| いちばんを君に |
微かにバイクの音が聞こえて、二階の窓から外を見遣る。 段々と近づいてくるその音は家の玄関の前で止まった。 訝しげに覗いていると、そのバイクに乗ってる者がヘルメットを脱いでこちらを見た。 「おーい、!こっち来いよっ!!」 「将臣っ!?」 何事かと慌てて階段を下りて玄関を開ければ、バイクに跨ってこちらを見ていた筈の彼はどうやら私が飼っている犬達の所へ行ったようだ。 「ははっ、お前ら今日も元気だな。」 「将臣… いったいどうしたのさ?」 でかい犬達をまるで子犬でもあやすかのように撫で回している将臣に近づく。 「あ?俺さ、免許とってバイク買ったんだよ。」 「それでわざわざ鎌倉から見せびらかしに来たの?」 「それだけでわざわざ高速をぶっ飛ばして来るかよ。」 「じゃあなに?」 「一番最初にお前を後ろに乗せたいって…そう思ったんだよ。ってうわぁ!!」 油断していた将臣の足にタックルをかます愛犬達。 思わず良く遣った!と褒めそうになったが、転びそうになった将臣が掴まったものは…私だった。 「あっ…」 「あ、悪ぃ。」 悪いと口にしつつも、いっこうに私を放そうとはしない。 「ま、将臣?」 「ははは、ラッキーだな。それで、乗ってくれるよな?」 首を縦に振らなければ、絶対に放して貰えそうにないな…。 「…うん、仕方がないから乗ってあげてもいいよ。」 「はは、ほら、お前のメット。」 そう言って将臣は脇に寄せておいたヘルメットを投げてよこす。 「ぅわっ!もっと丁寧に渡しなさいよー!!」 「嬉しくて涙出そうだろ?」 「嬉しくなんか無いわーー!!」 ぷんすかと怒って将臣を睨みつければ、先程まで笑っていた顔が急に切なげな顔に変わる。 「まさ、おみ?」 「やっぱ俺みたいな年下じゃ…駄目か?」 「えっ!?違っ…違う。そうじゃなくて…本当は嬉しい、よ?」 「ははっ、やっぱり俺が良いか〜。には一番俺が合ってるんだよ。」 「はっ!?なに?さっきの顔!!……まーさーおーみーーっ!!」 「さあ、早いとこ出かけようぜ。日が暮れちまう。」 「もうっ!!」 怒り顔を解かずに将臣を見上げれば、困ったように笑って頭をくしゃくしゃと撫で回された。 それだけで全てが許せてしまうのは将臣の魔法だと思う。 それとも、私が飼いならされてしまったのだろうか…? そうこう考えているうちに腰に手を回され、バイクの方へと追いやられていた。 新品のヘルメットを被って、真新しいバイクの後ろに跨る。 「、しっかり掴まっとけよ。」 「はいな〜。」 ぎゅっと将臣の腰に腕を回せば、けたたましい音が唸る。 それが合図に見慣れた景色が凄い速さで流れて行った。 久しぶりのバイクだと思えば心が浮き立つのに、しがみついている将臣の背中は とても落ち着くから不思議な感じだ。 暫しその不思議な感覚を楽しんでいると、向こうの方に海が見えた。 思わず将臣の腰に回す腕に力が入る。 それに気づいたのか将臣の背中が少し震える。 きっと笑ったんだ。 聞かなくても分かる将臣の笑い声、その表情。 目を閉じれば余計にはっきりと思い浮かぶ。 遠く離れている間もそうやって寂しさを紛らわせていたのだから… やっと会えた。 「、着いたぞ。」 バイクから降りて、ヘルメットを脱いだ将臣は髪をかき上げる。 やっぱりかっこいい… 「悔しいな…」 「ん?何が悔しいって?」 「あっ、ううん、何でもな〜い。」 笑って誤魔化した私の頭を、また掻き回すように撫でる。 「もーっ!!」 「もーもー言ってると、牛になっちまうぜ?」 「そう言わせるのは誰よ?」 「俺、だな。まっ、折角来たんだから渚んとこまで行こうぜ。」 「え?」 将臣の言葉に周りを見渡せば海岸だった。 「おいおい、いくら俺に見惚れてたからってそりゃ無いぜ。」 「…………(私としたことが…)。」 そして将臣の言葉も否定できなかった。 確かに見惚れていたのだから。 「ほら、行くぞ。」 言葉に詰まっていると、将臣は私の手を取り歩き出す。 