なぁんだ。病気じゃなかったのね。」 「まだそうと決まったわけじゃねェだろ?」 「だったら早く確かめて来なさいよ。・・・あ〜あ、心配して損しちゃった。」 ナミはそう呟きながら日誌を閉じるとそのまま席を立つ。 「お前の心配なんてアイツに世話焼いてもらえない程度だろ?」 「アンタ、本当に私がそんな事気にしてるとでも思ってたの?なんでか知らないけどサンジ君はアンタの事が一番大事なの よ。だからアンタの事を優先するのは普通なの。おかしい事なんかじゃないわ。・・・まぁ、普段のサンジ君からすれば充分お かしいから心配してたんだけどね。」 「・・・自分の事優先されないからって怒ってたじゃねェか」 「そんなの言葉のアヤみたいなもんよ。・・・別に今の状況でもサンジ君は私に対して変わらず気を配ってくれるわ。だからロ ビンの言うとおり見守っていればよかったのかもしれない。見たところ体に不調があるわけでもないみたいだから、ウソップの 言う通り喧嘩がないのはいい事だと思っていればよかったのかもしれない。でもね・・・やっぱりアンタ達は喧嘩してて欲しい のよ。」 そうじゃなきゃ調子が狂うの!そう言い捨ててナミは足早にその場を離れる。 「・・・お前も素直じゃないんだな。」 要するにナミは自分よりゾロの事を優先するサンジが気に入らなかったわけではなく、いつもと様子の違うサンジを本当に心 配していただけなのだ。 「・・・・・・笑ってないで、早くサンジ君とこ行きなさいよ!」 少し口元を綻ばせながら見送っていたゾロにナミは振り返らずに怒鳴りつける。 「こっちも見ずになんで笑ってるなんてわかるんだ?」 「アンタみたいな単細胞の行動なんてお見通しよ!〜〜声、笑ってるじゃないの!!」 もう!ホント甲斐性無しなんだから!!最後まで振り返らずに去って行ったナミの表情を思い浮かべてゾロは声を出して笑っ た。 ***** 「ゾロ。なんだ腹でも減ったのか?」 それとも喉が渇いたのか?じゃがいもの皮を剥く手を止めてサンジはニコニコと笑いかけてくる。 「もういいから止めろ。」 「は?いや・・・まだまだ数足んねェんだけど。」 「皮剥きの事じゃねェよ。・・・その気色悪い態度を止めろっつってんだ。」 「・・・何のことだ?」 「俺はそんなもん誕生日プレゼントに欲しかねェ。」 「・・・なんだ気付いたのか。」 これはこれで別人になったみたいで面白いのになぁ〜そう言うとサンジは再び皮を剥き始める。 「・・・やっぱり芝居か。なんでこんな事をする?嫌がらせか?」 「・・・お前が言ったんだろ?『素直で従順な可愛い恋人が欲しいv』って。」 「だれがいつそんな事言った・・・お前にゃ言葉も伝わらないのか。」 「似たような事言っただろうが!!」 「もうちょっと殊勝な態度取れって言ったんだ!誰がこんな極端に変われっつった!!」 「ムッキーーー!お前プレゼント貰う側の分際で注文つけるとはいい度胸だな!何様だ?・・・あぁ、歩く天然記念物様か。そ りゃ失礼しましたね!!」 「勝手に寄越しておいて、何偉そうな事言ってんだよ!!俺は酒が欲しいっつっただろうが!酒が!!」 「そんな酒が欲しいなら酒と一生添い遂げろ!!ほら、プロポーズしやがれこの酒フェチ!!!! 何ならウソップに頼んでこの酒瓶ちゃんのラインにフィットしたウェディングドレス作ってもらうか?あん?」 ぐるりと巻いた眉毛をつりあげ眉間には深い皺を刻み、額に浮かび上がった血管は今にもはち切れそうで怖い。そして凄い 力で歯を食いしばっている所為で咥えている煙草は今にもちぎれそうだ。そんな、手に持っている酒ビンで今にも殴りかかっ てきそうな勢いのサンジに、ゾロはいつものように応戦する・・・かと思いきや勢い良く噴出した。 「テメェ・・・・・・・・・・・・・よっぽど死にたいらしいな・・・」 地を這うようなサンジの声に逆らって、ゾロは実に楽しそうに笑う。 「いや、もういい。充分楽しませてもらったから。酒はいらねェ。」 「そう言うなよ・・・お前の屍を海に流した供養に、この酒流してやるよ。」 「ホントにいらねェ。・・・だからお前もそのままでいろ。」 目尻に涙までためて笑っていたかと思うと、ゾロは急にマジメな顔をする。 「・・・は?何言ってんだ?肉体が1つ歳とって脳細胞は100歳くらい一気に老けたか?」 「無理に変わろうとすんな。俺はそのまんまのテメェがいい。」 「な・・・に言って・・・・・・・あ!分かった仕返しにからかってやがんな!」 その手は食わねェ!!一向に警戒を解こうとしないサンジにゾロは再びおかしくなる。 「いいよ。信じなくても。戻ったならそれでいい。」 「何でそんな余裕な態度してんだよ・・・ムカつく。