「ホラ!ゾロ、あれ!!」
「・・・あれは・・・・・・・。」
蒼い世界
「ゾロ!起きろー!!」
いつもように塀の上で昼寝をしていた俺の耳に甲高い叫び声がこだまする。
眉をしかめながらゆっくりと瞼を開けると、太陽を背負っている所為かいつも以上に輝く笑顔が目に飛び込んできた。
「・・・後で遊んでやるから、もうちょっと寝かせろ。」
「ダメだ!今日はとおくまでつれてってやるんだから早くでかけないと夜になっちゃう!」
ゾロは目の前の形の良い頭をポンポンとあやすように叩きながら再び目を閉じる。
いつもなら文句を言いつつもそこで諦めるはずのサンジだが、今日は寝かせまいと小さな手でゆさゆさと揺さぶっている。
ゾロはここら一帯を縄張りにしている野良猫で、今、ゾロを必死に起こそうとしている仔猫は名をサンジと言い、この塀の家
の飼い猫だ。まだ仔猫の癖にここら一帯のボスであるゾロの事を全く恐れずに近づいてくる。それどころか、なぜだか異様
に懐かれているらしい。
それくらいの刺激なら返って眠気を誘うものだったが、何やら必死な声から想像する顔を放っておくことはできなくなった。
「・・・わかった。起きる起きる・・・。」
ゆっくりと体を起こして大きな伸びを1つ。それでもイマイチ目が覚めないので大きく欠伸をした所で、首に何やらくすぐった
い感触。
(・・・なんだ?)
涙目で自分の首元に視線を落とすと、そこには色とりどりの輪っかで作られた首飾り。その先には少しいびつな星型が付
けられており何やら字が書いてある。
「・・・あ?何て書いてあるんだ?ぞろおたん・・・」
「たんじょうびおめでとー!ゾロ!!!!」
全て読み終わる前に、叫び声とともに小さな塊りが飛び込んできた。
思わずバランスを崩して塀から落ちそうになるのを必死でこらえると、小さな体からはみ出している星をもう一度手に取る。
「ぞろ おたんじょび おめでとう」
そこにはお世辞にも上手とは言えないが、心の籠ったお祝いの言葉が書かれていた。
(あ〜そっか・・・今日俺の誕生日だっけ。)
自分の誕生日などあまり意識した事はなかったので、全然気付かなかった。
視線を星からサンジに映すと、正しくキラキラと輝いた目でコチラを見つめている。
「(自分の誕生日でもないのに嬉しそうな顔しやがって・・・)・・・ありがとな。」
ぐりぐりと頭を撫でながら笑顔で告げると、眩しいくらいの笑顔を返された。
「よし!じゃあ行くぞ!」
「・・・ん?どっか行くのか?」
急にスクっと立ち上がったかと思うとゾロの背中によじ登り始めたサンジにゾロが問う。
「ゾロに見せたいものがあるんだ!!!」
「なんだ?」
「ダメ。行ってからのおたのしみ。」
ホラ!あっちあっち!!ゾロの背中から乗り出すようにして指示を出すサンジに苦笑しながらも、ゾロはサンジを乗せたま
ま軽やかに駆け出した。
「ホラ!ゾロ、あれ!!」
「・・・あれは・・・・・・・。」
暫く行くと小高い丘の上に出た。そこの一番高い場所にある電信柱に昇れと指示が出る。
てっぺんまで昇ると流石に見晴らしがいい。街全体が一望できるようだった。
サンジの指す方向に視線を映すと、少し先の方に蒼い世界が広がっていた。
「お前が見せたかったのって、海の事か。」
「うみ?あれ、うみって言うのか〜!」
「なんだ。お前知らないで連れてきたのか。」
「う・・・いいじゃんか!名前何て知らなくたって!・・・綺麗だったからゾロにも見せてやりたかったんだ。」
サンジは耳まで真っ赤にしながら小さな声で呟く。
ゾロはそれに気付かない振りをしながら小さく笑った。
「よくこんな所から海が見えるの知ってたな。」
「この間、ジジイの車に乗せられてここら辺まで来たんだ。その時はもっと低い所からだったから、こんなに良くは見えなか
ったけど、それでもすげぇ綺麗だった!」
「海に行ったことはないのか?」
「ない。ゾロはあんのか?」
「あぁ・・・前は近くに住んでたからな。」
「すげぇ〜!!なぁなぁ!うみってどんなのだ!!」
「海は・・・そうだな・・・塩っ辛い。」
「え!!!味あんのか!!すげぇ〜!!あとは!!」
「あと・・・魚がいっぱいいるな。」
「へぇ〜!!ルフィの家の前の川よりたくさんいるのか?!」
「あぁ、あんなもんじゃねぇぞ。海は広いからな。海の向こうには違う国があんだ。」
「・・・・・ゾロ!!おれ行ってみたい!!つれてってくれ!!」
目を輝かせながら話を聞いていたサンジが急に真剣な面持ちでそう言い出した。
「あぁ?あ〜・・・あのな。サンジ。ここから見ると一見近そうに見えるけど、海はすげぇ遠くにあんだぞ?ここから行ったら
今日中に帰れねぇぞ?」
「ゾロといっしょならへいきだろ!なぁ!つれてってくれよ!!」
「・・・・海・・・ねぇ・・・。」
「オレ、めいわくかからないようにちゃんとじぶんの足で歩くから!つかれたとか言わないから!」
「いや・・・お前くらい背負っててもどってことないけど・・・。」
「じゃあ、なんなんだよ!・・・おれと行くのがいやなのか?」
「いや!そうじゃなくてな・・・。」
少し悲しそうな色を含んだ瞳にゾロは仕方なく話を切り出す。
「・・・辿り着く自信がねぇ。」
「・・・は?」
「海までの道がわかんねぇんだよ。」
「・・・あ、そっか!ゾロすごい方向おんちだもんな!ん〜・・・でもそれならだいじょうぶ!だってオレがいっしょだから!オレ
が道あんないしてゾロをうみまでつれていってやるよ!!」
(いや、連れてくのは俺だろう・・・。)
「そうときまったら早く帰ろうぜ!おべんとうもってかないと!」すっかり行く気満々のサンジに今度は早く帰るようにせかさ
れる。
(まぁ・・・たまにはそういうのもいいか。)
どうやら誕生日というのは特別な日のようだし。
(・・・どっちかと言うと、俺の誕生日よりコイツの誕生日を早く来させて欲しいけどな。)
猫の成長は早いとはいえ、ゾロとしてはこの差は少し・・・いやかなり厳しい。
「何してんだよ!ゾロ早くー!」
「わかった。わかった。」
(そんな台詞も大きくなってから聞きたい。)などと
ほんの少しだけ先の未来に
ほんの少しだけ思いを馳せながら
今は背中にある小さなぬくもりを独り占めするのも悪くない。
軽やかな足取りで二匹はその場を後にした。

「S.S.F.」のmisakiさんからまたまた頂いてきちゃいましたv
もう、何が可愛いって、背中のサンジと困り顔のゾロvv
初めて懐いたチビナスにゾロはメロメロなんでしょうねぇ。(うっとり)
早く大きくなったげてね、サンジ。
んでもってその続きは・・・・・・misakiさん次第でしょうか?(ウズウズ)
可愛い猫ゾロサン、ありがとうございましたv
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