「ま、待って」 そんな制止の言葉を将臣が聞く筈もなく、リードを引かれた犬のように 砂浜へと向かった。 適当な所へ腰を下ろす将臣に倣って私も隣に腰を下ろす。 その間も手を離そうとはしてくれない。 恥ずかしさの所為で二人の間には少し隙間が出来る。 その隙間に気づいた将臣が片眉を吊り上げると、繋いでいた手を離して 私の肩を引き寄せた。 「…っ」 きっと私の頬は柄にもなく赤くなっているだろう。 そう思えば将臣の顔なんか見れずに、そっぽを向いて寄せては返す波を見た。 「…耳赤いぜ?」 「…だから何だって言うのさ。」 「俺の方、向けよ。」 「嫌だ」 「実力行使だな。」 無理矢理振り向かせられるのかと思い、ぎゅっと身を固くする。 けれど、やってきたのは頭に降らされた優しいキス。 驚いていると、その口唇は耳元でちゅと音を立てた。 「っ〜〜〜〜!!!」 耳を押さえながら将臣を睨みつければ、将臣は一瞬驚いた顔をして頬に朱が差した。 そんな将臣の顔に私も驚いて、ぽかんと口を開けながら将臣の顔をまじまじと見詰めた。 すると今度は将臣がそっぽを向く。 「将臣…?」 「…んだよ、反則だぞそれ……」 「え?」 いっこうにこっちを向いてくれない将臣に不安で心が揺れる。 どうしたのかと顔を下に傾げて覗き見る。 するとそのまま倒されてしまった。 「将臣?」 驚いて声をあげれば、さっきまで隣に居た将臣を見上げる形になっている。 「俺の膝枕も良いもんだろ?」 「は?」 その言葉に自分が将臣の膝に頭を乗せて横になっていることに気づく。 「もおっ!まさっ………」 将臣、と抗議の声をあげるはずの口はしっとりと塞がれた。 何度も啄ばむような口付けに私の頭は、とろとろと溶けて行くような甘い眩暈を覚える。 ふと、遠くの方で誰かが笑う合う声が聞こえて漸くそれは已んだ。 「、腹減った。お前の食わせてくれよ。」 「あ、そうだよね。鎌倉からこっちに来るまで何も食べてないんでしょ?」 「ああ。もう腹減って倒れそう。」 「わわっ、じゃあ急いで帰ろう。腕によりをかけて作るから♪」 「はは…楽しみだ。んじゃあ行こうぜ。」 「はいな〜。」 そして家に帰った時、またもやは抗議の声をあげることになる。 それも全て言い終わることなく… 「誰も飯を食わせてくれって言ってないだろ?」 2008/06/10 ※:朋美さんへ漸く差し上げることが出来たー!!もう一昨年からそう考えてたんだけど…汗 私のこんな駄文では将臣くんの良さを表現出来てませんが、是非受け取ってください。 宝物殿へ戻る ************************************************************ (壁紙:Kigen/kazuさま) ふふふふふふふ……暁さんから頂きました♪なんとなんと、暁さんの初書き将臣です!! いきなりバイクで迎えに来てくれた将臣とタンデムで海へ。しかも… 膝 枕 を し て く れ る ! これはもう、私が怪しい笑みを浮かべても当然でしょう。 いやもう、最初に読んだ時からニヤケ笑いが止まりません。 暁さんの書かれたSSにしては主人公の台詞が乱暴だとお思いの方、本当に申し訳ない。 その点は暁さんが私をベースに書いて下さったからなので、将臣の色気と甘さと可愛さに免じて御許し下さいませ。 暁さん、どうも有り難う御座いました!お宝部屋で皆さんに見せびらかしつつ、原文は独り占めさせて頂きます♪ 【 余談 】 詳しい方は御存知でしょうが、中免(普通二輪)が取得可能な年齢は18才。 タンデムが可能になるのは免許取得後一年以上経過してから。 因みに高速道路でのタンデムは免許保持者が20才以上である事と免許取得後3年以上が経過している事が条件です。 これは飽くまでも 夢 小 説 内 で の 出 来 事 ですので、御間違いの無きよう。 SNSで御付き合いのある方なら御存知かもしれませんが、我が家では大型犬を二頭飼っているのです。 成人男性ですら制御困難な、勢いと力を兼ね備えた雄の大型犬を。 橘家の面々は、正にこんな感じなのです。 橘朋美 |