・・・あ〜そうか。わかった。てめェ『マゾ』だな!」 「・・・・・は?」 思わず笑顔のまま問い返したゾロにサンジは勝ち誇ったように説明する。 「『マゾ』知らねェのか?お前みたいに蹴られたり罵られたりすることに快感を覚える人の事を『マゾ』ってんだよ。」 「いつ俺がそんな事に快感覚えた!」 「・・・思えばあの毎日の必要以上の鍛錬も戦闘で必要以上血流してんのも、どれもマゾだからだったんだなぁ・・・。」 「納得すんなよ!大体それを言うならお前の方がマゾだろうが!毎回、大怪我してんじゃねェか。しかも、俺の知らないところ でばっかり怪我してきやがって!!」 「なんでお前立ち会いの場所で怪我しないといけないんだよ!・・・まさか他人が怪我するの見るだけでも快感覚えるの か・・・!」 助けてーー!ココに変態がいますーーー!わざとらしく助けを呼ぶサンジに、ゾロはすっかり脱力した。 「・・・てめェはホントに口が減らねェ男だな・・・。」 「・・・だって、コレがお好みなんだろ?」 さっきまでの作ったような笑顔ではなく本当に嬉しそうに笑ったサンジにゾロは一瞬呆気に取られた。 「なぁに馬鹿面さらしてんだよ。見惚れたか?」 誘うように両腕を広げたサンジに苦笑すると、ゾロはそのまま引き寄せて口付ける。 「悪くねェな。」 「キスが?」 「黙ってろ。」 サンジは続けて深く口付けようとしたゾロの髪の毛を引っ張って引き剥がす。 「アホ!俺にはまだやる事沢山あんだよ!今日はテメェの誕生日っつんで作るもんいっぱいあんだ。」 「酒さえあればそれでいいから続きやらせろ。」 「それはコックとして納得いかねェ。用すんだなら邪魔だから昼寝でもしてろ!」 「お前ホントに両極端な奴だな・・・。」 シッシッと追い払うような仕草を見せるサンジにゾロは苦虫を潰したような顔をする。 「・・・せっかくだから夜まで素直なままでもいいんだぜ?」 思わせぶりな顔で耳元で囁くと、サンジはニヤリと口の端だけ上げて笑った。 「・・・あんな素直で可愛い俺様を放棄した事を後悔しても、もう遅い。・・・って言っても1日限定予定だったけどな。」 「そんなにこだわるなら、お前の誕生日には俺がやってやるよ。」 「へェ〜素直で可愛い剣豪ちゃんか。そりゃ楽しみ。」 「首洗って待ってやがれ。」 そういい残すとゾロはラウンジを後にした。 一人残されたラウンジで芋の皮を剥きながらサンジは考える。 昼寝をしようとマストに持たれかかりながらゾロは考える。 (・・・素直で可愛いクソマリモ・・・・。) (・・・素直で可愛い俺・・・・・・・・・・。) (・・・気色悪ぃ!!!!・・・けど俺だけ逃げるわけにはいかねェ。) (・・・気色悪ぃ!!!!・・・けど約束を破るわけにはいけねェ。) 「「アイツには絶対負けねェ!!」」 それぞれの決意が船に響き渡った。 決戦は 3月2日 END |
またまたまたまた、「s.s.f.」のmisakiさんから頂いちゃいましたv(貰いすぎだって)
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でも、でもでも、可愛いんだもん!サンジがっ!!!(だから、ゾロ誕だってば)
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ナミよりゾロを優先するサンジ。
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有り得ない事かもしれないけれども、喜ぶ前に病気かと心配するゾロも可愛いv
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サンジはゾロとの喧嘩での会話、結構気にしてると思います。
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だから、1日限定で頑張るサンジ・・・うんうん、わかるよう!misakiさん!!
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素直で可愛い剣豪vv
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サン誕での続き、期待してますよvvv(独り言、軽く無視してますv)
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misakiさん、可愛いゾロサンありがとうございました!!!
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